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僕たちはあの日家族になった 3









3









○○:それじゃあ…サボらせていただきます!




そう言って戦術を教えるホワイトボードの前で敬礼する



颯斗:…堂々と宣言しに部室に来るな。

部員1:山下先輩とデートなんですよね!

部員2:羨ましいです!

○○:そう?…それじゃ変わる?

部員2:え!!




嬉しがる部員を見て颯斗が釘を刺す




颯斗:…美月に殺されるぞ?

部員2:………ですね。

○○:なんで!?

颯斗:鈍感もここまでいったら殺害理由になりそうだな…

○○:訳わかんないけど、顔見せに来ただけだからもう行くわ。
颯斗と監督あとの事よろしく!

部員:いってらっしゃい!

監督:……おう。

颯斗:今日は美月の我儘聞けよ。

○○:そうする〜







○○は校門の前で少し遅れてる美月を待っていた

すると…





蓮加:お兄ちゃん!

○○:ん?蓮加か…帰り?

蓮加:そう。
お兄ちゃんは…部活サボり?

○○:許されたサボり〜。

蓮加:なにそれ 笑

○○:颯斗以外には怒られないサボりの事。笑

蓮加:颯斗くんもこんなお兄ちゃんの幼馴染なんて大変だな〜笑




そんな1人で笑う蓮加を不思議に思う




○○:あれ…さくらは?

蓮加:なんか男子に屋上に呼び出されてた。

○○:我、妹のさくらはモテモテだな 笑
それに比べて…



○○は蓮加を見つめる



蓮加:見るな!



顔を近づけて更に覗き込む



○○:う〜ん…可愛いと思うんだけどな…

蓮加:だから…見るな///
私は好きな人にだけ伝わればいいの!

○○:って事は好きな人いるんだ〜

蓮加:///




さくらと蓮加は既に○○に好きと伝えている

だが○○に伝わった好きは"兄"としてだった




蓮加:それでお兄ちゃんはサボってまでどこ行くの?

○○:…知りません!

蓮加:はい?

○○:もうすぐ来る人がたぶん教えてくれるよ




すると○○の言った通りスクールバックのショルダーの部分を肩まで入れた人物が走ってきた




美月:ごめ〜ん!
よりによって今日が日直とか運無さすぎ。

蓮加:あっ…

美月:あれ、蓮加ちゃん!

蓮加:…どうも。



幼馴染の妹だという事もあって優しい声をかける美月に対して、コミュ力の高い蓮加があからさまに不機嫌な態度をする



蓮加:お兄ちゃんどういう事!?

○○:これから美月と行く当ての分からないデート。

蓮加:デート…




その○○の言葉に美月は咄嗟にフォローをいれる




美月:蓮加ちゃん誤解しないで…
私のストレス発散に付き合ってもらうだけだから。

○○:そうなの?デートだと思ってた 笑

美月:○○は少し黙ってて!

○○:怖ッ!

美月:だから別にお兄ちゃんを奪おうなんて思ってないよ?

蓮加:…本当に?🥺

美月:うん。

蓮加:…それならデート許す。

○○:やっぱりデートなんじゃん!
女子の会話って分かんね〜

美月:女子のというか○○は基本なんも分かってないでしょ!

○○:…すみません…今日の美月怖いな…ボソ

蓮加:お兄ちゃん!

○○:ん?

蓮加:分かってるだろうけど遅くなったら家の鍵かけちゃうから早く帰ってくるんだよ🥺

○○:あ……うん。
(オレ…鍵……持ってる…)



そんな可愛くも無意味な脅しを受けながら
妹にデートの許可を貰った






蓮加と別れた2人はこのまま駅まで歩く事に





○○:どこ向かってるの?

美月:秘密!

○○:電車乗る?

美月:電車には乗らないけどバスに乗るよ。

○○:それは教えてくれるんだ 笑
ってか今日本当に大丈夫だったの?

美月:なにが?

○○:塾サボるんだろ?

美月:!?

○○:気づかないとでも思ったのかよ。笑

美月:バレたか…

○○:美月がデートを金曜にしたのって自分の都合とかじゃなくて、チーム練がないからだろ?

美月:その通り…でも○○の事が心配だからじゃないよ。
天才だし、マイペースだし、サッカー愛は誰よりもあるから。

○○:マイペースは褒めてないだろ…ボソ

美月:でもサッカーはチームスポーツ、士気とか信頼関係が大事。
だからチーム練だけはサボらせたくないの。

○○:さすが元マネージャー!

美月:それに…もしチーム練の日にデートしたいって言ったら○○断るでしょ?

○○:…まぁな。




チーム練だけサボり癖のある○○が唯一遅刻も欠席もしない事を美月は知っていた





美月:逆に聞くけどデートする気になったのはなんで?

○○:気分!

美月:だろうね。苦笑






駅から出るバスに揺られ10分
バス停の名称にもなっている目的地に着く




○○:ここって…




そこは市街地から少し離れた天文台とプラネタリウムがある施設




美月:覚えてる?

○○:あれは…小学校の校外学習だよな。

美月:小5!

○○:細か〜笑
覚えてる覚えてる、美月が転校してきてすぐだろ?

美月:うん…







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○○:ここでいいか。

颯斗:だな。




友達と隣同士で座ってと先生に言われたプラネタリウム、だから颯斗と座った


するとブザーがなってもうすぐ暗くなるって時に○○は美月を見つけた




○○:アイツ何してんの?




モジモジしたままどの席にも座らず立っていた




颯斗:あれは…山下じゃない?

○○:やました…誰?

颯斗:昨日来た、転校生。

○○:そんな奴いたようないないような…

颯斗:そこにいるだろ。笑

○○:まぁいいや………山下!!



大きな声で美月を呼ぶとクラス全員が○○を見た



美月:!?

○○:ここ空いてるぞ。




○○は自分の席の隣に誘い

美月はその声に導かれるように小走りで近づいていった




美月:……いいの?

○○:良いに決まってんだろ。
まぁ普通俺の許可すらいらねーけどな 笑

美月:…ありがとう///

○○:あ!こいつ俺の幼馴染の颯斗。

颯斗:よろしく!山下さん。

美月:うん!







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美月:あれからだよね仲良くなったの。

○○:だな。

美月:でもね…




美月が指さす掲示板には白い紙に大きく

20XX年XX月XX日  閉館予定


そう書かれていた




○○:あぁ…なるほど…

美月:うん…だから来たかったの…

○○:確かに建物とか古いから仕方ないのかもな。

美月:………

○○:ってか颯斗は連れてこなくて良かったの?

美月:え!?

○○:俺ら3人の思い出の場所だろ?
それなら颯斗も必要だろ。

美月:そうだよね…ヘヘッ忘れてた…。

○○:可哀想〜 笑
今頃1人で部活頑張ってんだろうな〜

美月:そう言われると…本当に申し訳なくなって来たから閉館までには3人で来ようね。

○○:もちろん!




確かに3人の思い出の場所
だけど美月にとっては○○との2人の思い出も別にあった






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私はプラネタリウム内での出来事を見ていた数人の女子に囲まれて


美月:イタッ


そのうちの1人に押され
人通りの少ない廊下の壁にぶつかる




女子1:なんで転校生が○○くんと颯斗くんに話しかけてるの!?

美月:話しかけたというか…話しかけられたんだけど…ボソ

女子1:口答え?




この瞬間、異性というものを意識し始めた年頃の女子にとって○○と颯斗がインバイオラブルな存在なのだと知った




女子2:ちょっと可愛いからって調子に乗ってるよね。

美月:そういうつもりじゃ…ボソ

女子1:声ちっさ!笑

女子3:もう2人に近づくのはやめてね?

美月:分かった…

女子2:これで悪い虫が○○くん達に付かないね。




この彼女の言葉に怒りがこみ上げて来た

虫…私が?違うでしょ…だって…



美月:虫はあなた達でしょ…ボソ

女子1:…今なんて言った!?

美月:………虫はあんた達!

女子3:あ〜あ 言っちゃった。笑

女子2:1回目は無視してあげたのに 笑
…ほら3回目行ってみな

美月:……………

女子2:ほら言いなよ〜

女子1:もういい…2人は手押さえて。


その号令と共に美月は腕を固められた


美月:なにするの!

女子1:下着だけにしてクラスみんなの前に出してあげる。笑

女子3:それを見れば○○くん達もお前なんかに近寄んないでしょ。

美月:やめてよ!!



上に着ていたパーカーとインナーがはだけて胸があと少しで見えるぐらいまで脱がさせた時





○○:なにしてんの?




私の救世主が来た



女子1:!!

○○:それ…いじめ?




自分の中では正義だと思ってる事を好きな人からイジメだと言われた事に女子達は動揺した




女子2:いや…その…転校生が○○くん達にちょっかいだすから懲らしめてただけで…

○○:ちょっかい?
そんなのされた覚えないけど?


女子2:…………

○○:それに友達にちょっかいかけられたとしても俺は別にいいし。

美月:と…友達/// 

○○:そんな大事な奴に手出した…お前らは絶対許さないよ?



○○は笑っていた

でも、矛先の違う私でも内面の怒りをひしひしと感じた




女子3:………

○○:もう集合らしいから、山下行くぞ〜

美月:う…うん///



○○は私の手を握って来た道を戻ろうとする



○○:あ!最後に…俺のいない所で、もしまた山下に手出したら先生にも親にも今の事全部言うし、一生お前らと口聞かないから覚えとけ。




○○はみんなの元に戻っても私の震えた手を颯斗に茶化されるまで強くずっと握ってくれた



その時見た○○の横顔は忘れらない



私はあの日彼に溺れたんだ






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○○:ボーッとしてどうした?

美月:懐かしくて…色んなこと思い出してた 苦笑

○○:分かるわ〜
俺もいろんな事思い出す。




券売機に近づきチケットを買う



○○:次の投影は…大人向け?
ギリ俺ら子供だけど平気かな?

美月:……本気で言ってる?



子供向けのプラネタリウムには小学生低学年までと書いてあった



○○:見落としてた。笑
じゃあチケットは…少し安くなるしこれでいいか。



カップルシートを選ぶ○○を見て美月は赤面していた



美月:なんでそれ選ぶの///

○○:これだと100円安くなるっぽい。

美月:そ…そっか…

○○:それにこれデートだろ?
カップルの雰囲気も楽しまないと!笑

美月:確かにデートだもんね… 普通だよね///

○○:よしこれで購入!

美月:お金…

○○:いいよ。こんぐらい出す 笑

美月:ありがとう///





買った席は真ん中に肘掛けがなく

2人はリクライニングを最大まで倒して両サイドの肘掛けに寄るように座った




美月:人いないね…

○○:この中でキスしたカップルとか何人いたんだろうな〜 笑

美月:なに言い出すの!

○○:笑




ジーーー




○○:お!始まる!

美月:うん///




少しずつ暗くなったドームに徐々に浮かびあがった星々は2人を出会った小学生の頃に戻した




○○は星空の一点を見つめ

美月は○○を見つめた





しばらくしてそれに気づいた○○が美月と目線を合わせて誰も周りにいないドームの中を小声で話しかける




○○:…どうした?

美月:///

○○:俺の美顔に見惚れたか?笑

美月:…うん///

○○:そこはバカじゃないのってツッコメ 笑

美月:…ごめん///

○○:調子狂うな……手でも繋ぐか?

美月:なんで!?

○○:声でかいって…

美月:…ごめんなさい。

○○:ハァ…そんな顔で前にも見てただろ。
それこそ…前にここに来た時。

美月:よく覚えてたね。

○○:覚えてたというか顔見てたら思い出した

美月:それなら…手繋いでほしい///



ギュ



座る場所は変わらない
でも席の中心には今まで届きそうで届かなかった恋人繋ぎをした手だけがあった





そんな上映時間45分はあっという間に過ぎる




○○:ハァ〜終わった〜


そう言って大きく伸びをする


美月:…つまらなかった?

○○:楽しかったよ。
でも眠くはなるよね。笑

美月:わかる。笑



少しの時間余韻を楽しみ○○が先に席を立つ



○○:行くか。

美月:…これどうする?




美月は握っていた手を少し強く握る




○○:このままでいいでしょ。

美月:///

○○:顔真っ赤にしちゃって 笑
もしかして投影中もずっと赤くしてたの?

美月:…悪い?

○○:可愛いし良いんじゃない?
それにいつもより素直になるから乙女な美月 俺は好きだよ。

美月:///






この後駅まで戻って近くのカフェでコーヒーを飲みながら美月の進路について話した後、美月を家まで送る事に





○○:ちゃんと考えてんだな〜笑

美月:そりゃ○○よりはね!

○○:でしょうね 笑




流石にカフェでは無理だったがずっと手を繋いでいる2人

それも終わりを迎える





○○:久しぶりにおばさんに挨拶しようかな。

美月:ダメ!
塾サボって遊びに行ってるから○○がいたらバレちゃうじゃん。苦笑

○○:確かに 苦笑

美月:だからここでバイバイ。
送ってくれてありがとう。

○○:うん。また来週!



握ってた手を名残惜しく離して玄関を開ける




ガチャ




すると開ける音に気づいた母がすぐに来て




美母:美月!!なに塾サボってんの!!




サボった事がバレていた




美母:塾から電話来て、心配してたのよ!

美月:…ごめんなさい。





誤り倒して明日からちゃんと行きますと約束しよう




そんな事を思っていた美月の背後の扉が開く





ガチャ







○○:おばさん、お久しぶりです。

美母:あら…○○くん!どうしたの?

○○:実は今日美月がサボったの俺のせいなんです。

美母:そうなの?

美月:…いや……

○○:美月が塾なの分かっていながら無理矢理連れ出しちゃったんです。
なので美月には怒らないでやって欲しくて。


美母:でも…


○○:すべて責任は俺にあります。
本当にすみませんでした。



○○は深々と頭を下げた



その姿を見て美月の母も直前までの怖い顔から優しい顔に戻った



美母:…私も怒りすぎたわ。
だから○○くんも頭あげて?


○○:本当にすみません。



○○はもう一度謝ってから頭をあげた



○○:美月もごめんな。


○○は俺に話しを合わせろと言わんばかりに美月を見つめた



美月:…うん。

○○:それじゃ俺はこれで。

美母:○○くんも気をつけて帰るのよ?

○○:はい。ありがとうございます。
美月も勉強頑張れよ!

美月:うん!///




ドアが閉まり親子2人きりになる

美月はすぐに




美月:ごめんなさい、実は!



お母さんに○○の悪いイメージを付けさせたくなくて真実を話そうとした


でもすぐに話しを遮られた



美母:○○くんの男気に免じてそれ以上は聞かないからね?

美月:……分かってたんだ。

美母:当たり前でしょ。
何年アンタの母親やってると思ってんの!笑

なんだったら昨日からソワソワしてるの気づいてたわよ。

美月:///

美母:それにしても○○くん良い子ね。
美月の旦那さんになってくれたら将来も安泰ね〜

美月:なに言ってるの!

美母:ちゃんと捕まえておくのよ。

美月:それ大学受験より難しそう…







ずっと彼しか見てない私だから分かる


まだ○○の目に私が映ってない事は




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