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僕たちはあの日家族になった 2






2





トントン  トントン


肩を優しい力で叩かれ耳元で囁かれるように


??:…起きて…ボソ

○○:……スゥ………スゥ

??:…起きてください……

○○:…ピクッ……ハァ…蓮加…またかよ…




いつもの朝


○○は目を細めたまま時計を見ると


○○:…1時間前じゃん…流石に早すぎるって…




起こしに来た人に文句を言う




○○:…え!?

さく:シー!




口の前で指を立ててそこに立っていたのはさくらだった

こんな事は初めて




○○:どうした?ボソ

さく:ごめんなさい…

○○:…起こし方優しかったからいつもより心臓は無事みたい 苦笑

さく:良かった…



もちろんこの状況
○○からすると疑問なのが



○○:蓮加は?



ド派手な起こし方にムカついてはいたが
来ないと来ないで寂しくなる



さく:隣だよ。

○○:!?




○○に触れないギリギリの距離で可愛い寝顔を披露していた




蓮加……スゥ…スゥ……

○○:なんで?苦笑

さく:お兄ちゃんはもちろん寝てるから知らないけど結構前からずっと。

○○:そうなの!?

さく:うん。

○○:それならそうと言ってくれれば良いのに。

さく:恥ずかしいんだよ…蓮加も本当にお兄ちゃんの事大好きだから///

○○:………そっか。



○○は寝ている蓮加の頭を撫でる



蓮加:……ンゥ……スゥ

さく: 私はそろそろ。

○○:起こしてくれてありがと。

さく:蓮加の気持ちにも気付いて欲しかったから///




○○が蓮加を撫でてる様子を見ながら
さくらは部屋を出て行った



○○:……………ハァ…眠い……








蓮加:……ピクッ…寝ちゃった…





アラームが鳴る寸前まで○○の顔を横で見続けて

直前になると隣で寝てたのがバレないように派手に騒ぎながら○○の事を起こしていた




アラームが鳴る1分前




蓮加:………もう起こさないと…ボソ



蓮加はベッドから体を起こそうとすると



ギュ〜



寝てると思ってた○○に不意に抱きつかれた



蓮加:キャ///

○○:笑

蓮加:なんで起きてるの!

○○:起こしに来たんなら起きてるのは問題ないだろ?

蓮加:………そうだけど…

○○:俺に隠れていつも横で寝てるのバレちゃうから蓮加にとっては都合悪いもんね?

蓮加:…違うもん…

○○:あれ…さくらに聞いた話しと違う?

蓮加:なに聞いたの!?

○○:たぶん全部。




ここまで蓮加は平然を装っていたがもう無理な事を悟って顔を真っ赤に染める




○○:違うってなら明日から部屋の鍵閉めてから寝よっかな〜

蓮加:………ダメ///

○○:赤くしちゃって可愛いな〜!



○○は蓮加の髪をくしゃくしゃにしながら撫でると



蓮加:やめてよ///

○○:ハハッ 笑



もう反論も出来ずに下を向く蓮加に



○○:明日は一緒に寝よっか?

蓮加:いいの!?

○○:来週は俺いないから。

蓮加:そっか……



蓮加は分かりやすいように不安げな顔をした



○○:さくらの事?

蓮加:それもあるけど…お兄ちゃん前に
「流石に兄妹とは言え高校生2人が一緒に寝るのはヤバいだろ?」って言ってたよね?

○○:言ったね…

蓮加:どうする?…撤回する!?

○○:………します!苦笑

蓮加:やった///



ギュ〜





これだけ話していれば時間も過ぎる





○○:ヤバ!遅刻!

蓮加:私はまだ平気〜

○○:起こすために来たんなら俺の遅刻は蓮加の失態だろ〜

蓮加:知らな〜い 笑



○○は抱きついてきた蓮加を振り解いて
まだ部屋に女子がいるにも構わず制服に着替える



○○:行ってきます!

蓮加:…ぅん///




そこからいつものルーティンから顔を洗うを省いて




○○:(行ってきます)




産みの母への挨拶を終えるとダッシュする。



○母:いってらっしゃい!

○○:いってきます!




玄関ではさくらがスタンバってくれてた




さく:遅い!プク

○○:ごめんごめん。

さく:蓮加とイチャイチャしてたんでしょ?

○○:してた 笑



バチン


○○:イタッ   イチャイチャシテナイヨ。

さく:嘘つきにはこのお弁当あげないよ?



あの一緒に寝た日から
○○に対して敬語も使わないようになり
少しつづ強気にもなれるようになった

でも…


○○:そっか〜 じゃあ今日は購買のパンだな。

さく:え!?



○○の方が上手なのは変わらない




○○:もう遅刻確定だけど もう行くね。

さく:待ってよ…私…頑張ったんだよ? ウルウル
今日は形は悪いんだけど卵焼きも…

○○:揶揄ってごめん!
さくらのお弁当美味しいから大事に食べさせてもらいます!

さく:///


○○はさくらから受け取った巾着袋をカバンに大事に詰めた



○○:行ってきます!

さく:いってらっしゃい///










○○:セーフ!

颯斗:アウト!

○○:セーフだろ!

颯斗:時計の針読めねぇのか?



朝練の開始時刻から既に10分過ぎた時に
堂々と制服姿で現れていたのだ



○○:はい!読めません!

颯斗:……小学生からやり直しした方がいいぞ?

○○:こんな小学生いたら世界各地のサッカー強豪クラブからオファーが来るかも!!ウキウキ



そう言いながら○○は部室へと消えていった



颯斗:……ハァ…




○○と口で対抗出来る人間は数少ない

正直颯斗でも毎回ギリギリで負けている




そんなため息混じりの颯斗の横にウェアに着替えた○○が戻ってきた





颯斗:んでマジな話しオファーあるんだろ?

○○:まぁ何個か。

颯斗:国外は?

○○:それも何個か。

颯斗:流石だな 苦笑

○○:颯斗も来てんだろ?

颯斗:ありがたい事にJの何個か興味は示してくれてるよ。

○○:そうなると今年で颯斗と一緒に出来るの最後になるのか〜

颯斗:唐突に悲しい事言うなよ。

○○:今年はタイトル全部取ろうな。




去年この高校はこの2人の活躍もあり高校3冠の内2冠を手にした

そんなチームで唯一取れなかったタイトルそれは




颯斗:選手権には忘れ物があるからな。

○○:なんかカッコいい言い方!笑




去年国立の決勝で負けた選手権

先制しながらの1-2



負けた悔しさは2人共もちろんある


それでもサッカーというのはチームスポーツ


負けた時に誰かに責任を押し付ける事は基本しない

学生スポーツなら尚更


その試合も誰かの責任で負けたような試合内容ではなかった


その場の空気感


地力の差


負けた理由を探せば色んな言い方が出てくる


だけど2人にとって負けたから忘れられない訳じゃない


去年引退した先輩達の


「お前らがいながら負けたのは俺らのせいだゴメン!」


そう涙ながらに言われたからだ





颯斗:俺なんて2点も取られてるんだぜ?

○○:おいダメダメなCBだな!

颯斗:そこは慰めろよ 苦笑

○○:笑

颯斗:それに美月も号泣してたし…

○○:確かにあれは堪えた…

颯斗:あれはって言うと先輩の涙は別に何も思ってないって感じになっちゃうぞ?

○○:……美月の奴あの時には既に3年ではマネージャーやらないって決めてたんだろうな。

颯斗:スルーするな!

○○:じゃあさっきの発言…カットで…

颯斗:無理だろ。

○○:そこをなんとか…




いつも通り2人の朝練は喋って終わる…はずだった




部員1:そこにいられると気が散ります!




今年入部した1年生が声をあげた




この高校はサッカー強豪校


上手く、そしてチームプレーに徹する選手ならば先輩後輩関係なく試合に出れる

そんな場所には○○達の代だけが上手い訳ではなく学校がスカウトした優秀な生徒が毎年のように入学して来る


要するに自分が1番だと思ってここに来ている部員が多い




監督:一年の方が正論だな!笑




横で見ていた監督は○○達が喋ってる事を放置してた自分を棚にあげてその部員の肩を持つ

そして…去年も同じ光景を見た事を思い出していた





颯斗:ごめんごめん!苦笑

○○:…颯斗…この子………

キョトン顔でその後輩を見つめる○○

颯斗:ハァ…同じサッカー部員でしょ?

○○:マジ!?ゴメン!
俺、名前とか顔覚えるの苦手なんだよ 苦笑

部員1:ふざけないでください!ムカ

颯斗:本当にゴメンな…
○○って元からこういう奴なんだ。

○○:ハハッ笑

颯斗:笑うな!お前のせいで俺まで怒られただろ!

○○:そりゃ颯斗だって喋ってたんだから当たり前じゃん。

颯斗:俺は○○がいない時はちゃんと朝練してるから!

○○:へぇ〜…じゃあ俺の事は無視して練習して来なよ。

颯斗:……しますよ!

○○:頑張れ〜!応援してるぞ〜!

颯斗:ムカつくな…

○○:フレッフレッ 颯斗!頑張れ頑張れ颯斗!ワ〜!







颯斗:…ハァ…さっきより騒がしくなったな…

部員1:なんか…すみません。

颯斗:君の方が正しいから平気だよ。

部員1:結局…○○先輩は参加しないんですね?

颯斗:フッ笑 

部員1:な…なんですか?

颯斗:本当は○○と勝負したくて喧嘩口調で言ってきたんでしょ?

部員1:…………

颯斗:アイツより上手いって認められればスタメンも確実!
なんて甘い考えなら今のうちにやめとけ。




ドスの効いた声で颯斗は後輩に警告した




部員1:!!

颯斗:去年も君みたいに○○に喧嘩ふっかけた結果
他の部員達の前でコテンパンにやられてサッカー辞めたやつがいる。

部員1:……それでも。

颯斗:俺なら大丈夫?苦笑

部員1:はい!


颯斗にはこの後輩の目に炎が見えた


颯斗:………○○!

○○:フレフレッ!

颯斗:もう応援いいから!

○○:なんだよ…今からもうひと盛り上がりするのに…

颯斗:はいはい。
そんなのいいから、コイツがお前と勝負したいって。

○○:え〜………仕方ないな…

颯斗:珍し 笑

○○: 朝だろうとちょっとは体動かさないと…今日はグラウンド走らなくて良さそうだし。










○○:動いた〜帰ろ。

颯斗:まだ授業受けてないわ!

○○:………忘れてた。

颯斗:マジか…




後ろでは全身砂埃だらけの後輩が肩で息をしながら落ち込んでいた






2人は制服に着替えて教室に着く
自分の席に着いて話すのはもちろん





○○:颯斗のせいで時間外労働させられたから
もう疲れたよ………パトラッシュ!!

颯斗:元気じゃねーか 苦笑

○○:ハハッ笑
 それにしても久しぶりに熱のある子だったな〜

颯斗:俺もあの子の熱にやられたよ。
普通ならやめさせるべきなのに○○呼んじゃったし。

○○:確かに「私失敗しないので」って雰囲気あったもんな〜 苦笑

颯斗:それでさっきの後輩○○から見てどうだった?

○○:う〜ん……あの子最初から抜くって決めてる節があるから視野が狭いかな…

颯斗:それは相手が○○だからじゃ…

○○:いや…俺以外でもそうだよあのスパイクの子なら練習中よく見たもん。

もちろん前提として下手じゃないし、技術もあるよ。
でも…今までやって来た相手が格下ばかりだったからかもしれないけど…サッカー舐めてる感じがして俺はあの子にパス出すのは嫌かな…
ボールを自ら失いに行く奴になんて出したくなんてないもん

颯斗:フッ笑 流石だな。




○○は自分でも言ってるが練習しないし顔も名前も覚えない

それでも朝練中に監督の横からボーっと眺めてるように見えてスパイクの種類とプレーでそれぞれの部員の能力を把握していた




颯斗:レギュラーになれそう?

○○:確かポジションは…サイドハーフだっけ?

颯斗:うん。

○○:まぁ3年までにはなれんじゃない。
でもドリブルは颯斗レベルのディフェンダーと練習やらないと選択肢は増えないかな…

颯斗:そっか。

○○:もし、アイツの心が折れてないってキャプテンが判断したら練習付き合ってやりなよ。

颯斗:そうだな。






美月:熱い話ししてますね〜

颯斗:美月か、おはよ。

美月:おはよ。

○○:美月チュカレタ…

美月:さっきの○○はカッコ良かったのに 苦笑



登校時にグラウンドでの一悶着を見てた美月は率直な意見を言った



○○:美月に言われても嬉しくないわ〜!

美月:じゃあ誰に言われたら嬉しいのよ!

○○:……お母さんかな。



その言葉は○○以上に周りが気を使う
美月と颯斗の顔がどんどん落ち込んでいくのがその証拠だ



美月:…た…確かに…お母さんには勝てないかな…

颯斗:そんなしんみりする事朝から言うな。

○○:ごめ〜ん。苦笑

美月:許してあげる代わりに
来週の土曜日塾休みだからデートしてよ///

○○:行ってこい行ってこい。
お土産期待してるぞ〜!

美月:は!?

颯斗:ハァ…

○○:ん?

颯斗:デート行くの誰だと思ってる?

○○:颯斗と美月。

颯斗:やっぱり 苦笑

美月:違う!…○○と私!

○○:え!?

美月:するの?しないの?

○○:…気持ちは嬉しいけど……無理かな。



美月はショックで自分の机に突っ伏してしまった



美月:…………

颯斗:美月落ち込むなって 苦笑
ちゃんと理由あるからさ。

美月:理由?

○○:来週はU-22の代表合宿だから無理だ〜

美月:そうなの?

颯斗:うん。
俺は選ばれなかったけど○○は飛び級で選ばれたんだよ。

美月:凄いじゃん!

○○:何が凄いんだよ…
合宿って朝早いし…嫌…嫌い…代表に選ばないで〜!

美月:ここまで嫌がるの○○だけだろうね…

颯斗:俺もプロの世界で移動が大変とかの文句言ってるのは聞いた事あるけど
学生でこんなに毎回グチグチ言ってる奴知らない。

美月:それも朝が苦手と言う理由…苦笑

○○:デートに行かせろ〜!!

美月:え!?///




不意の○○の言葉に美月は広角をあげた




○○:デートで合宿休むって出来るかな?

颯斗:流石に…苦笑

○○:だよな〜…美月使えねー!



○○に見えないところで拳を強く握る美月



美月:………颯斗〜
この気持ちの高低差どうすればいいかな?

颯斗:まぁ…○○だから…苦笑




その言葉で右手に作った拳を下ろした




美月:○○じゃなかったら○してるところだった…

颯斗:フフッ どんだけ好きなんだよ…笑



そんな美月の感情の変化など露知らず



○○:仕方ない諦めついでに行くか…デート

美月:は!?

颯斗:流石○○… 笑



いつもの美月なら「ついでってなによ」
なんて言葉を返すんだろうが

昔から一緒にいる美月でも
○○の言葉に心は追いついていかない




○○:美月今週デートしよ!

美月:…いいの?

○○:受験大変って前に言ってたし…
たまには美月のやりたい事やらないとな。

美月:でも…

○○:今週は急すぎで無理だったか…

美月:ううん。大丈夫。
今週のいつにする?

○○:任せるよ。



その言葉に幼馴染としてならスルーしてる所だったが
サッカー部キャプテンとして颯斗は注意した



颯斗:任せるな!部活もあるんだから。

○○:監督優しいから、1日ぐらいサボってもどうにかなるって。

颯斗:ハァ…

美月:じゃあ…金曜日。

○○:分かった。
空けとく……ってかその日部活休みじゃね?

颯斗:休みじゃない、チーム練がないだけ。

○○:ほら!休み!

颯斗:はいはい。もう何も言わない…ボソ

美月:それじゃ金曜日。約束ね。

○○:おう!
でも学校終わってからだよな…行くとこ限定されるな…

美月:そ…それなら私行きたい所あるの///

○○:マジ! 助かる!

美月:だから学校終わったらそのまま行こ///

颯斗:あの美月が乙女の顔してる〜 笑

美月:いつも乙女!

○○:ハハッ 笑






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