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「アウトプットの場を作り続けることが、学校の持つ価値。」教員と学生が挑んだ”新しい形”の課外授業

2020年、多くの大学でオンライン授業の実施が余儀なくされ、学内活動や学生同士の交流が制限される状況となりました。デジタルハリウッド大学(以下:DHU)でも、12月現在多くの授業がオンラインで行われています。

しかしそんな状況の中でも、大学として、外とのつながり・リアルな体験を少しでも提供したい。そんな思いから、本年は「課外授業」としてさまざまな企業やイベントとのコラボレーションに取り組んできました。

2020年10月28日に開催された「すみだストリートジャズフェスティバル in すみだパークシアター倉」(以下:すみジャズ)への参加も、課外授業のひとつです。例年とは形を変え、オンライン配信の形式になった本イベントにDHUの学生が参加し、卒業生を含む撮影チームのクルーとして、プロからのご指導をいただきました。

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▲(左から)本庄さん、髙野先生、大石さん、卒業生の尾山さん、前島さん

実践を積みたかった、大きな現場に入りたかった、「暇だった」…!?それぞれの参加のキッカケ

―皆さんが本イベントに参加したキッカケを教えてください。

大石:映画『TENET』を見たことがきっかけでした。わたしはこれまで、CGのようなPCの中だけで完結するものを制作することが多かったんですが、映画を見て「生も良いなぁ」と。そのタイミングで大学事務局からすみジャズの撮影クルー募集のメールが届いていたので「学校側の機会提供で体験できるのならラッキー!」と参加を決めました。

本庄:僕は、実を言うと暇だったんです……(笑)。今年は4月からオンライン授業が続いていてたので、秋には「いい加減、外で活動したい!」と思うようになっていて。僕は去年の撮影にも参加していたんですが、今年の撮影は去年と違って「オンラインLIVE」の形式になるということだったので、すみジャズを通して「オンラインでいかに良い映しができるか」にトライしたかったんですよね。

前島:わたしはライブハウスで働いているので、おそらく音楽の撮影には慣れているほう。とはいえ、どうしても決まったライブハウスでの撮影に偏りがちだったので、いつもと違う、より大きな現場での撮影経験も積みたいと考えていました。髙野先生の授業も取っているので、「髙野先生がやる課外なら間違いないだろう」と思い、迷わず応募しました。

肌で感じた現場の空気は、ひとりでは決して味わえないものだった

―実際に現場に入ってみて、印象だったことはありますか?

本庄:現場に一歩足を踏み入れたら、ものすごく良い機材に囲まれていて圧倒されました。自分がいつも入っている現場ではなかなか味わうことの無い”ガチな雰囲気”に、ヒリヒリするような緊張感もあって。「もし機材を壊してしまったら」「ケーブルを踏み抜いてしまったら」と、ひとりで制作するときには味わえない感覚に、新鮮さを覚えました。

大石:わたしは、休憩時間お弁当を食べている時間が印象深いです。

―お弁当?

大石:そうです。みんなで丸くなってお弁当を食べている間も、隣のステージでは撮影が続いていて。それをぼんやり眺めていると、「あぁ、自分もクルーの一員なんだ」という実感が沸いてきました。

本庄:あぁ、それはすごくわかる。撮影中は集中していて気づかないんだけど、休憩で一歩引いて現場全体を見たときに改めて「現場にいるんだなぁ」って感じられたというか……。

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▲休憩時間の様子。地べたに座って急いで食べるのも、現場ならではの光景(感染症防止対策のため屋外で食事をしています)

―前島さんはどうでしたか?

前島:個人的には、学内の活動だけでは交わらないような人たちとコミュニケーションを取れたのが現場ならではで面白いと感じましたね。カメラマンだけではなく、PAさんとか、配信チームとして入っていた他の会社の方とか……。用意した名刺がすべて捌けるくらい、たくさんの人と話ができました。

本庄:コミュニケーションの面白さは僕も感じましたね。初めて出会う演者さんとも、アーティストとクリエイターとして「一緒に作り上げている」感じがあった。撮影中、サックス奏者の方にカメラを向けたら、僕と目を合わせてベルアップしてくれたんですよね。そんな風に、言葉だけじゃなく「あうんの呼吸」でのコミュニケーションが取れたこともすごく思い出深いです。

「その場で体感できることはすべてやる」学生たちが現場で得た学び

―現場を通して得られた「学び」は?

前島:教えることの難しさを学べたかな。というのも、わたしは大石さんと本庄さんに比べると音楽系の現場経験が豊富で、どうしたら良い画が撮れるのか、ジャズ的に向いているのかを伝える場面が何度かあったんですよね。

今までは他の人にカメラを教えたことがなかったので、今回どう伝えたらより良いのかはかなり考えたし、教えることを通しての学びも大きかったように思います。

―それは良い経験でしたね。

前島:そう思います。今わたしは3年生なのですが、学年があがるにつれて教えるべき相手も増えてきました。今年の1年生は特に大学に通えずに困っている子も多いと思うので、今回の経験を生かして、より多くの下の子たちに教えていきたいですね。

―本庄さんはどうでしょうか?

本庄:僕の学びは、「一歩踏み込むことの大切さ」。さっきのサックスのベルアップは、実は僕が思い切って一歩演者に近づいたから撮れたカットだったんですよね。これまでの自分だったら、「演奏の邪魔にならないかな?」って躊躇っていたけど、他のカメラマンの撮影を見たら勇気が出た。一歩踏み込むことがグッドテイクにつながるのだという学びになりました!

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▲カメラを構える本庄さんの表情は真剣そのもの

―髙野先生からは、学生たちがどんな学びを得たように見えていましたか?

髙野:今回の経験を通して、「現場でのホスピタリティ」を学び得てくれたのではないかと思っています。現場での仕事は、撮影だけに限りません。撮影後のバラシや会場の清掃まで含めて「現場仕事」であり、クルーが互いを思いやる気持ちで成り立っています。

今回の学生たちは、ケーブルを巻いたりごみを拾ったりと、会場が閉まるまで動き回っていた。勉強に来た学生ではなくいちクルーとして最後まで携わることで、現場の一体感みたいなものを学んでくれたのではないかと思っています。

大石:現場の空気感を味わうためには、撮影だけじゃなく、そういう小さなところにも関わったほうが面白いと思っていました。その場で体感できることはすべて吸収して帰りたい、現場をまるごと楽しみたい、という気持ちが大きかったですね。

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▲「言語化できない感覚的なこともたくさん学べた」と語る大石さん

オフラインで顔を合わせにくい今だからこそできること

―2020年は多くの授業がオンラインで行われ、学内活動や学生同士の交流が少ない異例の年。やりたいことはあるけれど活動場所が見つからない、そもそもやりたいことがないとモヤモヤしている学生も多いのではないかと思います。そんな学生たちに向けたアドバイスをお願いします。

本庄:外に出にくい時期だからこそインプットを大切にしてほしいと思います。僕は今年に入って、Unreal Engine(アンリアルエンジン)の勉強をしたり、新しいソフトに触れてみたりと、いろんなことをしてきました。そのおかげで、ようやく自分の「やりたいこと」と「できること」が連結する感覚を持てたんですよね。

どうしてもダラダラYouTubeを見たくなることもあるけど、そういうのって、1時間後には何にも覚えていない。家にいることで生まれた時間を、「明日になっても覚えているようなもの」に触れることに充ててみたらどうだろう。

大石:今回わたしがすみジャズに参加したキッカケが映画だったように、映画館・博物館・美術館なんかで見たものからインスピレーションを受けて作りたいものが生まれることもあるんじゃないかなと思います。

前島:わたしは、オンライン授業になったことを逆手にとって、時間の使い方を考え直すことをおすすめしたいですね。たとえば自宅の近くにアウトプットのための現場を見つけられれば、授業で学んだことをすぐさま実践できて、力がつくと思います。

今までは時間が無くてできなかった地方での撮影などにも積極的になれると思うので、時間をどう上手く使うか、そのためにどう行動すればいいのかを考え直してみたらいいんじゃないかな。

―思うように行動できない状況でも、時間の使い方を見直すことで得られるものはたくさんありそうですね。最後に、髙野先生からは何かありますか?

髙野:この1年で、これまで以上に学校の持つ価値が問われるようになりました。僕個人としては、「アウトプットの場を提供する」「横のつながりを作れる」、この2つが大学が持つ大きな価値なのではないかと思っています。

先に学生たちからあったように、努力次第でインプットの機会はいくらでも作れる。一方で、アウトプットの場を見つけて自分の作品を作り上げるのは、すごく気合いが必要だし難しいんですよね。

だからこそ僕はDHUの教員として、課外授業なり、OJTなりで、「強制力のある」アウトプットの機会を作り続けていきます。チャンスはいくらでもあるので、ぜひ積極的に参加してほしいと思いますね。

そして、オンライン授業であっても、横のつながりをつくる機会はあるはずです。同じ志を持つ仲間と強いパイプを作って、互いに影響し合いながら愚直にアウトプットを続けていく。そうすれば、未来は変わると思いますね。

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