日本株式市況 20241121
21日の国内債券市場で長期金利が上昇(債券価格が下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.030%高い1.095%と7月25日以来およそ4カ月ぶりの高水準をつけた。米金利の先高観に加え、日銀による12月の追加利上げ観測が強まり、取引終盤にかけて国内債には売りの勢いが増した。
21日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、終値は前日比326円17銭(0.85%)安の3万8026円17銭だった。前日の米ハイテク株安や決算を発表した米エヌビディアの時間外取引での株価下落を受けて、値がさの半導体関連株などが売りに押され、日経平均を押し下げた。日経平均の下げ幅は400円を超え、心理的節目の3万8000円を下回る場面もあった。
朝方は散発的な先物買いによって小幅高で始まったが、次第に米ハイテク株安を受けた売りが優勢になった。米エヌビディアが20日発表した2024年8〜10月期決算は人工知能(AI)需要を背景に大幅増収となり市場予想も上回った。もっとも株価は時間外取引で下落し、東京市場でも半導体のほか電気機器、精密機器などハイテク株を中心に売りが出た。その後は米株価指数先物やアジア株の下落も重荷となった。
オースティン米国防長官が20日、ウクライナへの対人地雷の供与を許可したと伝わり、地政学リスクへの警戒が海外勢などの投資意欲を後退させた。大引け間際には日銀の植田和男総裁による「金融政策決定会合ごとにデータを判断して見極める」との発言をきっかけに円高・ドル安が進んだが、株式相場の反応は限定的だった。心理的節目の3万8000円を下回る水準では値ごろ感の買いが入り、底堅さも目立った。
マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは、「エヌビディアの決算は期待が高すぎたとあって、市場予想を多少上回った程度では買い材料にはならなかった。日本株をけん引する半導体関連株に買いが入らなければ、海外投資家は日本株買いに慎重になる」とみていた。
東証株価指数(TOPIX)は続落し、終値は15.48ポイント(0.57%)安の2682.81だった。JPXプライム150指数も続落し、9.02ポイント(0.75%)安の1186.05で終えた。
東証プライムの売買代金は概算で3兆7207億円、売買高は16億8005万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は851。値上がりは731、横ばいは63だった。
アドテストやレーザーテクが売られた。三菱重、日立、OLC、ファストリも安い。一方、みずほFGや東ガスは買われた。
21日の東京株式市場でマネックスグループ株が一時前日比47円(5%)高の1045円まで上昇し、年初来高値を更新した。買いのきっかけは、暗号資産(仮想通貨)であるビットコインの上昇だ。トランプ次期大統領の規制緩和期待が価格を押し上げるなか、子会社で仮想通貨の交換業を手掛ける同社の収益にも追い風との見方が広がった。
<6644> 大崎電 764 -35
大幅反落。いちよし証券ではレーティングを「A」から「B」に引き下げ、フェアバリューは900円としている。業績予想に変更はないものの、株価の上昇を反映しているようだ。一方、第2 世代スマートメーターの収益貢献本格化などには引き続き注視ともしている。なお、国内計測制御事業では、スマートメーターが第2世代機導入までの端境期となっており、26年3月期も業績は踊りが続くと予想。
<5233> 太平洋セメ 3566 +131
大幅反発。大和証券では投資判断を「2」から「1」に格上げ、目標株価も4200円から4700円に引き上げている。前回は米国の景気動向に不透明感が台頭したことで判断を引き下げたものの、米国セメント販売は想定よりも落ち込まない可能性が強まり、国内セメント値上げのトーンが強まったこともあって、業績改善の蓋然性が高まったとしているもよう。26年3月期営業利益は1000億円を予想しているようだ。
<6526> ソシオネクスト 2358 -68.5
大幅反落。野村證券では投資判断「ニュートラル」を継続して、目標株価を3600円から2800円に引き下げた。中国需要の一段の下振れを織り込んで短期業績予想を下方修正、26年3月期にかけて、需要は横這い圏想定も先行開発強化に伴い、減益の可能性が出てきたとしているようだ。2期連続の減益リスクから同業に対するディスカウントを付与としている。なお、26年3月期営業益は300億円、前期比3.2%減を予想。
<5803> フジクラ 5587 -56
続落。前日発表の米エヌビディアの決算で、AI向け新GPU「ブラックウェル」に関し、前向きな発言が聞かれたもよう。製造工程の調整が完了し生産性が改善、稼働率が100%に達する過程で粗利益率は一時低下するが、その後70%台半ばまで回復するという。「ブラックウェル」を使ったデータセンターでは、従来と比べ光ファイバーの必要量が格段に多くなるとみられ、買い先行で始まったの、全般安に引きずられる形に。
<3962> チェンジHD 1364 +24
急反発。子会社のトラストバンクは前日、国内最大級のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」によるOEMサービス提供で、前澤友作氏代表のカブ&ピースが運営する「KABU&ふるさと納税」において、ふるさとチョイスに掲載している全国のお礼品や自治体情報の連携を開始すると発表。これにより、「KABU&ふるさと納税」で、ふるさとチョイスと契約している1500以上自治体のお礼品を選ぶことができる。
<6794> フォスター電 1475 -344
急落。前日には上半期決算説明会、並びに、中期事業計画を発表。中計では、最終年度となる28年3月期売上高1500億円(25年3月期予測1350億円)、営業利益90億円(同65億円)、ROE8.0%目標などを掲げ、配当性向40%への引き上げ・DOE2%下限などの株主還元強化策なども発表。ただ、目標数値にサプライズは限定的とみられる中、26年3月期は営業減益を見込んでいるもようで、マイナス視された。
<4506> 住友ファーマ 611 +18
大幅反発。米国でのパーキンソン病治療に向け、iPS細胞から作った神経細胞の「空輸作戦」に乗り出すと一部で報じられており、材料視される展開となった。米カリフォルニア大サンディエゴ校の臨床試験に細胞を提供することになり、今年度中にも治療を実施予定だが、品質が安定した細胞を送るため、三菱倉庫や稲畑産業、日本航空などと協調していくもよう。日本の細胞作製技術の輸出の先駆けになりそうだとされている。
<6584> 三桜工 817 +61
大幅続伸。データセンター向けの水冷冷却装置の新機種を開発したと発表しており、今後の展開に対する期待感へとつながったようだ。今回のフィンパイプタイプ冷却装置は、 2月に発表したパイプタイプ冷却装置と同様の機能を持つ製品となるが、パイプ表面をフィン付き加工とすることで熱交換率を高め、それによって前機種同等の熱交換性能で機器の奥行寸法を4分の1に、重量も2分の1に大幅削減できるようになるもよう。
<7868> 広済堂HD 507 +53
大幅反発。前日に自己株式の取得実施を発表。発行済み株式数の2.08%に当たる300万株、16.5億円を取得上限としており、取得期間は本日から25年1月31日まで。株主還元の充実および資本効率の向上を図るとともに、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行することを取得目的としている。同社の自社株買いは23年6月に立会外取引で実施して以来と見られる。需給改善を期待する動きが先行へ。
<6857> アドバンテス 9385 -156
大幅反落。前日に米エヌビディアが決算を発表。8-10月期は前年同期比94%増収で、継続事業ベースのEPSも同2.0倍、ともに市場予想を上回った。また、11-1月期の会社計画レンジ中央値は、売上高が同70%増の375億ドルと市場予想の371億ドルを上振れるもよう。総じて期待通りの好決算だったが、時間外取引では下落する形になっており、国内半導体関連にも売りが波及している。