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<この私>の軌跡/奇跡 永井 均作品レビュー

Reviewed in Japan on February 13, 2005 Amazon(一部改変)

レビュー対象作品は以下

 
著者の本を読むことは実はあまりない(それでも何冊かは読んでいる)のだが、間違いなく哲学書だと思えるこうした本にここしばらく出会ったことがない。あえて言えば、同じ著者の『<私>のメタフィジックス』以来かもしれない。『転校生とブラックジャック』を経由して。著者の本をあまり読むことはない理由は、『<私>のメタフィジックス』以来、「変わらない、そして同時に、そのつど開闢の奇跡に出会っている<この私>の軌跡/奇跡とでも言うべきものにいきなり出会ってしてしまったという出来事による。

 『<私>のメタフィジックス』が出て直ぐだったと思うが、著者が主賓として話した大学院研究科主催の出版記念的な研究会に招かれて著者と質疑応答を含む話をした懐かしい思い出がある。当然だがまだ若々しかった著者が私に「君は私の本をよく読んでいるね」といった言葉をかけてくれたのは鮮明に記憶された。 

なお、本書と併読することが何かのヒントになるかもしれない作品として、八木雄二氏の『中世哲学への招待―「ヨーロッパ的思考」のはじまりを知るために』(平凡社新書)を挙げておきたい。<開闢の神>は、本書ではデカルト、ライプニッツ、カントという三者との最深部における対話を通じて記述されている。著者自身にとっては明らかであろうが、ヨハネス・ドゥンス・スコトゥスの神との遭遇を避けて通ることはできないようだ、ということが八木氏の著作によって分かる。ただ、たとえ職業的哲学研究者であっても、いやだからこそ、こんな困難なテーマには誰一人取り組まないかもしれないが。



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