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【TESV : Skyrim】 Vigilant 考察・解説、というか感想文。


本稿は日本人のmodderであるvicn氏が製作したTESV:skyrimのクエスト追加MOD、"Vigilant"について述べたものです。
盛大にネタバレしますので未プレイの方はプレイしたのちに目を通していただければ幸いです。ついでにストーリーの核心に迫ることも書きますのでプレイ済でもまだvigilantの要素全部見てないよって方も気になるようでしたらそれらを回収したのちにご覧いただくようお願いします。

とはいえvicnサーガ全体の考察(と呼べるか怪しいけど)の記事で触れましたがVigilant, Unslaad, Glenmoril、これら三作の全体を覆う謎というものはあるのですがそれぞれ単体で見た際に取り立てて解説や考察というものは必要ないのではと思ったり(Glenmorilは別ですが)。割と見たままですしね。もちろん細かい部分での謎や事柄について考証・考察の余地はありますが個々に解釈を委ねられるところも多いですし、基本的なあらすじはプレイした人の間で解釈が激しくズレることはないかと思います。ならそれでいいんじゃね?っていう。
ですので解説や考察というよりは単に思いついたことを書き連ねるただの私見。検索にかかりやすくするために考察とか解説とタイトルでのたまった。あざとい。

基本的に手遅れな物語
vigilantにはある種の倦怠感・虚脱感・無力感、やるせなさというものに終始つきまとわれますがこれは『始める前から既に終わっている物語』だからなのではないでしょうか。
なにせ救うはずのヒロインは数千年前にすでに死んでいて、『物語の本来の主人公』も数千年前に暗黒面に堕ちて久しい。登場人物たちも自分の犯した罪に苛まれ続けているがそれにも疲れ果て、ただ呆けて消え去るのを待つばかりのケースも多く。
プレイヤーができることはとうの昔に起きた数々の悲劇に対し救いがある可能性もあったと道筋を残して去る、程度のものです(グッドエンディングだとすると)。壮大な蛇足なんですよね、vigilantって。
ただ、ドラゴンの突破状態であるストーリーの中でプレイヤーが辿った物語はプレイヤー自身の正史になりますので軌跡を残すことは重要な意味をもちます。私に限らずvigilantを初めてプレイする人に対してプレイ済の人が「ああしろこうしろ」って言わないのはそういうことですよね。どのような結末を迎えるにせよそれは実際にプレイした人自身の物語であって他人がどうこう言うものではない。
もしかしたら物語を進める中で取り返しのつかない罪を犯しましたか?それはほかでもない貴方がしたことです。
「疲れたのなら歩みをとめるといい。嫌になったらやめてしまっても構わない。ジョバンニも誰もお前を責めたりはしない」
でもこの記事を読んでいる貴方は歩みを止めなかったはずです。その選択をしたのも貴方自身です。Vigilantは実際にプレイした人の物語なのです。

各エンディングについて
vigilantにはおおまかに5つのエンディングが存在します(この他にあったっけ?あったら教えて)。

①かつて吟遊詩人が果たせなかったこと、誤った選択をして後悔していることをプレイヤーが代わりに正し、遂行する(ハッピー:グッドエンド)
ラマエと歌の続きを作る約束をし、リュートを手に『石』を蹴飛ばす。

②血呪を使いラマエを生き返らせようとするも、ラマエ・バルを生み出してしまい後悔と自責の念に駆られる(ビターエンド)
歌の続きを作る約束をしない場合、『オプスカルス・ラマエ・バル』に記載されている出来事を垣間見ることができます。TESの公式設定に則ったものですね。またその場所がストゥーン渓谷(ステンダール聖堂)であることが明示されます(エルダーグリーム聖域からずいぶん離れてるなというツッコミはさておき)。さらに選択肢によっては自身をステンドルと名乗ります。

③『石』に飲み込まれモラグ・バルに乗っ取られる(発狂ルート:モラグ・バルエンド)
これはかつて吟遊詩人が辿ったルートと全く同じ。ラマエを甦らせるためにリュートを捨て『石』の力を借りようとし、結果として狂気に囚われ自身がモラグ・バルになってしまう。ある意味vigilantの正史とも言えます。ストーリーを振り出しに戻してループさせてしまう。
ちなみに②で登場するモラグ・バルを殺害しその心臓を喰らってもこのエンディングになります。

④自身の犯した罪の記憶を捨て去る(発狂ルート:忘却エンド)
発狂ルートの選択肢によってはプレイヤーは記憶を失い夢か幻か判断の付かない不毛の地をさまよった挙句に力尽きます。それを救ってくれたのがステンダールの番人であるヤコブ。そして自身は破られた日記を持っていました。そう、アルタノです。吟遊詩人の『中身』がモラグ・バルになってしまった結果、その搾りカス、抜け殻としてアルタノは存在していましたのでこれもvigilantの正史と言えます。

⑤モラグ・バルの手駒として利用される(エセリウス侵攻エンド)
塔の頂上に来た段階でカルマが50を下回っている(たぶん)とこのエンディングになります。
プレイヤーはモラグ・バルを討つため『塔』にたどり着くまでに殺戮を繰り返し、結果的に『石』に力を溜める助力をしてしまう。モラグ・バルはそれを用いてエセリウスに侵攻を開始、用済みとなったプレイヤーは舞台から退場させられる。モラグ・バルの傍らにはステンダールの亡骸が。
これが一番のバッド・エンディングかな。

プレイヤーは何者だったのか
先に結論から申し上げますと
プレイヤー=吟遊詩人=アルタノ=モラグ・バル=ステンダール
ということ。
ただし、これらがすべて同一人物・・・ではなくあくまで精神的な繋がりがある、と考えるのが自然。『石』の一部に触れてしまったことによりそれらの意識と同調してしまった、ということではないでしょうか。
正確に言えばシェザールを語源とする"Shezarrine"(読み方はシェザリン、シェザーリーンあたりですかね)という存在であり、要約すると死にはするが意識と記憶を保ったまま転生する、というものです。劇中にある『殉教』がそれですね。またペリナル・ホワイトストレークがシェザリンだったことが知られており(これは公式設定)、イスミールが率いた500人からなる同胞団の一員だった説もあります。
とはいえプレイヤーが触れたのはシェザールではなく"Ada-Bal"(バルの魂)の一部。劇中でAda-Balは"Chim-el Adabal"(チムエル・アダバル、もしくはキムエル・アダバル)の模造品、と審問官ペペが言っていましたが効能としては似たものがあったのかもしれません。
アダバルってアイレイドの言葉で『記憶』とかそういう意味だと思うんですけど、というかアルドメリの語源がアダバルだったような、確か。チムエルはアカトシュとかそのへん?ごめん、きちんと調べてない。Ada-Balはアダ・バルとわざわざ分けて表記しているのでバルの魂という意味だと思います。
脱線しましたがChim-el Adabalは王者のアミュレットのことです。王者のアミュレットはアカトシュの血をもとに作られ、ドラゴンボーンでもあった聖アレッシアの魂が入った魂石とされていますがシェザールに由来するものという説もあり・・・・ここ掘り下げていくといつまで経っても終わんねえ。『石』に触れたことによって輪廻転生する宿命を負ったぐらいの解釈でいいです。『石』に触れたペペもしばらく幽体でウロウロしてましたしね。
2021 6/21 追記
アダ・バルをモラグ・バルの魂だとドヤりましたが本当にそうか?と考えだしている。アダ・バル=赤い雫だとするとモラグ・バルの魂が入っていると考えるのはちょっと無理があるような。しかしトカゲは『石』に擬態した、とある。この辺はもっと熟考する必要があるかな。

プレイヤーは吟遊詩人の遺志を継いで成し得なかったことを代わりにやり遂げた人物ですが吟遊詩人と同一人物ではありませんし、モラグ・バルも吟遊詩人が成り代わったものとオリジナルのモラグ・バルの二名登場します。吟遊詩人の回想に出てくるモラグ・バルはバルと同化した吟遊詩人の負の部分だとされていますが、本編のラスト、最後の最後で登場するのは本家モラグ・バルでしょう。
この点に異論がある方はあまりおられないと思います(個人の解釈次第なんでいても全然いいんですけど、むしろ居るなら意見を是非聞きたいぐらいだ)。モラグ・バルになった吟遊詩人の抜け殻がアルタノで分かりやすいですし、そのモラグ・バルを殺してモラグ・バルにも吟遊詩人にもアルタノにもなることができるプレイヤーも分かりやすい。
 問題はステンダールですよね。『え?ステンダールってプレイヤー?そうなの?』ってなる。私になりに調べた結果、プレイヤー=ステンダール説は信憑性のあるものだと思います。当然、九大神の一柱、ステンダールと同一ではなくあくまで精神性という意味。

先述したとおりエンディングの選択肢次第でプレイヤーは『自分はステンドルだ』と名乗ります。デバックルームにいるアレですね。厳密に言うとプレイヤーではなく"吟遊詩人だったもの"というのが正確でしょうが。
さらにエンディング④、ここが重要になってきます。
このシーン、ただ見るだけでは意味不明なんですがきちんと読み解くと見えてくるものがあります。
プレイヤーをいざなうキツネ、キツネはシェザール、ショール、つまりロルカーンの化身。その過程で朽ちる寸前のツンに出会います。ツンはskyrim本編にも登場するソブンガルデの勇気の間を守る門番。ソブンガルデはショールが支配する領域。ちなみにskyrimのプレイ時間が2000時間なのに未だにソブンガルデに行ったことがありません(急に何の話)。ツンはプレイヤーに「お前はストゥーンか?いや…違うな」と問いかけてきますがストゥーンはツンの兄弟であり、一説にはステンダールそのものではないかと言われています。ストゥーンのシンボルは鯨。道中に転がっている巨大な骨はもしや鯨の残骸?すわなちステンダールの死を示唆しているもの?骨も無数に散らばっているので過去に数多のステンダール候補が朽ちたのかもしれません(プレイヤーもその中の一人)。
上でも書きましたが数千年の間にプレイヤー以外にも『vigilant』に取り込まれた人が数えきれないほどいたのではないでしょうか。その都度ストーリーを巻き戻したりループさせて。最終的に塔の頂上にたどり着いたのはプレイヤーだけだったのは確かですが。
カイウス卿が『メアリー様がまた死んだか。これが最後だといいが』と言ってましたけどこれはそういう意味なのではないかと解釈しています。もちろんかつてアレッシア会に火あぶりにされたことも指していると思いますが。ストーリーをループさせる目的は分かりますよね、『石』に力を溜めるためです。余談。

最終的にステンダールの祠に触れアルタノとなるわけですがその場所ものちにステンダール聖堂が建てられるストゥーン渓谷であると考えられます。
vigilant劇中においてステンダールが直接ストーリーに関わることはありませんが様々な形でほのめかされ、先述のことを考慮するとプレイヤー=ステンダールも納得できます。もっと言うとプレイヤーの精神性(カルマ)がステンダールの姿を借りて具現化する、といったところでしょうか。エンディングの種類によってはそれが明確に表れますしね。
余談ですが発狂ルートには様々な動物の死骸が転がっています。キツネ(ショール)、クマ(ツン)、オオカミ(マーラ)など。まあそういうことを示唆しているんでしょう。
この辺は私の他にも似たような解釈をされてる方が複数おられましたので(というかぶっちゃけその意見に迎合した感がある)、見当はずれな解釈ということはなさそう。

細かい疑問点
・吟遊詩人って結局なんだったの
これはvicn氏のサイトにて用語等詳しく解説されていますのでそれに付随するものになりますが、『エルダーグリームに芽生えた木霊』と記載されています。ラマエを見ているうちにエルダーグリームは恋慕の情を抱くようになり吟遊詩人という木霊を生み出した。吟遊詩人の肉体であるアルタノはボズマーなので実際そうなのでしょう。
問題はもう一人の吟遊詩人、バルです。こいつは何者だ。単にモラグ・バル化した側の吟遊詩人の体現、悪事のためのその先遣人員という解釈でいいのだろうか。アイレイドだけど意味はあるんだろうか、なんかなさそう。ラマエの執事であるファキスが言っていた「以前はもう一人執事がいたがモラグ・バル卿が連れて行った」のがこのバルだと思いますけど。
 ファキスの名前を挙げたので思い出しましたがラストシーンでエルダーグリームにいる吟遊詩人とラマエのところに来て「おいラマエ、ショール公が呼んでるから来い」的なことを言いますがこのショール公というのも謎ですね。ファキスはラマエを「奥様」と呼びますのでショール公とラマエは夫婦であることが想像できます。ゆえにエルダーグリームこと吟遊詩人は自分の恋が成就しないことを知っていたことになります。だからモラグバルの狂気に触れた場合にラマエを乱暴してしまうのですね。ラマエはショール、もしくはショールの化身、言わば木霊(ショールは木じゃないけど)と結婚し、その庇護のもとにいたのでしょうか。ここはちょっと判断材料が足りない。

・カドウェルおじさんってなに?
という疑問をお持ちの方がおられるの見かけたのでちょっと調べてみました。とはいえ完全に聞きかじりで判然としない情報ですが。
カドウェル(表記的にはキャドウェルのほうが正確だと思う)はvigilantの創作ではなくTES公式のキャラクターです。ESOにも登場するのでプレイしてる人のほうが詳しいと思う(私はマルチゲーに興味がないもんで)。
ので簡単に言うとメレシック時代に活躍したドラゴン退治などを行った騎士(それも強い)だったようです。チャンピオンとして敬われる一方、エルスウェアでは数々の蛮行で『裏切者』と呼ばれ(元々頭がイカれてたっぽい)、仲間だった連中に追いまわされ、体をバラバラに切り裂かれて首を切られコールドハーバーに堕ちたようです(最終的にとどめを刺したのがモラグ・バルの配下でその際に魂を取られた?)。
正直情報も少なく海外の有志でも分かってないことが多いみたいなので書いといてなんですがこれはあまり鵜呑みにしないほうがいいかも。

vigilant単体で見た時の謎はこんなところですかね。他にもマニマルコとかいるっちゃいるけど。あいつなんであんなとこにいるんだっていう。skyrimってメインクエスト一度も通してやったことないけど(いくつか理由があって)vigilantは死ぬほどやってるんだよな、だって面白いもの。もともとドーンガード(というかセラーナ)が好きなのでそれに根深く関わるストーリーだということもあるけど。Vigilantが自分にとってのメインクエストになってます。エルダーグリーム聖域の近くを通ったら墓参りにしに行くのはvigilantあるある。あそこの存在意義が変わってくるからね。

あとがき
このVigilant、かなりクセが強いので人を選びますしプレイの途中で嫌気が差す人も割と多く見られます。実際私がそうでして一度途中まで進めた挙句にアンインストールしたという経緯があります。ですので初見プレイではなかなか魅力が伝わらないのも頷ける部分がある。ただvicn氏は意図的にそうしてる。これは間違いない。
奥の深さが見えてくるのはひと通りの行程を理解した二巡目からではないでしょうか。現に一度プレイを放棄した私がびっちり文章書くまでハマってしまってるので(考察が正しいかどうかはさておき)。それでもハマる人とそうでない人もいるでしょうけど。伏線がありとあらゆるところで張り巡らされ物語も暗示的ですので自分で咀嚼する必要があり、そういうのが苦手な人は拒絶反応を起こしてしまうかも。TESの史実や伝承などの知識も必要になってきますしね。好きな人は延々しゃぶるスルメ。

ver.1.6.2で聖笛会とか出てきたけどあれはまた別の話で初見プレイの方は混乱してしまうかも。vicnサーガ全体に関わるやつなんで。
マゾーガのクヴァッチ。オヤジギャグじゃん。

そんじゃまた。
製作者であるvicn氏、ボイス付きMODを作ってくれた方々、日本語翻訳ファイルを用意してくれた有志一同に謝意を。

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おまけ。以前描いた審問官ペペ

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