見出し画像

通販と魔法の紙袋と私のハッピーな三角関係

もうずっと通販大好き人間な私は、服も靴も鞄もCDもネットショッピングで購入することが多い。
価格の安さとかポイントの付与率が良いからだったり、近くにはないブランドの洋服を手に入れられたり、単純に買いに行くのが面倒だったり、理由はいろいろ。


ジーンズや爪先の細いパンプスなどのサイズ感が気になるものや、肌触りが気になるものは、お店まで行って現物を確認することもあるけれど、

「オッケ〜サイズぴったりやから、クーポンある通販で買おう〜」

なんてこともあるくらい通販を活用している。
(主にZ●Z●TOWNの話である)

そんな私が、セール期間でもないのにお店まで出向いて買ったものがある。

某ハイブランドの財布である。

雑貨屋で適当に買った三つ折り財布が思いのほか使い勝手が良く、数年使ってくたびれてきた頃に

「あれ…そろそろいいお財布持った方がいいのでは?」

と思うようになった。


時を同じくして、夏のボーナス、新型コロナの給付金をゲットしたこともあり、
財布を新調することに決めた。

「三つ折りでカードが多めに収納できるもの」
「長く使いたいから、高価でも気に入ったいいものを買う」

このくらいの条件で探し始めて、インターネットやSNSで情報収集を始めた。
目に留まったのは誰もが知る某ブランドの財布。


かわいい〜〜〜でも高っけえ〜〜〜〜〜〜〜!!!


公式サイトの商品ページを見ておったまげた私は、すぐさま商品名をコピペしてググった。
他の通販サイトなら安いんじゃ?と思ったから。

確かに某通販サイトで買えば2〜3割は安くなりそうだったが、なかなかに高価なものを、初めて利用するサイトで、個人輸入で買うのに少し気後れした。
発送から到着までにかなりの期間を要することもわかった。

財布を使い始めたい日(天赦日と一粒万倍日が重なるスーパー縁起の良い日)も間近に迫っていた。(無計画さがよくわかる)

使い始める前に、お金を入れてしばらく寝かしておいた方がいいと言うし、通販で買って到着待っている時間勿体無くない?!


こうして家から徒歩15分の百貨店に足を運ぶことを決めた。
じわじわと暑い日が多くなってきた梅雨直前、快晴の日だった。



百貨店の化粧品売り場は常連だが、ブランドショップに足を踏み入れるのは初めてである。
ドキドキしながら入店し、接客してくれたのは背が高くてシュッとした若いお兄さんだった。
(ずっと私に付いて接客してくれることにとてもびっくりした)


欲しかったものは幸運なことに店舗にも在庫があり、じっくり現物を見せてもらった。

初めてここで買い物をするのだと伝えると、親身になっていろいろな商品を見せてくれた。
欲しかったのはくすんだピンク色が絶妙にかわいい財布だったのだけど、その場で見てかわいいと思ったホワイトの二つ折り財布とを並べてウンウン唸る私を、お兄さんは静かに見守ってくれた。


結局、ピンク色の財布を買うことにした。
整形とか、脱毛とか、そういうのを除けば、私にとって人生で一番高い買い“物”だった。


カードを切るときはとてつもなくドキドキした。
こんなの人生で初めて、

いや、推しのコンサートを郵便局で前払いで申込みしなきゃいけなかった時代に窓口で現金30万円ぶち込んだことあったなまあ結局はずれて25万円返金になってたなもっと現場入りたかったな、とか

いろいろ考えながら古い財布にクレジットカードを仕舞った。


会計が終わり、お兄さんが商品を用意してくれている間、ふかふかの高そうな椅子に座って待っていた。
そわそわしっぱなしで。


店内は独特な雰囲気だ。
ハイブランドのショップは、人が全然いなくて静かで、背筋が伸びた店員さんが外から見えてちょっと入りづらい雰囲気……
というイメージだったが、その日は人が多く賑やかで、入場制限をしている程だった。
なかなかに派手でちょっとだけ胡散臭い感じの見た目のお客さんも結構いた。
大阪ミナミという土地柄もあるかもしれない。
不自然に見えないように気を使いつつ、キョロキョロと人間観察をした。


妙に遅いな、と思った頃にお兄さんは戻ってきた。
分厚くて、しっかりしたつくりで、目を引くカラーリングの憧れの紙袋を持って。


「ご自宅用とはお伺いしていたのですが、ラッピングしておきました」


お兄さんはそう言って紙袋を差し出した。

財布が入っている箱にはリボンが結ばれていた。

人の心をときめかせるのが、なんて上手な店員さんなんだ。

もしかして、このお店で何か買う人はみんなラッピングをしてもらっているのだろうか。

初めてお客さんになった私に、そんなことはわからないけれど、ドキドキがうきうきに変わっていった。


消耗品、日用品として買うつもりでいた財布が、リボンが結ばれた途端、魔法がかかったみたいにきらきらの宝石に変身した。


帰り際、香水が好きだという話をすると、お兄さんはいくつもある新作の中から私が好きそうな香りを選び、ムエットに吹き付けて渡してくれた。

お兄さんに見送られ、スキップしたいくらいに、歌い出したいくらいに浮かれポンチになりそうな衝動を必死に堪えて、また家まで歩いて帰った。


行きと同じ道なのに、全然違う。
世界ってこんなに楽しかったっけ!私の街ってこんなだったっけ!


ほんの数時間前の景色と違いなんてないことなんか、わかっている。
違うのは私の右手にある紙袋だけ。
これがあるだけで飛べそう。
通販大好き人間が初めて味わうこの幸福感は、麻薬的だった。

早く帰ってもう一度財布を手に取りたい!
地上から浮いてしまいそうな足を一生懸命動かして、帰宅した。
(途中551で豚まんとちまきだけ買った)


紙袋から箱を取り出すのも、リボンを解いて箱を開けるのも、財布を手に取るのも、全部特別な瞬間だった。

お店に行き、お兄さんに接客してもらい、紙袋を手に街を歩く。
全ての行動が通販では知ることのできない、幸せな体験だった。

通販は便利だ。安い。
これからも間違いなく、ヘビーユーザーであり続ける。
(Z●Z●TOWNいつもありがとう注文してたコート昨日受け取ったよ)


でも、こんな特別な1日と思い出が得られるなら、お店に足を運んでものを買うのも悪くないと思った。

紙袋を手に、うきうきしながら帰ったあの日みたいな1日がまた来るように、仕事を頑張りたい。


そのときはまた、あのお兄さんから買えたらいいな。
自分の名前が刻印されたピンク色の財布を見て、私は毎日にこにこしている。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?