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人前で綺麗な字を書きたい

私は字が綺麗な方ではない。
小学生のときの作文は、原稿用紙のマス目に対して豆粒サイズの頼りない字だった。
高校になっても授業のノートは読めるか読めないかギリギリのレベルだったので、友達に「ノート貸して!」と言われると困った。
貸したい気持ちは山々だけど、中身が残念なことになっていたので、
「読めなかったら解読して。ごめん」と謝りつつ渡していた。
「読めたけど楔形文字みたいだった」という感想とともにノートは返ってきた。


一応、改善は試みた。
ペン字のトレーニング帳を買って練習したり、今は懐かしきDSの「美文字トレーニング」をしたり。
その成果が出たのか、少しはマシになった。


✳︎
人前で字を書く職業の人ってすごいな、と思っている。
たとえば、ブライダルプランナーの方やジュエリーショップの店員さんなど。
結婚式の確認書やジュエリーの保証書の字が汚いことは滅多になく、大抵は綺麗な字、もしくはかわいい字で必要事項をさらさらと書いてくれる。

就職時にボールペン字スキルのテストでもあるんだろうか。
お客さんとしては、手元に残る書類だから綺麗な方が印象は良いだろうな。
事前に時間をかけて記入したものでなく、その場で書くところがすごい。


✳︎
私は人前で書くときや大事な人に手紙を書くときに最も字が下手になる。

それはなぜか。

まず、手元をじーっと見つめられたり、書き終わるのを待たれたりする空気にとことん弱い。
「まだ書いてるよねー……。まだかなー…….」という沈黙の時間が流れると、早く書き終えねば!と焦ってしまう。

手紙の場合は、相手にしげしげと見られることを想定し、綺麗な字と思われたい!と意識して手が硬直する。結果、変な力が入り線がガタガタに。

自分が思うよりも相手は人の字なんて気にしていない、ということは頭ではわかっている。
なのに自意識だけが膨らんで、勝手に緊張してしまうから厄介だ。

逆に自分用のちょっとしたメモ書きや事務的な封書の宛名などは、スラスラと書ける。
無駄に綺麗。
こっちを人に見せたいよ!と思う。


✳︎
字にはそのときの気持ちが表れる気がする。
先ほども触れたが、上手く書けないのは大抵焦っていたり、うまく書こうと意識しすぎていたり。
そういう心の動揺がペンのコントロールを邪魔してくる。
字に迷いや萎縮がありありと出てしまっているんだな。
そうではないときは、ほどよく力が抜けてなめらかな線で書ける。


自分の日記を見返しても、その日の自分の心模様が反映されているように思う。
「この文字の勢いは…! この日は心が相当荒んでたんだな」とか、
「この日は余裕があって丁寧に気持ちを残したい気分だったんだな」とか、
「終わりになればなるほど雑になっているから、長く書くのがめんどくさい日だったんだろうな」
などと、筆跡でそのときの精神状態が窺い知れる。
手書きをする機会はめっきり減ってしまったけれど、これはデジタルにはない手書きの良いところだなと思う。


✳︎
私は人前で字を書く職業ではないけれど、さらさらと美しい字を書ける人が眩しく見えて、密かに尊敬の眼差しを送っている。

まずは人前であまり深く考えないように意識して、綺麗かどうかはともかく、おおらかで伸びやかな字を書けるようになるところから始めようと思う。

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