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映画で英語学習「フルートベール駅で」~人種差別を考えるシリーズ⑦

「無抵抗の黒人が白人警官によって殺された」

そう聞くと、今やだれもがジョージ・フロイド事件を思い起こすことでしょう。しかし、「丸腰で無抵抗の黒人が警官によって殺された」のはフロイド氏が初めてではありません。統計によるとちょっと信じがたい数字が出てきて、慎重に取り扱う必要はありそうです。

暴動に発展した今回2020年の事件以前にも、同様の抗議暴動が何度も起こっています。記憶に新しいところでは、2014年に18歳の黒人少年が白人警官に射殺されたことに抗議するミズーリ州ファーガソンでの暴動がありました。さらに規模の大きなものとしては、1992年の「ロサンゼルス暴動」が日本でも大きく報道されました。発端は「ロドニー・キング事件」と呼ばれる警察官による黒人男性暴行殺害事件に対する抗議運動で、怒る人々が暴徒化し収拾がつかない状況が1週間近く続きました。

暴徒化する抗議運動の問題点は、人種差別問題から離れ独り歩きしてしまっている怖さもありますが、今回ご紹介する映画も、残念なことに実話で、その後やはり大きな抗議活動に発展したそうです。

フルートベール駅で

「フルートベール駅で」は、2008年の大みそか、警官の手によって、わずか22年で無念にも生涯を終えることになったある青年の”最期の一日”を追った映画です。彼と周りの様々な人とのかかわりと言動から、一人の人間の死がいかに悲しいものであるかが浮き彫りにされ、まさにBlack Lives Matter、そしてAll Lives Matterと、命の重みについて深く考えさせられる物語です。

作品データ

原題:Fruitvale Station(2013)
監督/脚本:ライアン・クーグラー
制作:フォレスト・ウィティカ―
キャスト
  オスカー・グラント:マイケル・ジョーダン
  ソフィア:メロニー・ディアズ
  ワンダ:オクタヴィア・スペンサー
  タティアナ:アリアナ・ニール
  カルーソ警官:ケヴィン・デュアランド

あらすじ

2008年の大みそか、22歳のオスカーの心には様々な思いが巡っていた。

恋人と口論してしまったし、職場復帰にも失敗した。一からやり直したいが前途は多難。簡単にマリファナでも売ってお金にしようかとも考えたが、果たしてそれでよいのかと、自問していたのだ。

それは奇しくも母の誕生日、オスカーはそれまでの自分を振り返り、母にとってより良い息子に、恋人にとってより良い伴侶に、そして愛する娘にとってより良い父親になろうと決心する。

母親の誕生パーティーに参加した後、心機一転の記念にサンフランシスコのニューイヤー花火を観に行くことにするオスカー。そしてその帰り道、電車内の喧嘩に巻き込まれたオスカーは、フルートベール駅のプラットホームで駆け付けた警官に背中から撃たれ、短い生涯を終える。

普通に生きている普通の市民に、なぜこのような理不尽なことがおこるのか……、映画は、一人の青年の死をめぐって揺れ動くアメリカの現実を浮き彫りにする。

心に残るセリフ

Tatiana: Nooo! Don't go. I'm scared.
Oscar Grant: Scared of what?
Tatiana: I hear guns outside.
Oscar Grant: You know what, baby? Those are just firecrackers. You'll be safe inside, with your cousin.
Tatiana: But what about you Daddy?
Oscar Grant: Me? Baby, I'll be fine.

タティアナ:やだー!行かないで。怖いよ
オスカー:何が怖いの? 
タティアナ:おそとで銃の音が聞こえる
オスカー:いいかい?あれは花火の音だ。おうちの中なら安全だよ。いとこと一緒にいればいい
タティアナ:じゃあ、パパはどうなの? 
オスカー:パパかい?パパは大丈夫だよ。

注目の英語表現

この会話の中で「what」を使った表現が3度出てきます。

1)Scared of what?

「scared of ~」は「~を怖がる、~が怖い」でbe動詞の後ろに来ます。たとえば、「私は蛇が怖いんです」なら「I am scared of snakes」ですが、口語で尋ねる時「蛇が怖い?」=「Scared of snakes?」と略されることがよくあるのです。

「Scared of what?」も正しい文章は、本来「What are you scared of?」(あなたは何を怖がっているの?)となります。

2)You know what, baby?

小さな娘さんに「Baby(愛しい子)」と呼び掛けている優しいお父さんの言葉ですね。

「You know what?」は、直訳すると「何だか知ってる?」ですが、これは何か大事なことを伝える前置きによく使う「いいかい?あのね」や「ねえ、知ってる?」という「今から何なのか説明するから聞いてね」という呼びかけの慣用表現です。

3)what about you Daddy?

「あなたはどうなの?」と尋ねる時の慣用表現です。

「おうちの中は安全だよ」といったお父さんに対し、「(じゃ、おそとに行っちゃう)パパはどうなの?」というタティアナちゃんの疑問です。

タティアナちゃんとのこのやり取りが、オスカーの運命を知る者にはとても切ないですね。

学習単語

scared=(形容詞)怖い
gun=(名詞)拳銃
outside=(副詞)外で、屋外で
firecracker=(名詞)爆竹
safe=(形容詞)安全な
inside=(副詞)内側で、屋内で
cousin=(名詞)いとこ
fine=(形容詞)良い、快適な

鑑賞レベル

英語難易度★★★★☆
言語・暴力・性★★★★★
おすすめ度★★★★☆

下の映像は、実際に事件現場に居合わせた目撃者が撮影した映像があり、映画のシーンがいかに真実に忠実に再現されているかがわかります。

オスカーを撃った警官は解雇されましたが、罪は業務上過失致死で禁固11か月だったそうです。

事件が起こった鉄道会社BARTは、警備員のオスカーに対する初動対応について非難されていたが、この映画が公開されるとき、映画の宣伝ポスターをフルートベール駅構内に張り出し物議をかもしたそうです。BART側は誠意であるとコメントしたそうです。


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