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映画で英語学習「グローリー/明日への行進」~BLMを考えるシリーズ③

Black Lives Matterの運動に関し、参考になる映画をご紹介しています。

1965年にアラバマ州セルマで起こった「血の日曜日事件」を題材とした史実に基づく映画です。

グローリー/明日への行進

この映画は、「I have a dream」の演説で有名な公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師を中心に、非暴力を貫いて黒人の権利を主張した人々の闘いを描く実話です。
非暴力という信念と、それゆえに人々に容赦なく降りかかる暴力による多大な犠牲。その狭間の苦悩を通し、黒人差別問題の根深さと解決への道のりの険しさを描いています。
キング牧師の演説には著作権あり、女流監督エイヴァ・マリー・デュヴァーネイと脚本のポール・ウェブが、苦心して本物のスピリットが伝わる演説のセリフを練り上げたそうです。

本作の主題歌「Glory」は、アカデミー主題歌賞をはじめ多くの賞を受賞しました。「ラ・ラ・ランド」に出演したシンガーのジョン・レジェンドの美しい歌声に加え、本作で重要な役どころを演じるラッパーのコモンが、ストーリーをラップで表現。音楽と映像が見事に調和して心を打たれます。

作品デー

原題:Selma(2014)
監督:エイヴァ・マリー・デュヴァーネイ
脚本:ポール・ウェブ
キャスト
  キング牧師:デヴィッド・オイェロウォ
  コレッタ・キング:カルメン・イジョゴ
  ジェイムズ・ベベル:コモン
  ジョンソン大統領:トム・ウィルキンソン
  ジョージ・ウォレス:ティム・ロス
  アニー・リー・クーパー:オプラ・ウィンフリー

あらすじ

1965年当時、黒人が有権者登録し投票を行うことは暴力や脅迫で妨害されていました。キング牧師は、この状況に抗議するため、1965年3月7日の日曜日に、アラバマ州の州都モンゴメリーまでの行進を呼びかけます。あくまでも非暴力で行進する人々に対し、州兵や保安官が容赦ない暴力で阻止に入ります。

無抵抗のデモ隊は、激しい対抗に進むことができず、セルマの街まで追い戻されてしまいますが・・・

心に残るセリフ

Martin Luther King Jr.: [somberly yet passionately speaking to church congregation at a funeral] Who murdered Jimmie Lee Jackson? Every white lawman who abuses the law to terrorize. Every white politician who feeds on prejudice and hatred. Every white preacher who preaches the Bible and stays silent before his white congregation. Who murdered Jimmie Lee Jackson? Every Negro man and woman who stands by without joining this fight as their brothers and sisters are brutalized, humiliated, and ripped from this Earth.
Imdb

キング牧師:ジミー・リー・ジャクソンを殺したのは誰なのか?法律を悪用し脅迫する白人の法律家たちだろうか。偏見と憎しみを養う白人の政治家たちだろうか。聖書を説きながらも白人のいる教会で沈黙する白人の牧師たちだろうか。ジミー・リー・ジャクソンを殺したのは誰か?自分たちのブラザーやシスターが傷めつけられ、辱められ、この地上から引き剥がされている時に、闘いに名乗りを上げずただ傍観している黒人の我々ではないのか。

注目の英語表現

このセリフは、キング牧師の演説の特徴である「人の心をつかむ高度なテクニック」を見事にとらえています。

まず、Who murdered Jimmie Lee Jackson?(誰がジャクソンを殺したのか?)と問いかけます。

そして、その問いに対する答えを、仮定として三つリストにして提示します。

Every white lawman who abuses the law to terrorize.
Every white politician who feeds on prejudice and hatred.
Every white preacher who preaches the Bible and stays silent before his white congregation.

白人の法律家なのか、白人の政治家なのか、白人の牧師なのか?

その後、もう一度最初の問いであるWho murdered Jimmie Lee Jackson?(誰がジャクソンを殺したのか?)と問いかけます。

そして、最後にトドメを刺します。

「いいや、そうじゃない」というトーンを含め、先に提示した三つの仮定と同じ文の形を用いて「我々黒人なんだ」と主張するわけです。

Every Negro man and woman who stands by without joining this fight as their brothers and sisters are brutalized, humiliated, and ripped from this Earth.

この説教を聴いている人は、話の中身に思いを馳せ、考えを巡らせて、最後にハッと気づかされるわけです。

普段の会話で、相手を説得したいときに使える超絶テクニックですね。

学習単語

murder=(動詞)殺害する
lawman=(名詞)法律家、弁護士
abuse=(他動詞)痛めつける、(名詞)虐待
terrorize=(他動詞)~を怯えさせる
politician=(名詞)法律家
feed=(他動詞)~に食事(餌)を与える
prejudice=(名詞)偏見
hatred=(名詞)憎しみ
preacher=(名詞)説教師
preach=(動詞)説教する
congregation=(名詞)会衆
stands by=(自動詞)待機する
without=(前置詞)~なしで
brutalize=(他動詞)~に残忍な仕打ちをする
humiliate=(他動詞)~を辱める、~に屈辱を与える
rip=(他動詞)~を破る、引き剥がす

鑑賞データ

英語難易度★★★★☆
言語・暴力・性★★★★★
おすすめ度★★★★★

非常に痛ましいシーンも出てきます。もちろん創作映画ですので、すべてが真実の通りではないのかもしれませんが、こういった事件は実際に起こった史実としてしっかりと観て、そして今こそ考えてみたいと思える映画です。

映画を使った英語学習の仕方については、以下の記事で詳しく解説しています。


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