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スザンヌ・ベガの「Luka」は、悲しい子供の叫びだった。【洋楽の歌詞解説】

スザンヌ・ベガの「ルカ」という曲を聞いたのはもうずいぶん前です。

その頃、まだ英語があまり聴き取れないでいた私には、この曲の歌詞の意味はよく分かっていませんでした。

My name is Luka.

という超初歩的な英語で歌が始まるので、わかりやすい歌だなという印象でしたが、歌詞の内容は理解できていませんでした。

ルカってかわいい名前だなと思い、ポップで軽いメロディも手伝って、単なる無邪気な男の子の姿を描いた歌だと思っていただけだったのです。今、改めて歌詞を見てみると、胸がつぶれそうに傷みます。

真っ白でまっさら。そんな無垢の心で生まれてくる子供たち。
キリンとかゾウとか、牛とか馬とか、四つ足の動物さんは生まれたら数分ですぐに立ち上がり、目が見えなくてもお母さんのおっぱいを探り当てて「生き」始めます。

人間の子供はというと、そうはいきませんね。動物界で最も手のかかる種かもしれません。一人前になるのに20年近くかかるんですものね。まあ20年というのは、人間社会の中での経済的な自立なども含めた数字ですので、実際には、立って歩いて食べ物を調達して排泄して身の回りをキレイに整える……という、基本的な衣食住が自分でTake careできるようになる年齢としては、小学校高学年か中学生くらいからでしょうか。なので少なくとも10年くらいでしょう。

赤ん坊から幼児期は、何もできなくて当たり前、泣いて要求して、要求して駄々をこねる。それで当たり前。そして、口から取り入れる栄養と同じくらい、心も栄養を欲しているんだと思います。抱きしめられたらどれだけ安心できるか。褒められたらどれだけ嬉しいか。守ってくれるお父さんお母さんと一緒に楽しいことができたらどれだけ心が躍動するか。

抱きしめてほしい年齢の子供が、何日も放置されて命を落としたり、お父さんやお母さんに守っても欲しい年齢の子供が、その両親から鬼の形相で痛いこと怖いことをされる。そんな時の小さな心はどれだけつらい思いで、悲しく、切ないのか。本来そんな概念を知る由もないはずの「絶望」という感覚を知ってしまうのかと思うと、本当に胸が締め付けられます。「大丈夫だよ」って抱きしめてあげる人がいれば、どれだけ小さな心が救われることか。

そんな子供の叫びを淡々とした「普通」の語り口で歌っているのが、スザンヌ・ベガさんの「Luka」です。

ルカ少年が、同じアパートに暮らす「あなた」に挨拶をする。彼は、助けをあなたに求めたいんだけど、言い出せない。

そんな歌詞を翻訳してみました。

My name is Luka
I live on the second floor
I live upstairs from you
Yes I think you’ve seen me before

ボクの名前はルカ
2階に住んでる
ちょうどキミの上の部屋だよ
そう、ボクを見かけたことあると思う

If you hear something late at night
Some kind of trouble. some kind of fight
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was

もしも夜遅くに何か物音が聞こえたら
何か揉め事とか、喧嘩みたいな音だとしても
頼むから、あれ何だったの?なんて訊かないでね
頼むから、あれ何だったの?なんて訊かないでね
頼むから、あれ何だったの?なんて訊かないでね

I think it’s because I’m clumsy
I try not to talk too loud
Maybe it’s because I’m crazy
I try not to act too proud

ボクがぶきっちょだからだと思うんだ
あんまり大きな声ではしゃべらないようにしてる
ボクの頭が変だからだと思うんだ
あんまり偉そうなふりはしないようにしてる

They only hit until you cry
After that you don’t ask why
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore

あの人たちは泣くまでぶつ。それだけ
終わっても、何でなの?なんて訊かない
口論しても無駄だからもういいんだ
口論しても無駄だからもういいんだ
口論しても無駄だからもういいんだ

Yes I think I’m okay
I walked into the door again
Well, if you ask that’s what I’ll say
And it’s not your business anyway

うん、ボクは大丈夫だよ
またあの部屋へ戻ってってさ
もしキミが訊いたら、ボクはそう答える
それに、そもそもキミには関係ないことだもの

I guess I’d like to be alone
With nothing broken, nothing thrown
Just don’t ask me how I am
Just don’t ask me how I am
Just don’t ask me how I am

そだね、一人になれたらいいなと思うよ
何か壊されたり、投げ付けられたりしないもの
頼むから、元気なの?なんて訊かないでね
頼むから、元気なの?なんて訊かないでね
頼むから、元気なの?なんて訊かないでね

My name is Luka
I live on the second floor
I live upstairs from you
Yes I think you’ve seen me before

ボクの名前はルカ
2階に住んでる
ちょうどキミの上の部屋だよ
そう、ボクを見かけたことあると思う

If you hear something late at night
Some kind of trouble. some kind of fight
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was

もしも夜遅くに何か物音が聞こえたら
何か揉め事とか、喧嘩みたいな音だとしても
頼むから、あれ何だったの?なんて訊かないでね
頼むから、あれ何だったの?なんて訊かないでね
頼むから、あれ何だったの?なんて訊かないでね

周りに、このLukaのように小さなS.O.S.を発している子供はいないでしょうか。こんな気持ちの子供の声を周りの大人がしっかり聞き取ってあげないといけない。

そんなメッセージが込められた歌です。

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