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拾遺家紋怪異譚「紋霊記」

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家紋には人の心が宿るという。 紋師と呼ばれる男と謎の少女と謎の猫がとりまく家紋と怪異の物語。 「紋霊記(もんりょうき)」 家紋をテーマとした小説。オムニバスでおくる家紋のお話。
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2020年8月の記事一覧

『紋霊記』序章「私はナニモノなのだろう」

私が私として私を認識したのはいつのことだったのだろう。 無限にも思えるほどの過去にも思えるし、つい先ほどだったような気もする。はたまた未来の出来事を見ているだけなのかもしれない。胡蝶の夢だったか。蝶が見ている夢かもしれない。何処かで誰かが私を作り出しているだけなのかもしれない。ではそれを作り出している存在の意識とはなんだろうか。連鎖。結び。繋がり。元はなんだろうか。元の中には何があるのだろうか。 そもそも私という存在は何なのだろう。どんな存在なのだろう。この世界にとって私は何

『紋霊記』その肆「宿る心」no.04

曰わく。 日本には八百万の神々がいるという。 八とは八方向の方角を示し、万とは全てを示す言葉でもある。つまり全ての方向、あらゆるもの全てに神々が宿っているのだと日本では考えられてきた。 神々にはそれぞれの特性がある。例えば川、山、風、火、地などなど様々な自然現象は人が抗えぬモノであり、説明出来ないものであった。人々はその説明、辻褄を合わせるために神を作り上げた。擬人化した。 例えば付喪神(九十九神)という考え方があるが、これは古びた道具にも魂が宿るというもの。 『百鬼夜行絵巻