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Z Bull ゼット・ブル

近年、これといったホラー・コメディがないとお嘆きの貴兄に自信をもってお勧めする快作。毎晩このレベルのB級映画を見てから寝ることができれば快適なのに……

主役のブレントン・スウェイツがイケメンすぎるのが唯一の欠点かも。大スタアになるには顔が小さくて美形すぎるだろう。

本作で彼が演じるのは、やる気皆無のダメ社員デズモンド。巨大兵器会社の若手のくせに遅刻の常習犯で、リストラ候補になっている。ある日、例によって遅れて出社すると、オフィスの雰囲気がおかしい。いたるところ死体だらけだ(早く気づけ!)

会社から配布された精力ドリンク剤「ゾルト」を飲んだ社員全員が発狂し、殺人鬼と化していた。このドリンクは戦場の兵士を無謀な闘いに駆り立てるための興奮剤で、経理部のデズモンドが必要な薬品を調達するのをさぼったため、開発部が適当な薬物をまぜて作ってしまった欠陥品だった。

開発部、宣伝部、人事部の社畜たちがこれまで我慢してきた積年の恨みをお互いにたいして爆発させ、殺し合う。経理部のデズモンドたちが彼らの間をすり抜けて、この殺人ビルからの脱出を図るというストーリーだ。兵器会社のために武器が腐るほどあり、壮絶なバトルが展開される。

飲まずに済んだのは数人だけ。主役のデズモンド、半分だけ飲んで何とか正気を保っているヒロイン役サマンサ、ラマダン中のイスラム教徒のムラト、クビを宣告され、浮気相手とのバイアグラ代の捻出に苦慮している初老のレントウォース。

この落ちこぼれ4人組が、やる気満々、というか殺る気満々の社畜どもを相手に回して闘う。老人のレントウォースは絶望のあまり自らゾルトを飲んでしまい脱落。ビルのてっぺんの社長室を血の海に沈めたあと、最後は地下の兵器庫で、ロボット兵器を操る狂気の上司ナスバウムとデズモンドの決闘である。

この手のアメリカのコメディは大好物だ。リミッターが振り切れ、世の道徳観念を踏み躙ってみせる。アメリカ社会は異常に抑圧が強いので、それを笑い飛ばそうとすると徹底してアモラルな作品ができあがる。このエネルギーの噴出がUSAというものだ。日本の社畜の諸君にも、ぜひ視聴を勧めたい。



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