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聖なる森


 熊本県阿蘇郡産山村「山吹水源」には、奥深い原生林の谷間から湧き出た水を堰き止めて出来た池がある。広さはテニスコート一面ほど。水深およそ50~60㎝。
池の底からは毎分30トンもの豊かな水量がこんこんと湧き出ている。
薄暗い森とは対照的に水は限りなく透明で美しくキラキラ光輝く。

ここを訪ねるのは一昨年前の紅葉シーズン以来のこと。水面に映る周囲の紅葉の美しさに魅せられ、また来たいと思っていた。
周辺の里山では桜が満開だったが、この森では樹々の新芽が僅かに出始めたばかり。新緑に覆われる季節はもう少し先になるだろう。それでも池には小魚が泳ぎ回り、カエルも鳴き、池に生える草も青々と伸び始めていた。
新たに芽吹いた草の葉も、苔も、底に溜まった枯葉も、ここにあるものはすべてが瑞々しく見える。

この水は、近くの久住連山に降った雨が、降り積もった火山噴出物の固まっていない地層に浸み込み、固い地層の上を流れ、数か月から数年かかって磨き上げられて湧き出たもの。水温は年間を通して約13~14℃。ph7。泉から湧き出る水を手ですくって飲んでみると、確かに沢のような冷たい水ではなく、柔らかで、飲みやすい。

この水の流れはやがて産山川となり、田畑を潤し、いろいろな川と合流しながら大分県へと流れ、一級河川の大野川となる。水源から下流域2㎞ではカヤ、イロハモミジ、コナラなど樹齢100年を超えるような大木や山野草が生息。また大木には直径20~30㎝もある藤がからみ、5月にはその美しい花を咲かせるとのこと。

こうしたあるがままの自然環境が存続しているのは、地元の人々が長年にわたって、この地の神を祀り、命の源となる水に感謝し、環境を保護し、守り続けてきたからだ。

言うまでもなく水は人間のみならず、すべての動植物の命を育む源。
一滴の水は集まって川となり、命の営みを支えながら、海を目指す。
海はやがて雲となり、雨となる。

泉は自然界を創造する生命エネルギーが永劫に流転する光景そのものだ。
この地の人々のように、祈りを捧げるべきは、本来このような「聖なる場所」ではないかと思う。




 熊本県の名水百選に選ばれている「山吹水源」は、毎分30トンもの水が湧き出ている原生林に囲まれた静かな水源です。透き通った水面には木々の緑が映り、その美しさと鳥の声や風の音を聞きながら過ごす時間に心が癒されます。

熊本県公式観光サイト



























































































2021年11月に撮影した山吹水源はこちら




Keith Jarrett - Encore From Tokyo
Live album - Sun Bear Concerts (1976)


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