マガジンのカバー画像

花や虫たち

80
花の写真 時々花と虫たち
運営しているクリエイター

#北九州

黄昏の園

西の空に色鮮やかな夕焼けが広がるとき、その場の風景もみるみるうちに紅色の光のヴェールに包まれることがある。それまで目にしていた光景とは別世界のようで、突然のギャップに驚く。  ライトアップ直前の、黄昏のバラ園にもそれがやってきた。目の前に咲いていた花が急に色めいて、ふわっと浮かんで怪しく揺れて、一瞬のうちに闇の中へと消えていった。 日没と日の出の直前直後の「薄明」は、「黄昏」や「薄暮」「トワイライト」「逢魔時」など多数の呼称があり、また撮影用語で「マジックア

曼珠沙華の花咲く時

季節は秋彼岸の7日間を迎え、外の景色はすっかり秋の光に輝いている。 お彼岸と言えば「彼岸花」。気温20~25℃で開花時期を迎える。日陰は開花が早く、日当たりのいい所は遅くなるのはそのためだ。 先日の雨の朝、早速市内の植物園に出かけてみた。 最近は異常気象のために、桜や薔薇の開花時期が随分と早まっているが、彼岸花は今年も正確にこの時期に合わせて開花した。 どうやら他の種とは異なった秘密がありそうだ。 日本では別名として「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」があまりにも有名。

春の足音

 早いもので、来週はもう2月。 北九州では数日前から梅の花がちらほらと咲き始めた。 今週は雪や、雪混じりの雨が降る日が続き、体感的にはまだまだ冬の真最中。 春の訪れはまだまだ先かと思いきや、梅の木は早くも季節の移ろいを敏感に嗅ぎ分け、春を先取りするかのように開花した。 植物たちは開花時期を日照時間と気温の変化に応じて決めているそうだ。 そのセンサーはどのような仕組みなのか知らないが、枝か幹の中に、あるいは花芽の中にあるのだろう。 解体しても目で見ることなどできない、あまりにも

冬薔薇

 年の瀬も迫り、今年も残すところあとわずか。久しぶりにいい天気だったので、春と秋のフェアに幾度となく出かけた地元のばら園に冬薔薇を見に行った。フェア開催中はあれほど混雑していた広い園内も、さすがにこの時期は他に誰一人として見物客はいない。 先週は雪や雨の日が多かったせいなのか、花びらの痛んでいるものが多い。それでも寒さの中で予想外にたくさん咲いていたのには驚いた。蕾もまだまだ多い。寒いからといって休まずに、開花に向けて成長し続けるのが薔薇の逞しさなのだろう。 園内では管理

10月の光と影

 すっかり秋の気配に包まれた今日この頃、紅葉がぼちぼち見え始めるようになった。最近の朝晩の冷え込みと日中の暖かさが色づきを促進させることだろう。気温の寒暖差が大きいと紅葉の色が濃くなるようだ。 最近の北九州ではこの3つの条件が重なっているように感じる。 となると美しい紅葉が期待できるかもしれない。 10月の光は夏と冬の中間色。 市内でも白い光に包まれた光景があちらこちらで見られた。 紅葉前のほんのりとまだ暖かく、麗らかな光と影の世界だ。

秋さうび

(文1600字 写真50枚)  いつも素敵な俳句を投稿されているラベンダーさん。先日の句に使われた10月の季語「秋さうび(そうび)」とは「秋薔薇」の音読みのこと。俳句や短歌を嗜むということがない愚生にとっては、noteを通じて出会った方々の作品が日本語の美しさを教えてくれる貴重な機会となっている。 元の写真が別物に、曖昧なものから輪郭のあるものへ、無意識的なものから意識的なものへと変容した。日本語の美しい響きを詠まれる方の深い感性にはいつも驚かされる。日本人の美意識の守り

秋の光に舞う蝶と花

 秋の白い光が降り注ぎ始めた北九州に、渡り蝶アサギマダラが飛来した。 休むことなくフジバカマの上をふわふわと浮かぶように舞い、蜜を吸っては飛び、吸っては飛ぶを繰り返している。人が近づいてもそこから離れようとはしない。これから海を越えて南へと渡る準備をしているのだろう。 か弱そうに見える蝶の中のいったいどこに海を越えて数千キロも飛び続ける強靭なエネルギーが秘められているのか。そしてまたこの小さなフジバカマの花を空から見つけ出すことができるのは、研ぎ澄まされた嗅覚と視覚を持つか

たおやかに生きる

 北九州市の中央公園「花の丘」へ通じる小道や階段には、先日の台風の爪痕生々しく木の葉や枝が散乱し、花壇の脇には痛んだ大量の草花が刈り取られ山積みとなっていた。「花の丘」は小高い丘の頂にあり、周囲は樹木に囲まれてはいるものの、激しい暴風雨だったことをそれらは物語っている。 ところが花壇は決して全滅したわけではなく、たくさんの花がしっかりと咲き、そこにいつもより多い蝶や蜂たちが蜜を求めて元気に飛び回っていた。あの嵐の中、虫たちは暴風雨に飛ばされずに、どこでどうやって耐え忍んでい

季節はめぐる

8月も終わりに近づき、北九州も朝晩の大気に秋の香りを感じるようになった。 見上げれば空高く白雲が流れていく。 柔らかな日差し。 木立を抜ける爽やかな風。 透明な虫の音。 花園に咲き乱れていた夏の派手な花たちはいつの間にか消え、 秋らしい落ち着いた花々に取って代わった。 去りゆく季節の後ろ姿は急ぎ足。 やがて訪れる季節の気配はいつも忍び足だ。 北九州市 中央公園花の丘 8月下旬      追記:我が家の花壇から

鎮魂花

Iiro Rantala Tears for Esbjörn

夏盛りされど秋桜

 北九州市小倉北区の県営中央公園「花の丘」には週に一度は必ず出かけるようにしている。すると前の週にはまだなかった花がいつの間にか咲いている。開花直前の苗を植えたものではなく、ゆっくりと時間をかけてボランティアの方たちが丹念に育成してきた花たちだ。 7月下旬から8月に入って、花の種類もだいぶ様変わりしてきた。 たくさん咲き始めたキバナコスモスの周りを、青い蜂ブルービーが元気に飛び回っている。ホオズキやケイトウなど、子供の頃から見てきた実や花があると妙に懐かしい。 日差しは相変わ

+23

梅雨明け

心の薔薇

(文3000字 写真60枚)2022年5月投稿  北九州市立響灘緑地グリーンパークで、「春のバラフェア」が開催されている。320種2,500株という数は、全国の有名なバラ園と比べると少ない方だろう。しかしこのバラ園を管理するスタッフの方々の気合いは凄い。朝9時の開園時には園内の手入れがすべて終わり準備万端。次から次へと目の前に現れる個性豊かな美しい薔薇に見惚れて、時間があっという間に過ぎてゆく。 昔東京郊外に住んでいた時、熱心に薔薇を栽培する家が近所にあった。個人宅として

+29

咲き始めた花菖蒲