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空間と施主


『施主を読む』


計画の始まりにおいて、施主自身が自分の考えていることを完全に理解し、そしてまた自身の欲求に全て立ち向かえている、とは限らない場合は多い。

それらを繋ぎ合わせ、ピントのあった実像を導き出すためには、施主との深い対話が不可欠。具体的には潜在意識にアプローチする ” カウンセリング ” に近い読解力が必要になる。

施主が持っているイメージや欲望は断片的で、感傷的で、多くは矛盾していて不鮮明である。でも、それは当然のスタート地点。そのピースを組み合わせて目的に向かう ” かたちの解像度 ” を上げていく。それについて伴走者になるのが設計者の役割だ。

スタートからゴールに向かう流れが「設計」
ゴールから今立っている地点に戻る作業が「設計思考」

施主との共同作業で目指すゴール位置を定め、そこから今立つ地点まで逆算してくる作業、そして今立つ場所から計画を積み上げてゴールに向かう「設計」という作業。その行ったり来たりの思考のゲーム。いい設計者というものがあるとしたら、それは今立っている地点の位置が明瞭で、前にも進みやすく、後ろにも戻りやすい、そんな共同作業ができる相手のことだと思う。

そこを目指して自分の立ち位置もしっかり知っておきたい。


どの道を通っていくのが一番最適なルートか、地図を読むのと同様に、施主を読まなければならない。最適なルートは誰かから与えられるものではなく、対話の中から自分で見つけ出していくしかないのだから。

これって理系?
いや、文系…
むしろ国語力。

「設計」はもしかすると、未来ではAIでもできるようになるかもしれない。
でも「設計思考」は人でしかできない。
と言われるような ” 価値を生み落とせる仕事 ” として生き続けていって欲しい。

『 どんな車に乗っているか 』よりも、
『 この人とだったら一緒でもいいか 』、
その選択の方が、旅のはじまりとしては重要なような気がする。

『まあ、"あなたと"ならいいか。』

そう言ってもらえる人でありたい。

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