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パンデミックによる外出制限は私たちの働き方をどう変えたか

本記事は北欧のデザインメディア DeMagSign の翻訳記事です。
元記事はこちら:Pablo Stanley: Quarantine Is Making Us Reconsider The Way We Work

Pablo Stanley氏はInvisionのリードデザイナー(*記事執筆当時。現在はBlush Designの共同創業者)であり、ヘルスケアをよりシンプルにするために設立されたテクノロジーベースのヘルスケアサービス業者であるCarbon Healthの共同創業者でもあります。彼をデザイナーとしてユニークにしているのは、滑稽なマンガとカラフルなイラスト、それにSketch Togetherと呼ばれるYouTubeのデザインチュートリアルです。Pabloはまた、Latinx Who Designの創業者としてスペイン語で発信するデザインについてのポッドキャストを配信している、ラテンアメリカ系デザイナーにとっての生き字引のような存在です。

Invisionのチームはさまざまな国と地域に広がっているので、Pabloは長い間在宅勤務をしてきました。私たちは(ヴァーチャルではありますが)彼と会い、外出制限をきっかけに人々が自分たちの習慣をどのように見直したのか、COVID-19によるパンデミックを受けて、デザイナーが自分たちのスキルをどのように社会のために役立てるようになったのかについて話しました。デザイナーは便利なプロダクトを作ることができるだけではなく、その優れたコミュニケーションスキルを使って人々を悪いニュースで溢れた世の中から助け出すこともできるからです。

Pablo Stanley氏

――COVID-19によって、人々の仕事の仕方はどう変わったと思いますか?

いま起こっていることのすべてに対処するためには、私たちは手元にあるツールを使って、コラボレーションや仕事の分担、フィードバックの受け方といった点でもう少しクリエイティブになる必要があります。ありがたいことに私たちにはインターネットと、デジタルで人と繋がるためのたくさんの便利なアプリケーションがあります。チームでやっているホワイトボードを使った話し合いや会議は、Slackで行うことになります。話しかけたい相手が近くにいないということになれば、意識してコミュニケーションを取り、さまざまなチャネルをシェアし、すべてをメモしようという気分になります。

Pabloのイラスト(出典:Dribbble

Invisionではリモートワークを行っているので、私たちにとってはあまり変化はありませんでした。元々メンバーが各地に散らばっているからです。私たちは長い間、Invision Freehandというツールを使っています。このツールを使えば、ホワイトボードやワイヤーフレームでの話し合いに飛び入り参加したり、ブレインストーミングしたりすることも簡単にできますし、プランニングやロードマップの策定すらできます。私たちがこれらをFreehandで行うのは、誰もがここに参加できるからです。 あたかもオフィスで誰もが同じマーカーやツールを持って、話し合いに飛び入りしたり、付箋を足したりするのと同じように、Freehandでは誰かが描いているものを見ることができるのです。ツールに優劣はありません。なんの変哲もない筆記用具です。こうした道具を使わざるを得ないことは、ある意味良いことだと思います。いまその良さを知っておけば、状況が正常化したあとでも大切にできるでしょう。

Pablo Stanleyのイラスト(出典:Dribbble

実際に会議室にいてホワイトボードを使っていたら、その写真を撮ったり書類に落としたりする必要があるかもしれません。しかしデジタルであれば、そのような記録はすでにあるので、いつでも振り返ることができます。さらに、記録は常に更新されます。リアルの環境でオフィスを他の人と一緒に使っている時の習慣を少なからず真似られるようなツールを持てることはいつでも素晴らしいことだと思います。

――この状況の中で、あなたの生産性はどのように変化しましたか?

仕事の種類にもよりますが、人々は以前よりも仕事に集中できるようになったと言えますが、これは諸刃の剣だと思います。オフィスで気になってしまうような雑音が一切無い家にいることで、できるようになることもあるでしょう。一方で、突然の閃きが失われるようにも思えます。たとえば、あなたは誰かがSlackを立ち上げていることを期待してメッセージを送るでしょう。もちろんそれも結構だと思いますが、なんらかの問題を解決するために辺りを見回して同僚に話しかけ、即座に答えを得ると言うようなやり方は無くなってしまっています。一方で、自分には関係のない会話を聞くことになるという意味では集中を乱すものになります。これはSlackでも起こり得ますが、少し様子が違います。あなたは、即座に答えが得られないという状態に慣れる必要があるでしょう。

(出典:Uxdesign.cc

私たちはテクノロジーを活用したコミュニケーションに慣れていると思いますので、仕事の場面でのコミュニケーションにも慣れるだけで良いでしょう。

生産性に関して、在宅勤務において起こりがちなことの1つは、いかに集中を保つかと言う問題です。家には気を散らすものが多くありますから、集中するのが困難だという人もいるかもしれません。私は一人暮らしなので簡単に仕事に集中できますが、家に子どもがいたり、ルームメイトと住んでいたりして、クリエイティブな作業をするのに最適な場所ではないかもしれません。私はたまたま理想的な環境を持っているので、「これは簡単なことだ」と言えているだけです。

Pablo Stanleyのイラスト(出典:Dribbble

――この厄介なパンデミックの中で、デザイナーはどんな役割を果たすべきだと思いますか? そのスキルと知識を使って、社会のためにどんなことができるでしょうか?

デザイナーの強みはコミュニケーションだと思っています。私たちは、複雑でとっつきにくいメッセージを分かりやすく、親しみやすい形で伝えることができます。デザイナーは、重要なことをうまく伝えることによって社会に貢献できるのです。たとえば、COVID-19に伴う規制を十分に真剣に捉えていない人もいます。これに対してデザイナーは、そのような人々が事態の深刻さを理解できるようにするためにはどのようなメッセージの伝え方をするべきか、他のデザイナーと話し合うことができます。

(出典:Pablo Stanley Art

――あなた個人としてはなにか考えていますか? いま思いついているマンガのアイデアはなにかあるでしょうか。

たくさんアイデアを書きためています。自宅に隔離されているときのメンタルケアについてのものもあれば、在宅勤務をより効率的にするための方法についてのものもあります。他の人たちも、ビジュアルやマンガ、ポスターやWebサイトを使って素晴らしいコンテンツをシェアしています。私の友人の1人はサービス業界で働く人のためのWebサイトを作っています。サービス業界にはいま、仕事が無い人が数多くいますが、彼はそのような人たちが料理や食材を顧客に届けることができるようなWebサイトを作ってサポートしているのです。彼は自分が持つデザインスキルを活かしてメッセージを届けており、私もいくつかのイラストを描いてコラボレーションしています。なにか新しいツールやスキルを学ぶ機会、試してみる機会が、時には社会にとって有意義で影響力のある結果を生み出すとは、信じられないような驚きです。

――あなたはかつて、「デザイナーは常に仕事を見つけて、自らを忙しくしておく必要がある」と言っていましたが、これはまさにいまの状況に当てはまるのではないかと思います。デザイナーは現在の状況にしっかり関わり、また適応していると思いますか?

多くの人が素早く適応して、他の人に役に立つであろう情報をシェアしているのを見てきました。私は、私たちの中には「クリエイティブの虫」がいると思っています。ただなにかを作っていればそれで充分という人もいるのです。そういう人にとっては、クリエイティブの虫の気が向くままに新たなことを学ぶための最高の時間です。別に、有意義でなくても影響力が無くても構いません。ただのスケッチや落書きでいいのです。結局のところ、あなたは自分のこと、自分のメンタルの健康を考えて、自分にとって意味があることをすればいいのですから。それから、自分のスキルや作品が誰かの助けになるだろうかと考えればいいのです。しかしそれも、必ず有意義なものでなければならないというわけではありません。なにかの落書きだっていいですし、実際に私はそういうことをすることもありますから。まったく関係のないモンスターでも、アイスクリームのコーンでも、なにを描いてもいいのです。そうすれば、あなたは暇することはありませんし、なんらかクリエイティブな活動をしていることになります。そして同時に、自分の手と目の連動を高めることにもなりますし、スキルを磨くことにもなります。自分の中にいる虫の気が向くままに、クリエイティブに動きましょう。

(出典:Pablo Stanley Art

そこから抜け出しても、他のものに気を取られても一向に構いません。スキルを磨けるのであればなお良いです。ですが、どうしてもそうしなければならないわけではないということは覚えておいてください。本を読んでも、Netflixをまとめてみても、ポッドキャストを聴いてもいいです。結局、自分の時間を自分のために使って、些細な仕事を済ますことで構いません。家で仕事をしていると、家もオフィスのようになってしまって、仕事とプライベートの境界が曖昧になることがよくあります。突然、コンピューターに括りつけられたかのように一日中働いてしまうようになります。

リモートで仕事をしていると、自問自答し始めることがあります。「同僚たちは、私がいま働いているということを知っているだろうか? 実際すごく働いているんだが……」すると、自分があまり日中に仕事が捗らずに、気づけば打合せばかりだったというような日には罪悪感を覚えるようになります。打合せの間に30分に時間があったとしても、その時間にはそもそも多くのことはできないでしょう。ですが、オフィスで普通に働いている時と比べて、1日の終わりに自分はなにもしなかったと思うようなことがあると、罪悪感を覚えてしまって、それが働き過ぎに繋がるのです。リラックスする時間が無い状態です。たまにリラックスする時間を見つけると、世の中に溢れる暗いニュースが目に入ってきます。ですから、なんでもない作業をする時間を作って良いのです。あとは程度の問題だけです。

Pablo Stanleyのイラスト(出典:Dribbble

私たちは習慣の生きものです。そして新しい習慣を身に付けることは良いことです。たとえば自分の通勤先に行くと、気の持ちようが変わります。そこに切り替えのポイントがあるのです。自分で習慣を作るのも良いです。たとえば、私は自分のポッドキャストを聴き終わるまで、遠回りして通勤するようにしていました。リモートで働き始めると、私はポッドキャストを聴かなくなっていることに気付きました。そこで私は、ベッドで仕事をするのではなくきちんとベッドを出て、仕事の前に散歩をしてコーヒーを淹れるようにしました。それから、きちんと服を着ることも。あなたはオフィスでなにを着ていますか? パジャマやスウェットを着てオフィスには行かないはずです。シャワーも浴びるでしょう。カレンダーで時間を管理すべきことは、食事です。食事は、ある種の人々にとっては社会的な活動でもあります。もしあなたが1人でいたら、お腹が空いたということを言う相手がいないからです。夕方の5時からの6時になって、なにも食べていなかったことに気がつくことさえあります。

Pablo Stanleyのイラスト(出典:Dribbble

Written by Giorgia Lombardo (Design Matters)
Translated brought to you by Flying Penguins Inc. 🐧

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