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取って作って捨てる直線的経済の不都合な事実

   アパレル・サプライチェーン研究会の資料によれば、バフル経済後の1990年のアパレル市場規模は15.3兆円でしたが、2018年には9.2兆円(2019年では9.1兆円)と約60%縮小しています。一方、アパレル製品の供給量は1990年20億枚から2018年39億枚と約50%増加しています。(矢野経済研究所) 

 世の中に物が溢れていると言われて久しいですが、数字から考察するとアパレルに関してもすでに供給多寡により、溢れていることがわかります。

   他の先進国を見てもここ数年でに生産量は最高レベルに達していますが、「有効活用」されているかは疑問視されています。WGSNの調査によれば米国の一般家庭において、10歳児は238個の玩具を持っているそうですが、そのうち毎日遊ぶ玩具はわずか12個で全体の5%だったとの結果が出ています。おそらく肌感ですが、アパレルに関しても、同じような傾向が見られるように思われます。

  グローバルファッションマーケティング会社のWGSNによれば、世界中では毎年、800億枚の服が購入されているとされ、これは10年前と比べても400%の増加となります。このうち50%が購入後半年以内に捨てられており、リサイクル率は1%であるようです。

  現在、「取って作って捨てる」直線型経済が世界的に拡大した結果、大量の廃棄物が発生し、環境に害を与えています。今後、技術革新により資源の「取り方」はある程度変わるかもしれませんが、アパレル業界の構造が循環型に変わり、また私たち生活者の意識も変わらなければ、自然環境への悪影響と資源の不足により、様々な形で危機として現れてくることは想像し難くないでしょう。

  1973年にイギリスの経済学者で人間中心の経済学を唱えたE.Fシューマッハの「スモール イズ ビューティフル」では「現代の重要な誤りは生産の問題は解決済みだという思い込みだ」という一文から「平和と永続性」「規模」「教育」「開発」「新たしい所有」等広範囲に書かれていますが、約50年後の現在においてもシューマッハが指摘する「誤り」を繰り返しているのではないかと感じています。