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デザインを武器にするITベンチャー、フラーの真髄に迫る

「デザインを経営の最重要手段にしています。」

アプリ分析支援事業と共創事業を手掛けるフラー株式会社(以下、フラー)は、「自身の一番の武器はデザインだ」と話しています。

任天堂と「あつ森」の愛称で親しまれている Nintendo Switch用ソフト「あつまれ どうぶつの森」のゲーム連携サービスの共同開発 を行ったり、自社サービス App Ape (アップ・エイプ) はアプリ分析ツールで国内No. 1*の知名度を誇っていたりと、急成長中のフラー。(*Fastask調べ)

フラーはなぜ大きく成長しているのか?

今回のdesigner’s story by Cocoda!では、フラー株式会社COO 山﨑さんにお話をうかがいしました。

(*役職やプロフィールは取材時点。現在は代表取締役社長。)

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執行役員COO 共創事業本部長
山﨑 将司 

執行役員COO 共創事業本部長。1988年生。新潟県出身。新潟県立新潟高校、千葉大学工学部デザイン学科卒業。卒業後は、富士通にてBtoBプロジェクトのUIデザイナーを担当し、 国際的なプロダクトデザイン賞であるiF DESIGN AWARDを受賞。2015年3月にフラーに参画し、2016年11月15日付で執行役員CDO(最高デザイン責任者 Chief Design Officer) 、2020年4月1日付で執行役員COO(最高執行責任者 Chief Operating Officer)に就任。ユメは世界のデザインに対する価値基準の底上げをすること。

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事業を伸ばす上で、デザインを一番に考える

ーー まず、フラーではどんな事業をされているのでしょうか?

フラーの事業は、大きく2つに分かれています。

1つ目が、「アプリ分析支援事業」です。

App Ape という、モバイルアプリの利用データやその分析をサービスとして提供しています。
企業向けに提供しており、どのアプリが・いつ・どのような属性のユーザーに・どのくらい使われているか、といったデータを見ることができます。

そしてもう一つが、スマホアプリやウェブサービスの開発を手掛ける「共創事業」です。こちらは、よく言われるような受託事業ではなく、クライアントの事業に対して、伸ばしたい方向性から一緒に検討し、アプリやウェブサービスが本当に必要なのか?というところから考えていきます。

また、「創って終わり」ということではなく、サービスの改善フェーズまで入り込んでいくところも大きな特徴かもしれません。


ーー データ分析や開発支援を事業の軸にされていると思うのですが、「デザインを経営の最重要手段に」とお話しされているのはどのような背景からなのでしょうか?

そうですね。フラーでは、コーポレートサイトでも、明確にデザインが重要であることを伝えています。

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フラーのコーポレートサイト

私たちは、普段多くのデータやアプリ、サービスを扱っています。そのデータの向こう側には多くのユーザーさんがいるため、アプリやサービスを使ってくださるユーザーさんとの接点も多いんです。

多くのデータやテクノロジーを扱う企業として確信しているのは、データにしてもテクノロジーにしても伝わり方がとても重要だということです。特に我々はアプリ分析など、少し難しい話を扱っているので、データの伝え方、伝わり方にはすごく繊細になる必要があります。

デザインには、そういった難しい話を解きほぐす力があると思っています。これは単純にわかりやすくすることが大事だという話ではなくて、根本的には人とデータ、テクノロジーを結び付けていくことだと思っています。

例えば、あるアプリのダッシュボードを私たちが提供していて、そのアプリが午後の時間帯に多く使われているアプリだとします。その時、ダッシュボードでは「午前が使われてないアプリです」と説明するのか「午後が使われているアプリです」とするのかで大きく伝わり方は変わってきます。

単純なわかりやすさの先に、「このデータから何を読み解けばいいのか?」「どんな施策をこれから打っていくのか」など、データやテクノロジーを受け取る人まできちんと考慮していく必要があるので、我々はデザインを最も重要視すべきだと考えているんです。



創るだけじゃだめ。花火大会後のゴミ拾いまでいく。

ーー フラーが考えるデザインの大事さがわかってきました。より具体的にデザインを武器に事業に取り組んでいる例はどんなものがありますか?

長岡花火の事例は、特にフラーの取り組み方や姿勢を象徴しているかもしれません。
私たちは新潟県長岡市で毎年行われる、日本三大花火大会の一つである長岡花火のアプリを手掛けているんですね。(アプリはこちら)

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フラーでは、企業のアプリ開発など法人向けのプロジェクトだけでなく、行政のプロジェクトも支援させていただくことが多いのですが、長岡花火のアプリ開発もその一つです。

イベント当日のスケジュールや、交通情報などを載せているアプリなんですが、2019年8月2日、3日には、App Store、Google Playのカテゴリ別ランキングで3年連続1位を獲得することができました。

一方で、他のプロジェクト同様、この長岡花火のアプリもただ開発するだけではもちろん終わりません。

花火大会当日は運営の建物に開発メンバー総出で入って、アプリへのリアルタイムな通知や、アクセス集中でアプリを落とさないための監視作業をしていました。

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アプリをつくることがゴールではなく、長岡花火の未来をつくっていくことをゴールにしているプロジェクトなので、「長岡花火の新しい楽しみ方がアプリでできるのではないか」という提案から、プロモーション動画の撮影、そして花火大会の後のゴミ拾いまで、とことん運営と一緒の目線で取り組みました。

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花火のあとは開発メンバーや事業部長でのゴミ拾い

そのほかにもお祭り当日、「混雑の影響でアプリがすごく重く感じる」という声が多かったので、オフラインでの利用も可能にしたりと、改善を繰り返しています。

そのおかげなのか、PR費用は全くかけず、10万ダウンロードにまで成長しました。

またお祭りの期間中、アプリ内で実施したアンケートに1万人ほどの人が回答してくれたんです。今回のプロジェクトは、長岡市の長岡花火財団と一緒に進めていたプロジェクトだったのですが、財団からは「アプリだけではなくイベント運営全体のノウハウもたまった」と、すごく嬉しい反応をいただけました。


新しい共創のかたちへ

ーー ありがとうございます。アプリ開発にとどまらない新しいパートナー事業の可能性を感じました。改めて、デザインを経営の最重要手段においたことで、社内外にどんな効果があったのでしょうか?

そうですね。メンバー一人ひとりの案件に対する当事者意識が高くなり、良いチームが維持できていると感じています。

長岡花火の後のゴミ拾いも強制しているわけではなく、メンバーが自ら率先して志望してくれています。今では、採用時に始めからゴミ拾いをしたいと話してくれる人さえいます。

ゴミ拾いのようなユーザー体験や調査はデザイン活動の一部だと考えていますが、経営の最重要手段にすることでデザインとすら思わずにメンバーが行ってくれるようになりました。意識せずにデザインが行われることは、組織としてデザインに取り組んでいる最上の形だと考えています。

メンバーそれぞれがユーザー体験や調査から取り組むことで、自分たちでつくるプロダクトに愛着を持てるようになります。愛着をもったプロダクトを通して顧客の事業すら愛せるようになる、そんな様子を見てくれる方々が、私たちのチームを気に入ってくださって次の案件につながることもあります。


経営の最重要手段として捉えたデザインは、メンバーそれぞれの意識を変え、顧客との一体感を生み出し、組織の標語にある「明日会社に行きたくなる」ようなチームに繋がり、最終的には組織の数字の結果となってついてきています。近年の大規模な成長は、デザインが支えていると確信しています。

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