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「DESIGN CAMP @奥大和 2016」開催レポート

2017年1月26日(木)~2月3日(金)、記念すべき第1回目となる「DESIGN CAMP @奥大和 2016」を開催しました。

「DESIGN CAMP @奥大和 (デザインキャンプ奥大和)とは?」
アジア各国で活躍するデザイナーと、奥大和地域を拠点に活動する、またはローカルに興味のある国内デザイナーが共同生活を通して地元事業者に寄り添い、様々なご縁をつなぐためのコミュニケーションデザインを制作・提案する奈良県主催のプログラムです。

「DESIGN CAMP @奥大和」WEBより

オフィスキャンプ東吉野」(奈良県東吉野村)を拠点にした、全9日間のレポートをお届けします。

参加デザイナー

今回は、インドネシアから3名のデザイナーと、奥大和地域在住の地元デザイナー3名、合計6名が参加しました。
それぞれのプロフィールは、後述するプレゼンテーションのブロックに記載しています。

Zinnia Nizar(Indonesia)
Wulan Pusponegoro(Indonesia)
Rege Indrastudianto(Indonesia)
坂本 大祐(Daisuke Sakamoto)
廣瀬 佑子(Yuko Hirose)
赤司 研介(Kensuke Akashi)

受け入れ事業者

奥大和地域にある「吉野醸造株式会社」、「株式会社テラス」、「健一自然農園」の食品関係3事業者が参加しました。

吉野醸造株式会社(奈良県吉野町)
株式会社テラス(奈良県宇陀市)
健一自然農園(奈良県山添村)


全9日間のプログラム

事業者研修から発表会&視察までを全9日間で

初日のオリエンテーションを終えると、翌日から「事業者研修/ホームステイ」がスタート。2〜4日目まで、デザイナーはそれぞれが担当する事業者のもとで過ごし、商品や会社、地域のことを深く理解しました。

その3日間の経験を踏まえて、5〜7日目でデザインを制作。
8日目にはその成果を事業者に向けてプレゼンテーションしました。


DAY2〜4:事業者研修&ホームステイ

美吉野醸造に滞在したデザイナーは、朝6時30分から蔵人さんとともに酒作りの作業に加えていただきました。

健一自然農園では、お茶の木の伐採と運搬などの外作業。
普段、打ち合わせとPC作業ばかりのデザイナーは慣れないながらも必死に身体を動かすことで、「全身で商品のことを理解できた気がする」と話していました。

DAY5〜7:デザインワーク

たっぷりと時間をかけてインプットを行ったあとは、オフィスキャンプ東吉野に滞在してデザイン制作を開始。

「日本国内でより多くの人に届けるコミュニケーションデザイン」、「日本からインドネシアに伝えるためのコミュニケーションデザイン」をテーマに、キャッチコピー、商品/企業/ブランド等のロゴマーク、商品パッケージデザイン、WEBサイト、パンフレットなど、事業者にとって最適だと思われる手段を選択して制作していきました。

このプロジェクトの特徴は、日本人デザイナーとインドネシア人デザイナーがペアとなって1つの提案を行うこと。

絵や写真などを見せ合いながら、どのような方向性で進めていくかをすりあわせ、スケジュールと役割分担を確認しつつ互いに制作を進めていきます。

中には最終日の朝4時まで作業をしていたデザイナーもおり、事業者の未来に想いを馳せながら、心を込めてデザイン制作に打ち込んでいました。

はじめは不安を感じていたデザイナーもいましたが、共同生活によって次第に距離が縮まり、言語の壁を超えてコミュニケーションをとっていたのが印象的でした。

DAY8:デザイン成果発表会

プロジェクト8日目には、奈良市内にあるレストラン「coto coto」にて事業者に向けた発表会を行いました。

製造現場での体験やホームステイなどを経て、家族や社員の一員のように、事業者のことを深く理解したうえでの愛のあるデザイン提案が繰り広げられました。

提案を受けた事業者からは「自分たちでは思いつかなかったような新しい観点からのデザイン提案に驚いた」、「ぜひこれを具体的に進めていきたい」という声も上がりました。
そして、中には感極まって涙する事業者も。

プログラムを通して特に印象的だったのは、言語も考え方も異なるインドネシアから来たデザイナーたちが、各事業者の強みや魅力をすんなりと理解していったこと。

事業者たちの説明の上手さや、ホスピタリティの高さ、そして日本人デザイナーの存在はもちろん、外からの視点が入ることによって、より広い観点で本当の意味での価値があぶり出されていく気がしました

そこには海を越えても伝わる普遍的な価値が見えてきます。

報告会の後には、これからどんな風に進めていくことができるかというやりとりが始まっていました。


プレゼンテーション①/美吉野醸造株式会社(奈良県吉野町)

美吉野醸造株式会社(奈良県吉野町)

千本桜で知られる奈良吉野で、農と共に歩む酒造りの第一歩として、米づくりからの「顔の見える酒造り」をモットーに、手造りによる丹精込めた酒造りを行っている。代表銘柄は「花巴」。

<デザイナー>
Zinnia Nizar(Indonesia)

1995年にシアトル美術学校、1998年にSchool of Visual Arts New Yorkを卒業後、各種雑誌のクリエイティブディレクターを担当。
2001年、2人の友人とともに映画ポスター&CDジャケットを制作する「Akal Design」を設立。その後インドネシア最大の出版会社である「Kom -Pas-Gramedia」にて多くのノンフィクションやアートブックを手がけた。
2008年 には、妹と共に「Ampersand Studio」を設立し、主に出版関係のデザインを制作。IDS(国際デザインスクール)とIKJ(ジャカルタ芸術学校)でグラフィックデザインの教鞭をとるほか、2009年よりADGI (The Indonesian Associationof Graphic Designers)に携わり、2014-2016年のADGIの会長をつとめる。


坂本 大祐 / Daisuke Sakamoto

1975年、大阪府生まれ。和歌山県でデザイナーとしての活動をスタート。
身体を壊したのを機に、2006年、両親が移住していた奈良県・東吉野村へと拠点を移す。移住後は県外の仕事を受けながら、今までの働き方や生活を見直し、自分にとって居心地のいい新たなライフスタイルを模索。
ある出会いをきっかけに、奈良県内の仕事が増え、商品やプロジェクトなどの企画立案からディレクションまで手がけるデザイナーとしてさまざまな案件に携わる。
2015年3月にオープンした「OFFICECAMP HIGASHIYOSHINO」設立時にも企画からデザイン、運営までを担当。
村と外をつなぐパイプ役として、東吉野村を拠点に活動中。

★プレゼンテーション資料は下記よりご覧いただけます。


プレゼンテーション②/株式会社テラス(奈良県宇陀市)


株式会社テラス(奈良県宇陀市)

宇陀市にて、健康なまちづくりに貢献したい、という思いから薬草、健康野菜の栽培、加工事業に取り組む。現在は大和当帰(トウキ)や甘茶など、薬草の栽培・加工・販売など六次産業化を展開している。

<デザイナー>
Wulan Pusponegoro

ジャカルタ在住のグラフィックデザイナー。
2001年にジャカルタのTrisakti大学を卒業後、広告代理店Asatsu-DKに勤務したのち、出版社「Media Satu Publishing」のクリエイティブディレクターとしてインターナショナルマガジンや、そごう百貨店などの大手企業向け雑誌の編集ディレクターをつとめる。
2009年には、インドネシア初の地下鉄「MRTジャカルタ」の全国ロゴコンペを受賞。 2014年には、オランダのティルブルグ大学で社会起業家についてのMBAを取得。
その後は、持続可能な農業と直接取引によって農家の所得向上を目的として小規模珈琲焙煎所を立ち上げ、現在はジャカルタを拠点とするデザインスタジオ「Mitragrafia」のビジネス開発/クリエイティブディレクターを務める。


廣瀬 佑子 / Yuko Hirose

生まれも育ちも大阪府のグラフィックデザイナー。
広告制作会社にて経験を積んだ後、吉野町へ移住し、奈良県の魅力を伝えるデザイナーに。
お節介なオカンのごとく依頼者にひたすら寄り添い、どんな表現がベストかを考える手法でデザインを行う。
また、衣・食・住をできるだけ自活する野生児でもあり、自分が携わった商品を料理として出す「家庭料理オカン」も実験営業中。世界にとって自然で、正しいものをどう人に伝えるか、また興味のあることを楽しく、仕事にし、生きていくかを模索中。

★プレゼンテーション資料は下記よりご覧いただけます。


プレゼンテーション③/健一自然農園(奈良県山添村)


健一自然農園(奈良県山添村)

奈良県北東部に位置する大和高原で、1200年前と同じ方法で生命を大切にし、純粋に育まれた「安心して楽しめる」自然栽培(※農薬・肥料を一歳用いない栽培法)の大和茶を栽培している。


<デザイナー>
Rege Indrastudianto

ジャカルタ在住のグラフィックデザイナー。
2005年にJakarta Arts Instituteの芸術学部でビジュアル・コミュニケーション・デザイン学科を卒業。「Visious Studio」とデザインブログ「grafismasakini.com」の創設者。
Visious Studioを創設するまではOgilvy & Matherや Mullen Lowe Indonesiaなどのインドネシア企業及び多国籍企業でグラフィックデザイナーとして働いていた。
2015年にはADG(インドネシアグラフィックデザイナー協会/The Indonesian Association of Graphic Designers)ジャカルタ支部長に選出。2017年にADGIの会長に就任。

赤司 研介 / Kensuke Akashi

SlowCulture代表/編集者・ライター。1981年、熊本県生まれ。
東京の広告会社でライターとしてのキャリアを積み、2012年に奈良県東部の農村地へ住まいを移す。2児の父。
移住後は大阪の印刷会社CSR室に勤務し、さまざまな地域プロジェクトに携わる。2016年に独立。「自然としての健やかな選択」をする人が増えていくための編集・執筆に取り組んでいる。編集ユニット「treetree」共同代表。奈良を日英バイリンガルで編集するフリーペーパー「naranara」編集長。NPO法人「ミラツク」研究員。
Webマガジン「greenz.jp」や「京都市ソーシャルイノベーション研究所 SILK」のエディター・ライターとしても活動中。茶を通じて「人も自然として在る未来」の実現を目指す伊川健一の言語化およびクリエイティブパートナー。

★プレゼンテーション資料は下記よりご覧いただけます。