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絡み合うサービス / 交通サービス編

初めて訪れた土地で、目的の場所にどのように行ったら良いのだろう?と頭を悩ませたことはありませんか。最近は、googleのおかげでずいぶんと簡単に調べられるようになりました。十数年程前に旅をした時は、地図とメトロのマップを片手に随分と手間取っていたことを思い出します…。近頃、私にとって未知な都市パリを拠点に生活をするようになり、都市における移動のユーザ体験がスマートにデザインされたサービスCitymapperに出会いました。過去にもオススメをされていたのですが、利用してみるとますます良さが実感でき感動しています。本記事では、その感動の共有とサービスデザインの視点から本サービスの位置づけを示してみました。

私が感動したCitymapper3つのポイント

1. その都市で利用できるほぼ全ての交通機関&徒歩でのアクセス方法をおすすめ順に表示
出発地と目的地を入力すると(この入力方法もとても簡単!)、バス・メトロ/トラム・徒歩での移動時間だけでなく、パリのシャアバイクサービスVélib’、配車サービスUberを利用した場合の結果も表示してくれます。もちろん、交通機関どうし(バスとメトロ)の連携提案もあり。検索結果ページでは、Citymapperのおすすめ順に所要時間とともに示してくれるので、おすすめの中から自分の好きなルートを選択できます。このように利用可能な全ての移動手段の結果を表示してくれるため、ユーザのその時の要望に合わせて交通手段とルートを選択できることを可能にしています。例えば、「バスは少し時間がかかるけど、外の景色を見ながら移動したいな」という時はバスを、「今日はとにかく早く到着したい」という時は最短所要時間の手段を、「今日は雨なのであまり外を歩きたくないな…」という時は徒歩時間が少ない手段を選べます。


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2. 観光客でも分かりやすいスマートなガイド
「1」で示した検索結果の一つを選択すると、出発地から目的地までのルートを表示してくれます。以下の写真のように、現在地からバスの最寄り駅までのルート、バスの通るルート、バスを降りる駅、そこから目的地までの徒歩ルートとそれぞれの区間の所要時間が示されます。アプリ内の「GO (出発)」をクリックすると、自分の状態を把握して、出発地点から目的地までステップごとにアプリがガイドをしてくれます。その過程における私の感動ミニポイントをご紹介。

・次のバス/メトロ、さらに次のバス/メトロが駅に到着するまでの時間の表示 →この表示のおかげで、時間のロスなく駅に向かえます。
・乗車しているバスの位置の視覚化→バスに乗るとどこに自分がいるのか、どのバス停で降りなくてはいけないのか不安になりますが、自分のいる位置が地図上とバスの停留所リスト上にプロットされるので直感的に自分の場所を把握できます。
・さらに、降りる駅の手前でお知らせ→アラートを設定しておくと自分の駅の到着前にお知らせが届くので、ずっとアプリをチェックしていなくても大丈夫。
・電車の場合、目的地に近い出口とその出口に一番近い車両を表示→駅には複数の出口がありますが、この表示のおかげでスムーズに自分の出口まで移動が可能。Citymapperがなかったら、電車を降りてプラットフォームで地図を探して、キョロキョロしながら出口の場所を探していた自分が想像できます。
・ストライキや工事などの情報掲載→出発前に電車本数や工事情報を把握した上で出発できます。

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3. 新しい交通サービスとの連携の深さ
バスやメトロ/トラムとの連携に加え、シェアバイクサービスVélib’と配車サービスUberとの連携もきちんとされています。Vélib’を利用する場合には、最寄りのVélib’ステーションにどのくらいの自転車が利用可能か、目的地周辺のステーションでは、どの程度自転車を返却できるスロットがあるか、ということもCitymapperのアプリ上で教えてくれます。もちろん、走行ルートも。このようにシェアバイクユーザが抱える不安をきちんと把握したアプリ作りがなされています。丁寧なガイドのおかげで自分の馴染みのない交通機関にもチャレンジしてみようかな、と思わせてくれます。さらに、Uberを利用したい時には、その時点での目的地までのおおよその価格(Uberでは混み具合により価格が変動。)と所要時間が表示され、Uberを選択するとUberのアプリが立ち上がります。Uberアプリ画面では、既に出発地と目的地が登録されているので、ワンクリックで配車をお願いすることができます。

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Citymapperのコンセプトである”Making City Usable”の通り、 都市を移動することにストレスがなくなり、滞在期間の短い都市でも、自分の都市のように駆け巡る楽しさを提供してくれます。同社の新しい取り組みとしては、メトロなどの公共交通機関と道路上でサービスを行なうタクシーやUberを組み合わせたルート提案ができるアルゴリズムに挑戦しているようです。ますます使いやすいサービスになりそうで、期待いっぱいです。

サービスデザイン × Citymapper

最後に、サービスデザインの文脈でこのサービスを位置づけしてみます。生活上のユーザの達成したいゴールを考えてみると、実は一つのサービスだけではサポートしきれないことが多くあります。そのため、ユーザ調査をしてみると、ユーザ自身が複数のサービス、知識、情報etcを組み合わせて、自分のゴールを達成していることが明らかになります。そこで、既にあるサービスどうしを組み合わせることで、ユーザに新しい価値を提供するサービスもでてきています。サービスデザインの領域では、サービスエンタングルメントと呼ばれており、デジタルの世界ではIFTTTに代表されるように既に広まっています。

例えば、Facebookは、instagramやtwitterなどと相互に連携されており、一つの投稿を他のサービスに同時に展開することが可能です。さらに、Facebookは、多くの情報メディアの入り口としても利用されています。Citymapperは、その交通サービス版にあたります。今までは、Aという場所に行きたい場合、メトロはメトロ、バスはバスの検索アプリを利用して、自分で結果を比較して、ルートを選択することしかできませんでした。しかし、Citymapperがあることで、都市で利用可能なほぼ全ての交通サービスを利用した様々なルートを簡単に比較・検討することが可能になりました。

Citymapperは、一つの企業では成し遂げることが難しかった異なる複数のサービスを連携させ、ユーザのゴールをより達成しやすくサポートしています。まさに、リアルなサービスを繋ぐサービスエンタングルメントを代表するサービスと言えるのではないでしょうか。将来、このように複数の既存サービスを束ね、ユーザの目標をサポートする新しいレイヤーのサービスがでてくることで、私たちの生活はどのように変化するのだろう…、と考えてみるとワクワクしてきます。(津久井かほる)
(2016.5.28)