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【事例(1)】専門家の知識と、生活者の生の声をグラストで編む。

グラフィック・ストラクチャーの活用事例として一つ、「ぎんのライフマガジン」という広報誌の制作プロセスを紹介させてください。

「人生100年時代」とか「超高齢社会」といわれるこれからの時代を、いかに楽しく、自分らしく生きていくかという生活提案誌なのですが、この制作(編集)プロセスがじつにユニーク。

発行者は豊富な実務経験をもつ民間の介護事業者、いわばプロ中のプロですが、この編集プロセスにまったく介護知識のない「一般市民の方」に入ってもらい、「勉強会」を兼ねた公開型・参加型の新しいアプローチで内容を作っています。

さてふつう「勉強会」「編集会議」の体裁になると、編集テーマに適確にアプローチするため前もって様々なデータや資料、スライドを準備しておくのが効率的です。とくに記録する者、あとでデザイン構成する者にとっては、それが大きな助けになります。

しかしこの進め方だと、どうしても先行情報の焼き直しになってしまいます。

また介護という社会問題を取り扱う以上、「問題の投げかけ」や「不安を煽ること」が強くなるわりには、結論として「行政が悪い」「一人一人が努力しなければ」という竜頭蛇尾な構成になりがちです。

そこで専門家の方には「資料やデータは何も用意せず、できるだけ丸腰で来てください」とお願いしています。

このような形で「議論のフリースタイル」で勉強会がはじまると、まず講師と受講生という関係性がブレイクされます。

おのずと一般参加者は「生活設計者」として、専門家はそれをサポートする「サービス提供者」として、ここから「どのように高齢生活を創造していくか」の協働作業になります。生活者の「不安」「不便」「不可解」が議論の起点となり、事実と事例、想像、課題、アイデア、言葉にならない想いなどが渾然一体となってきます。

グラフィックストラクチャーは、それらを拾い集め、構造化、意味づけしながら、時系列ではなく「面」として内容を構成していきます。参加者はみんなそれを見ながら、あるいはそれに触発され、新たなアイデアを出しあいます。

まさにライブ・セッション。

3時間の中で、はじめ誰も予想さえしなかった発想がそこから生まれるのです。今では広報誌に派生して、そこから新しいプロジェクトも次々と誕生しています。

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