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本当にビルの4階?!洞窟のような異空間『表参道GYRE』にいってみた

田根剛の設計で、2019冬にオープンしたGYRE FOOD。土を全面に利用した空間と、大胆な階段状のスペースが特徴的です。

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土で囲われた洞窟のようなイメージを彷彿とさせる内装は、ビルの4階の空間としては良い意味で期待を裏切る空間でした!類似事例も国内ではほとんどないと思います。写真映えもするので集客力の高い空間だと感じました。

田根剛さんって?

田根 剛(たね つよし、1979年(昭和54年)9月14日 - )は、日本の建築家。フランス・パリを拠点に活動。Atelier Tsuyoshi Tane Architects代表。東京都杉並区出身。考古学的な(Archaeological)リサーチと考察を積み重ねることで場所の記憶を掘り起こして未来をつくる建築を「Archaeology of the Future」と呼び、その実現を追求し続けている。
ーWikipediaより

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エストニア国立博物館(2016) PROPAPANDA/IMAGE COURTESY OF DGT.

田根剛さんは国際的にも注目度の高い建築家であり、特に建築と記憶の関係性について深い洞察をお持ちの、大変尊敬できる建築家さんの一人です。中でも10年の歳月をかけて出来上がったエストニア国立博物館は、エストニア国民が自国の象徴として、これからも末長くシンボルとして存在し続ける建築物となりました。
僕としても、建築は記憶と切っても切れない関係性にあると思っています。それは生命としての記憶、個人としての記憶、建物としての記憶、地域としての記憶に分けられると考えています。

生命の記憶=木のぬくもりや石の冷たさといった素材に親しみを持つこと
幼少の記憶=幼少期の環境で培われた生活音などを懐かしく思うこと
建物としての記憶=建設するときの思い、建物への思い、その建物を巡って起きた事柄への思いを紡ぐこと
地域の記憶=民族、歴史、文化、宗教に関わるプライド、信仰、教訓を大切に思うこと

田根剛さんは、建築を中心として起こる記憶の交錯を重視している点で、物質的な奇抜さや名誉を重んじる建築家とは一線を画していると思います。

以上、簡単ではありますが空間設計を担当した田根剛さんについてでした!

GYRE FOODの印象

壁、床は土佐官で、この色に合わせて階段状のスペースの木材、剥き出し天井も塗られています。埋め込みのダウンライトの光量は十分ですが、吸収色なので全体的に落ち着いた雰囲気です。壁の装飾やカウンター・客席のパーテーションに背の高い常緑樹を大胆に植えており、南国を思わせる力強い樹木のイメージが、土で統一した空間のアクセントになっています。

カウンター

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天板・天井は銅製、椅子は木製ですがこちらも色味を合わせており、とことん同配色にこだわってる印象を受けます。

また、安易に突き板やプラスチックを使っていない素材へのこだわりは好印象です。
カウンターの椅子は高めに、立ちのスタッフと目線をそろえるようにしてあります。

階段状のスペース

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高さ4メートル程度まで、おおよそ20センチの段差で構成されています。一般的なイスは40センチ程度ですから、座って足を置くと、窮屈ですが、上段は肘置きにちょうどよく、足を伸ばせばくつろげるようになってます。
三寸角の針葉樹の角材で構成されてますが、接着が甘いのか、割と木の隙間が見えてしまっていて、塗装が中途半端に垂れているのが少し残念です。
また、座面が通路にもなりうるので、雨の日なんかはあまり座れないのでは?肘もつきたくないような。
ただ、自然の中では土の上に座ることは普通で、階段や縁石にも腰掛けることはあるので、そういった屋外的空間利用の実験的スペースだと推測されます。

客席

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ペンダントライトはコードがファブリックの茶色で、シェードは銅製、電球はエジソン電球の明るいタイプでした。シェードが電球に被さってないので光源が直接見え、土に囲まれた洞窟のような心地よい暗さを際立たせています。また、無造作なペンダントライトの配置は星やホタルを連想させます。
パーテーションに使われている植栽がダウンライトに照らされて落ちた影は、ソファやテーブルを優しく彩っています。

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また、植栽のプランターとして立ち上がっている腰高のボリュームは、床と繋がっていて、土に木が植えてあるような演出がなされています。
客席は隣との距離が1メートルほど空いていて、隣が気になるようなことはありません。

フロア構成

メゾン、レストラン、ショップ、バーがシームレスに繋がっています。エスカレーターを上るとすぐ左に階段状スペース、右にはメゾンの扉があり、その先にレストランがあります。左回りの回遊をする様に構成されている気がしますが、自由度高く歩き回れるようになっています。

接客・サービス

コーヒーを買っただけですが、お洒落なスタッフが笑顔で接客してくれました。平日に利用しましたが、休日は相当混みます。バー利用客にとっては、後ろの階段スペースにいる人の目線がおおく少し落ち着かないのではないかと思います。
また、自由度の高い開放感のある空間こため、人が多いと、落ち着いて仕事をするのは難しそうです。
Wifiはあるようですが、繋がりませんでした。Omotesando free wifiが微弱電波 を放っておりますのでそれを捉えることはできました。

五感への作用

音楽は緩やかなジャスが小さめの音量で響いていて、微かなコーヒーの香りがします。エレベーターの音が継続的に小さく聞こえますが、遠くの滝の音にも聞こえ、違和感はありません。時折聞こえるお皿やカラトリーの音にひとけが伝わってきます。
室温は20度程度、適温で暑くも寒くもありません。

そのほか

土の床なので汚れが目立たない点でメンテナンスはしやすそうです。植栽の手入れに関しては定期的に業者が入るものと思われます。
循環を謳った空間で、実際にベランダにコンポストと菜園がありましたが、6坪程度の小さな空間でしたので、レストランの食料調達や生ゴミ循環にはほとんど寄与していないでしょう。

まとめ

以上、表参道GYRE FOODの考察でした!まとめると

・ビルの4階とは思えない異空間、好奇心をくすぐる!
・階段状のスペースが奇抜で、ここでの過ごし方に興味が湧く
・居心地が良いので、また来たい!と思える
・センスの良いスタッフ、接客、商品が空間に品を与えている

写真を見て、いってみたい!と思える空間、そしてその期待に応える体験が、人が人を呼び、この場所を人で溢れさせる要因だと思いました。

都内ではなかなか味わえない空間、ぜひ一度足を運んでみては?

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