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私たちと地続きの問題 映画「遠いところ」

沖縄を舞台にした女性の貧困、暴力、仕事、過酷な社会時の現実を描いた
「遠いところ」が福岡でも上映が始まったので観に行ってきました。
KBCシネマで、この日は工藤将亮監督の舞台挨拶もあるということで、とても楽しみにしていました。
女性の地位や差別、貧困について考えることが今の自分にとってとても大切な問題で、この作品は地元で見られるようになったらぜひ見たいと思っていました。

気になった象徴的なシーンがいくつかありました。
(映画の内容に触れます。ネタバレ注意↓)


  • 「通り」の風景描写。雨上がりのような濡れた地面。なぜ地面が湿っているのだろう?行政の人が息子の様子を見に来た日、ついに息子が連れて行かれた日、雨がざあざあ降っていた。湿り気は前触れなのか?それとも救いの手があることに気づいていない現実なのか?

  • 時々下着姿になるアオイの身体はまだ幼さが残っていて、この若年女性の問題のリアルさを雄弁に語る。

  • アオイが夫に暴力を振るわれて大怪我をした時、それを見た親友の海音が、ほとんど動揺していなかった。暴力が日常にあることを感じさせる。

  • 海辺で遊ぶアオイや海音は、まるでそこら辺にいる普通の女子高生みたいに無邪気で、背負っているものとのギャップに切なさを感じる。

  • 一線を超えてしまったアオイの表情が、その前とは驚くほど変わっている。あどけなさが消え、割り切ったような表情。行動は、その人の表情を変える、そのことを見事に演じていたことに拍手。


舞台挨拶で監督は、この問題は私たちと地続きの問題だと言われていました。
本当にそう思います。もう自分のすぐ隣にあるかもしれない。

目を覆いたくなる暗くて辛い現実は、なかなか表に出てこなくて見えなくて、メディアもなかなか取り上げない。
そこにスポットを当て、現地の人たちの声を丁寧に掬い上げ、表現することを固く決意した工藤監督と周囲の人々。
どれほどの葛藤や困難があっただろう。

上映後の舞台挨拶での工藤監督の受け答えは、とても真摯で謙虚で、何度も何度も自問自答を繰り返されてきたというのが伝わってきました。
私は本当に映画館に足を運んで良かったと思いました。


KBCシネマの壁の色が好きだ〜

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