見出し画像

観戦記: 2024 J2 第23節 清水 vs 千葉

清水そして日本のレジェンドであるオカちゃんこと岡崎慎司さんが、引退の挨拶に久しぶりにアイスタに来てくれたこの試合。そのレジェンドの前で絶対に負けられない清水。現地観戦しましたので観戦記を書いていきます。


前半の2得点を守り切り2-0で勝利

こちらがハイライトです。

清水は、乾・カルリの出場停止。そして試合開始直後の松崎の怪我による負傷交代という、中盤の攻撃的MFが3名かけてしまうというアクシデントを乗り越えて、清水は2-0で勝利をしました。
勝ちロコにはレジェンドの岡崎さんや誕生日の川谷凪選手も加わり、暗転後のペンライトや真夏日の花火もとも相まって、スタジアムは最高の雰囲気に包まれました。
これで清水はホーム連勝となり、勝ち点を49にまで伸ばしました。同日に長崎・横浜FC共に勝利したため、3位という順位は変わりませんでしたが、清水としては優勝のためには勝ち続ける(直接対戦も含めて)しかないので、相手を気にしても仕方がないでしょう。
岡山に続いて、難敵のジェフ千葉に対して「ダブル」をかませたことは、大きいですね。
さて試合の内容を見ていきましょう。

前半の流れ

スターティングメンバー

両チームのスターティングメンバーは下記の通りです。

清水 vs 千葉 スタメン

展望でのスタメン予想が的中。清水はおそらく、矢島がトップ下、松崎が右、ブラガが左という並びだったと思います。サブには久しぶりに怪我から復帰の蓮川と成岡が戻り、沖、蓮川、吉田、北爪、成岡、白崎、タンキとなりました。(住吉・アジズのベンチ入りはならず)
千葉は、横山が久々に先発復帰。代わりに風間がベンチスタートとなりました。前回対戦時は欠場した田口も先発となりました。

ところが開始1分の最初のプレーで、松崎がメンデスにタックルを受け転倒。その際に右手を変な角度でついてしまい負傷(のちに骨折ではなく、脱臼ということがわかりました。)し、タンカに乗せられて負傷交代となります。前々節に交代出場で素晴らしいパフォーマンスをし、前節は久々のスタメン復帰で良いパフォーマンスを継続。この試合もスタメンを勝ち取って調子が良かったので、本人としてもかなり悔しかったはずです。

松崎の代わりには白崎が入ります。白崎はほぼアップなしでの交代となり、非常に入りが難しかったはずです。これにより白崎が左MFに入り、ブラガは清水においては本職に右MFに移ります。観戦記で左サイドのブラガが鍵と書きましたが、この変更はブラガにとってはポジティブだったと思います。

清水 vs 千葉 前半4分からのメンバー

前半注目シーン①: 前半7分のブラガの先制点

松崎の負傷交代で、少し重い雰囲気になったアイスタでしたが、それで得たFKから、山原が強烈なシュートを放ち、勢いをつけます。
そして前半7分。権田からのGKのシーン。権田の脇に高木と高橋が立ちますが、権田は右サイドに回ったブラガへのロングパス。ブラガはうまくキープして右足で切り返して矢口の内側に入ると、右足のアウトサイドでグラウンダーのパス。そこに走り込んだのは交代したばかりの白崎。スライディングで滑り込むと、それにつられた千葉GKの藤田も触れずに、クロスがそのままゴールイン。

前半7分 ブラガの先制のシーン

負傷交代の松崎を励ますような素晴らしいゴールになりました。ゴールはブラガ、そしてアシストはGKの権田につきます。でも、権田のGKに反応して、北川と入れ替わるように、長い距離をダイアゴナルランで左サイドから右のニアに走り込んだ、白崎の走力が生み出したゴールと言ってもいいでしょう。清水が幸先よく先制点を奪います。

前半注目シーン②: 前半14分山原の惜しいラストパス

この試合出場停止の乾の代役には矢島、カルリの代役には白崎が入っていますが、このシーンは二人の特徴が活きたシーンになりました。
左サイドで内側に絞ってボールを受けた白崎は一旦ダイレクトで中村に預けた上で、パスアンドゴー。白崎の空けたスペースに進入した山原にパス、その山原にはスライドした千葉右SBの高橋がつこうとしますが、山原はハーフレーンに位置する白崎と大きなワンツーで、左サイドを突破します。

前半14分の清水の攻撃シーン

スプリントしてゴール前に走り込む矢島にグラウンダーでのパス。千葉のGK藤田が前に出たため、矢島にわずかに合いませんが、良いシーンでした。
まず白崎はカルリのようにサイド際のドリブルで突破するタイプではなく、内側に絞ってテンポの良いパスを得意とする選手。自分ではなく周りを活かすタイプ。そして矢島は乾のように足元で受けることもできますが、乾よりもスペースに走ってボールを引き出せるタイプ。この2人の特徴が活きた形だったと思います。

前半注目シーン③: 前半21分の千葉のビルドアップ

ここは清水の守備の良くないシーンをピックアップ。勝利をしたので見逃しがちですが、課題も多くありました。
千葉はビルドアップ時は左サイドの矢口が高い位置を取り、メンデス、佐々木、高橋の3枚で最終ラインを形成します。それに対して清水は前節と同じく、無理に最終ラインまでは追わず、4-4-2の形でブロックを組み、北川と矢島が最終ラインの3枚を見つつ、シャドーで中盤の縦パスのコースを消すとうことが約束事だと思います。
ところがまず下記の図のシーンは、愛媛にもよくやられていた形ですが、千葉のシャドーの横山がボランチの位置まで落ちて、センターサークル付近でボールを受けに来た際に、清水の選手は誰もパスコースを消せず、また横山のマークの距離も遠く、ボールホルダーにもプレスをかけられていないため、メンデスから横山に、簡単に縦パスを通されてしまいます。横山も難なく前を向いてドリブルで持ち上がることができました。トップの選手が中盤に落ちてボールを受ける際には誰がマークに行くのかという決め事を明確にしないといけません。

前半21分の千葉のビルドアップ

この後は、右サイドで詰まって千葉は再び最終ラインに戻してやり直しをします。今度は、その中で前半22分に、佐々木にボールが渡ったシーン。佐々木へのプレスはこの場面もなく、佐々木は顔を上げながら、ブラガと宮本の間に位置している4番田口に鋭いグラウンダーのパスを通されてしまいます。遅れてついた宮本が田口にドリブル突破を許し、最後は中村が倒し相手にFKを与えます。

前半22分の千葉のビルドアップのシーン

前半40分にも、佐々木から田口に鋭いグラウンダーのパスを通されるということもありました。
J2だとこの守備でも、直接失点につながることは少ないかもしれませんが、J1相手だと通用しないことは、先日の天皇杯京都戦で観た通りかと思います。引いてブロックを作ることと、敵との距離を空けることは同義ではないはず。ブロックを組んだ場合にはパスコースを消す、ボールホルダーに厳しくチェックしに行く、ブロックに入ったら潰しに行くなど、徹底したいですね。

前半注目シーン④: 前半31分高木践のプロ初ゴールによる追加点

前半30分、佐々木のフィードを原がカットしてブラガに。ブラガは見事なワンタッチでメンデスを完全に交わしてクロス。クリアをされますが、セカンドボールを拾った原がPA内に切れ込んでシュート。CKを獲得します。

右CKでキッカーは矢島。ニアサイドで原が競って3名のDFをひきつけ、さらに普段はニアでターゲットになる中村が、前で2名のDFをブロックしたことで、高木がフリーでヘディングシュート。それでもマイナスで少し後ろ側のボールを無理に飛ばずに、身体をひねって、地面にたたきつけ、逆のファーサイドに流し込むという、非常に技術の高いヘディングを決めます。高木践、守備時でも何度も競り勝っているように、身長は低いですが、本当にヘディング技術が高いですね。

その後は千葉が盛り返しますが、清水も時折良いカウンターで対抗し、前半としては長いアディショナルタイプ7分も含めて、2-0のまま前半を折り返します。

前半の総括

前半のスタッツはこちらになります。

清水 vs 千葉 前半のスタッツ

データで見る通り、松崎の開始早々の負傷退場でどうなるかと思いましたが、清水がシュート数、ゴール期待値で上回り、概ね清水のペースとなりました。一方で、清水がある程度ブロックを組んで守ったこともあり、パス数は少なく、またボール奪取位置も27mと非常に低い結果になりました。
こちらが時間帯別のデータです。

清水 vs 千葉 前半時間帯別スタッツ

これを見る限りは、やはり序盤は清水がペースを握りましたが、徐々に千葉ペースとなり、最後の15分は7割以上の保持を許しています。これは2-0となり、清水が少し引いた影響です。それでもシュートは1本に押さえており、千葉に「持たせる」ような展開に持ち込めていることがわかります。

後半の流れ

後半の注目シーン①: 後半4分矢島の抜け出し

ハーフタイムでの交代は両チームなく、後半がスタートします。後半4分ですが、右サイドで2番高橋が、右サイドに出てボールを受けに来た田口にパスを預け、前に出ますが、そこを白崎がうまく体を寄せてカットして、山原にバックパス。高橋が上がって空いたスペースに矢島が動いたことを見て、山原はダイレクトでスルーパス。

後半4分 清水のチャンス

矢島はフリーで一気にゴールラインまでドリブルで駆け上がりクロス。抜ければ北川が合わせるだけの決定機でしたが、メンデスのハンドに阻止されます。早い展開であったため、主審は近くで観れておらず、また線審も逆であったため、ハンドの判定はできず。(VARだったら確実にPKでした)

後半注目のシーン②: 後半13分山原の守備

ちょっとしたシーンなのですが、この試合、千葉の右WG7番の田中と、清水の左SB山原がバチバチにやりあってて面白かったです。この試合山原は攻撃ではあまり目立たなかったのですが、守備が本当に素晴らしかった。
このシーンでも、後半よく見られましたが田口が右サイドに流れて、その他口を使って田中が完璧に裏をとったかと思いますが、山原が懸命に戻って、田中のクロスをスライディングで阻止。

後半13分 千葉の攻撃

この両者の対決は本当に見ごたえがありました。

後半中盤の両チームの選手交代

千葉は後半15分に矢口に代えて、切り札のドゥドゥを投入。岡庭が左SBに下がり、ドゥドゥが左WGの位置に入ります。
それに対して清水は、後半19分と比較的早い時間、ブラガ→北爪、矢島→吉田の変更により、山原を中盤に上げ、3-4-2-1の形に変更します。守備の強度を増しつつ、カウンターでの得点も期待できる布陣に変更します。
さらにそれを見て、千葉は後半22分に、メンデス→松田、小林→品田、横山→林と3枚替え。小森と林のツートップにすることで勝負に出ます。

後半22分からの両チームのメンバー

後半の注目シーン③: 後半31分の権田のスーパーセーブ

千葉に押し込まれる展開が続く中で、後半31分に千葉の決定機。千葉は交代で入ったボランチの44番品田が起点となり、中央のドゥドゥに楔のパス。セカンドボールを田口がシュートして、さらにこぼれたボールをドゥドゥがダイレクトで強烈なシュート。シュートのディフレクションをダイレクトで撃ったシュートなので反応は難しかったと思いますが、権田は素晴らしいセーブを見せます。この時間帯で1点差に迫られた場合、千葉がかなり押せ押せムードになったと思うので、このセーブは大きかったですね。

両チームの選手交代: 清水はタンキ・成岡投入でクロージング

千葉は後半33分に、7番田中に代えて、順天堂大学の特別指定選手の岩井を投入します。岩井にとってはこれがデビュー戦になります。
清水は、後半38分に、北川→タンキ、山原→成岡の交代でクロージングを測ります。

後半38分からの両チームのメンバー

交代して入った、成岡が切れ良くファールをとったり、タンキがロングボールのターゲットとしてボールを保持するなど狙い通りの働きもあり、清水は無失点で逃げ切り。クリーンシートで勝ち点3を手にします。千葉に対してシーズンダブルを達成することになりました。

後半の総括

こちらが後半のスタッツです。

前半とは異なり、千葉にかなり押し込まれ、シュートも8本撃たれましたが、ゴール期待値は0.43と、決定機は作らせませんでした。一方で清水はシュートが3本と、セットして守るにせよ、もう少しカウンター含めて、攻撃の形を作りたいところですね。
時間帯別には、以下の通りです。

清水 vs 千葉 時間帯別スタッツ

後半は時間帯に寄らず、基本的には千葉にボールを保持される展開でした。ただ清水としては、気温が高い過酷な環境の中で、無理せずにブロックを組んで、スタミナをセーブしながら守り切るという意味では、これからの夏場の戦いに向けて良いゲームになったと思います。

試合全体の総括

清水の勝因は?

  • 前半早い時間での権田→ブラガ→白崎での先制点

  • 前半31分高木践の高い技術のヘディングによる追加点

  • 後半32分の権田のスーパーセーブ

  • 山原 vs 田中の1対1での勝利

  • 暑さ対策含めたブロックを組む形の守備

  • コーナーキックに対する守備

守備の面では、宮本も試合後にコメントを残しています。

--後半は2点リードを生かした戦い方ができた?
僕らも苦しい時間帯が続きましたし、そういった中で後ろの選手と話し合いながら、ある程度セットして、「ボールは持たせてもよし」とするような感じで守ってはいました。そこに関してストレスはなかったです。やられる気配もあまり感じませんでした。ただ、奪ったあとのパスがうまくつながらないシーンが多く、後半はシュートまで行ける回数が少なくて、相手陣内でなかなかプレーできませんでした。奪ったあと、相手陣内で自分たちのプレータイムを増やせれば、もっと試合を優位に運ぶことができたかなと思っています。勝った中でも課題があったので、そこは次につなげたいと思っています。

試合後 宮本選手

また試合トータルでは15本ものコーナーキック、及び何本かのロングスローを与えましたが、それでも失点をゼロに押さえられたことは、セットプレーの守備に関しては、良い自信になったのではないでしょうか。

清水の課題は?

  • ブロックを組んだ際の守備のタイトさ

  • 相手に持たれる時間帯での攻撃への切り替え

ひとつは、前半にひとつシーンを取り上げたように、ブロックを組んだ際の守備の緩さの部分。ブロックを組んで引くからと言って、ボールホルダーやパスの受け手に緩く当たっていいということではないので、ここは改めて守備の強度の部分は、強めていかないと、上手いチームにはやられてしまうと思います。
もうひとつは、宮本も行っているように、押し込まれる時間帯での攻撃回数を増やすこと。カウンターなどで相手陣内でプレーする時間を増やせればもっと楽な展開にできると思います。

清水のMVPは?

MVPは文句なしで高木選手でしょう。32歳の清水エスパルスの誕生日に、32番の高木選手が初ゴールを決める。まさに持ってる選手ですね。貴重な追加点もそうですが、守備の面でも素晴らしかったです。読みとスピードが素晴らしく、小森や横山といった質の高い選手に、高橋と連携して仕事をさせませんでした。また相手のクロスに対しても、身長は低いながらもきちんとボールの落下地点の予測が素晴らしいですね。

--クロス対応も安定していた。
試合前から、クロスがすごく入ってくるということはみんなで共有していました。そこが勝負だと思っていた中で、そこで自分がはじくことで失点を減らせるのかなと思っていました。後半はちょっと被ってしまうシーンもありましたが、ほぼ完璧だったんじゃないかなと思っています。

試合後 高木選手
清水のMVP高木選手

清水のMIPは?

私がMIPとして挙げたいのは、松崎選手の負傷交代で急遽の出場となった白崎選手。前半は左MFとして、先制点にいきなり絡み、その後も山原とのコンビで左サイドの攻撃を組み立て、また後半早々にも、良い守備から本来はPKを取得したプレーのきっかけをつくり、システム変更後は右サイドのシャード的なポジションでプレー。最後は足をつりながらも、最後まで戦い抜きました。ここまで白崎の存在の大きさを感じた試合はなかったように思います。まさに縁の下の力持ちといった活躍でした。

MIPに選んだ白崎選手

最後に

清水エスパルスの32歳の誕生日に、オリ10同士の戦い、今季最多17,700名の観客、そしてレジェンドの岡崎さんが見守る中で、最高の形での勝利となりました。残念ながら、その後の天皇杯は京都に負けてしまいましたが、大事なのはリーグ戦。特に次節のアウェイ大分戦は極めて大事な試合になります。天候などのコンディションにもよりますが、アウェイだからといって構えずに、このホームの2戦で見せた「原点回帰」のサッカーを以下に貫けるかが大事だと思います。ここでアウェイで勝利して、優勝に向けての流れを是非作りたいですね。現地に行きますので、応援頑張りましょう!

岡崎さんも見守る中で素晴らしい勝利になりました

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?