とあるおっさんの放射線科専門医試験活動記
はじめに
みなさんこんにちは。デラグルーヴ と申します。
普段はアニメを観て絶叫したり、ナイスミュージックで爆踊りしています。
この度、2024年8月23日に行われた 日本専門医機構認定 第4回放射線科専門医試験 に合格したので、やったことなどをまとめて残しておこうと思います記
放射線治療科の専攻医の体験記はほとんどゼロだと思うので、後の先生方の参考になれば幸いです。
自己紹介
地方国立卒
某大学放射線治療科入局、その後大学2年→市中1年
大学では7か月程度診断科、それ以外はすべて治療ローテ
アニメオタク、アニソンDJ
専門医試験について
概要
試験は例年150分、105問で行われます。(コロナ禍の2020年のみ84問)
途中退室可、問題冊子持ち帰り可です。
場所は東京と神戸をいったりきたりです。2024年は神戸ポートピアホテルでした。
割合としては、診断55問(IVR3-4問含)、核医学15問、治療20問、一般問題15問です。
診断分野は、脳神経・肺縦郭・肝胆膵が各6問程度、その他領域各3問ずつといった配分となっています。
ボーダーラインは例年おおよそ6割程度と言われています。2024年は専門医試験Lineグループで55点程度のところにあるのではとの噂です。
この試験については、ご存じの通り診断科と治療科が同じ試験を受けます。
治療科の先輩からは「診断の問題は難しいからむしろ治療科が有利」という話も聞きますが、安心してはいけません。
治療科専門医の基本方針は、「核、治療、一般でできるだけ点を取って、診断は頑張れるだけ頑張る」になります。私は上記で8割を取り、診断は6割をとることを目指しました。この3分野については出題範囲が狭く、過去問の精査と復習が非常に手っ取り早く得点につながります。
試験問題はJRS公式ページよりダウンロードできますが、解答はありません。神サイト「画像診断まとめ」の関連の非公式解答ページがあるのでそこを見ましょう。
ただし、そこそこ解答や解説が間違っていたり適当だったりします。下部のコメント欄によりそれっぽい説明があったり、試験Lineグループ(解答例のページに毎年誘導URLが出てきます)も参考に、総合的に考えましょう。本当の正答を見つけるまでが試験勉強です。
一般問題
ここでは放射線生物学、物理学(工学)、被ばく医療、法令、医療情報などといった分野の問題が出ます。基本的には非常に散らかっている分野なので、過去問から膨らませて勉強していくのがオススメです。
特に被ばく線量と確定的影響、被ばく死と線量、EmamiのTD5/5なんかは頻出であり、ノート1ページにまとめておくと直前に復習もできて安心です。
核医学
得点源にはなりますが、正直とっつきにくいと思います。
こちらも過去問は軸にしますが、何か1冊参考書を持っていると心強いです。
私は「核医学ノート 第6版」を購入しました。
核医学については、核部分(=同位体の半減期、放出する放射線など)+くっつくもの(=MIBG、adosterol等)で理論付けて覚えていくとよいです。
半減期は覚える必要がありますが、「超短い=PET、短い=ジェネレーター、投与Bq数多くできる、長い=RI治療だったりRALSやブラキの線源」といったように対応できますし、薬剤の種類が多くて紛らわしい脳血流や心筋シンチを理論立てて理解することができます。
頻出の薬剤については、(誤答も含め)投与Bq数、投与経路、撮像時間、適応疾患等についてノートにまとめておくとよいです。せいぜい3-4ページくらいで収まり、試験直前の復習にも役立ちます。
脳血流や心筋についてはもう少し深い理解があるとなお良いです。
個人的には画像診断専門医のひよっこ先生のブログが非常によいまとめになっていると思います。
治療
治療専門医を目指して計画や外来をこなしているなら、ここは寝ていても7割は固いと思います。残り3割はおそらく所属している施設によって異なるのではと思います。
私は医局の関連で粒子線などが一切ない都合で、小児疾患の治療についてはかなり怪しかったです。怪しい分野は「放射線治療計画ガイドライン」で確認しまとめておきましょう。
まあ、放射線科医たるもの「がん・放射線療法改訂第8版」や「Perez & Brady's Principles and Practice of Radiation Oncology」、最新情報を得るために、じん先生のnoteを勉強しているのは当たり前と思いますが…
診断
診断の勉強はやはり一番厳しく、辛いものでした(悪性腫瘍以外は全く興味がないため)。
画像診断に興味がない方や、私のような省エネ野郎には、この「ジェネラリストを目指す人のための 画像診断パワフルガイド 第2版」が圧倒的にオススメです。
この1冊で専門医試験の選択肢に出ている事項の8割程度は網羅できるため、診断領域で50%正答するにはこれで十分だと思います。
問題を解きながら、出てきた疾患・事項について辞書として引いていくと良いです。ただし、小児・心臓・婦人科など弱い部分もあるので、より万全を期すなら勘所NEOやKeyBook、レジデントセミナーで補っていく必要があります。
専門医試験を解きながら、パワフルガイドの疾患ページに出題年数と番号を書き込んでいくと、自然と頻出事項やトレンドが浮かび上がってきます。専門医試験は完全に同じ問題は出ないので、頻出項目に重点を置きながら知識の肉付けをしていく必要がありますが、無理なく学習できます。
あと、意外と盲点になるのが専門医カリキュラムガイドライン。実はここに乗っている疾患しか出題されません。
特に注意なのは改訂で新規に追加された項目(赤字部分)。ここは直接的な問題にはなりにくいですが、過去問での対策も無意味です。事前に簡単なまとめノートを作っておくと吉です。実際的中します。
やったこと(時系列)
専攻医3年
先輩が専門医試験に合格し、勉強法などを聞いて意識し始めましたが、日常業務とアニメ視聴に忙しく、実際は全く勉強していませんでした…
ちなみにこの年(2023年)は、我らがMAHO FILM様 https://mahofilm.com/ が神アニメを連続で放映しまくっていて、本当に勉強どころではありませんでした。とりあえず観ましょう。
毎年12月には JCR 日本放射線科専門医会 にて、「専門医試験の国試サマライズ」と名高い レジデントセミナー が開催されます。
非会員50000円とかなり高いですが、各分野の講師レベルの、一番実力のある先生方の講義をまとめて勉強できるので忘れずに参加しましょう。
これのレジュメがあればかなり勉強しやすくなります。
(ちなみに私は「聖剣学院の魔剣使い」リアルイベントに参加するなどしていたらすっかり参加忘れていました…)
受験年4月~
出願の詳細について、例年4月下旬にJRS公式ページに掲載されます。
今年は機構認定の診断・治療専門医1年目のため混乱があったようで、かなり遅くなりました。
Googleフォームで登録→書類到着→出願の流れです。
出願については、受験料の振り込みが三井住友の窓口でしかできない方式であったことと、複数の封筒に切手を貼って書留で送らないといけなかったのが地味に面倒でした。
出願書類提出のために有給を取っておくと安心かもしれません。
出願が済むと、いよいよ試験の方向へ意識が向いていきます。
本格的な勉強はこの頃にスタートする方が多いのではないでしょうか。
私は参考書の通読が大の苦手なので、とりあえずJRSから試験問題をダウンロードし、時間をかけて2022年~2020年の3年分の問題を解きました。
問題については出てきた選択肢すべてについて「なんの疾患か、どんな疾患か」「なぜこの選択肢を持ってきたのか(多発性硬化症 vs 視神経脊髄炎 など)」について、周辺まで勉強するための材料としました。
その後さらに前の年をより実戦形式で解答・採点し、同様に復習をしていき、最終的には9年分を1周、直近5年は3周くらいしたと思います。
勉強時間については、殆どが暇な外来のスキマ時間で、帰宅後や週末まで勉強にあてたのは直前1か月くらいでした。
直前2か月で3回くらいDJ出演もあったし、本当にアホだったと思います。
さらにちょうど「ガールズバンドクライ」にドハマりしてしまい、最新話が更新されるごとに1話から全て見直す生活をしていたので…
ちなみに、直前期には見るレジデントセミナーが残念ながらなかったので、映像授業として「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」を視聴していました。
学生時代、映像授業は一切受講せずCBT時には「銀河英雄伝説 全話」を、医師国家試験時には「機動新世紀ガンダムX 全話」をdアニメストアで一気見して合格したので、dアニメストアには試験合格の効能があるのかもしれません。
試験前日
前日は普通に仕事していました。何とか定時にあがり、そのまま会場近くのホテルへチェックイン。
頑張れば当日入りもできましたが、朝早く起きるのが面倒だったので宿をとりました。
チェックイン後はご飯食べて風呂入って酒飲んで寝ました…
前日の追い込みとかは一切ありません。仕事終わった瞬間にやる気がなくなるダメ人間なので…
試験当日
会場にはだいたい9時頃に到着する予定でいいです。
持ち物は
受験票
HBの鉛筆
消しゴム
鉛筆削り
服
くらいあればよいです。
服については、スーツなどの人はほぼいなくて、ラフな格好で大丈夫です。
私はアニメTシャツで行きましたが怒られませんでした。たぶんフルグラのアニメTシャツでも大丈夫です。流石放射線科、カードショップみたいな雰囲気でした
途中退室可の試験ですが、結局あまり退室していない印象でした。
回答→見直し→回答個数見直し→マーク見直しなどしていると、そこまで時間の余裕はない感じです。焦らずにじっくり時間を使うといいです。
帰りは大阪で同期と反省飲みをしました。
結局試験前日まで毎日飲んでいましたが、解放された酒はやはり格別でした。
試験結果については1週間以内には発表されます。今年は29日の14時でした。忘れずに確認しましょう。
遅れて合格通知が届きます。
合格者をみてみると、50番くらいまでの先生は全員合格していました。このように見てみると、情報を早くマメにチェックしている先生ほどちゃんと対策して合格できているのかもしれませんね。
終わりに
最後に、これを見てくれている後進の先生に…
レジデントセミナーは忘れず申し込もう!
出願情報はマメにチェックしよう!
勉強は核・治療・一般を完璧にしつつ、診断で安全マージンを広げていく感じで!
マジでこんなやつでも合格するし、以外となんとかなるぞ!
アニメ、観よう!