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ホン雑記 Vol.73「形骸の魔力」

マツコ・デラックスが出ていたなんかのドキュメントバラエティで、ひとりの一般女性に50日間、いつもと違う生活を送ってもらうという番組があった。


歳は20代前半ぐらいだったろうか。
彼女にエルメスのバーキンのバッグを50日間だけ渡して生活させるという企画だった。

スタッフからバッグを受け取った彼女は、それがどうやらエルメスであるらしいことは外見から察するが、大体30万円ほどだろうと予想していた。
女性らしくテンションの上がった彼女は、バッグをそれはそれは大切に扱って、それに合うような靴やネイルで飾っていった。

彼女にはひとつコンプレックスがあった。
それはアレルギーのせいで目元のメイクができないという悩みだった。


この企画の期限も終わりに近づく頃、この手渡されたバッグがいったい本当はいくらほどのものなのかが気にかかる。今頃になってネットで調べ出す彼女。同じ型のものを見つけた。
140万円の値打ちのあるシロモノだった。
「えっ」
動きの止まる彼女。検索結果とバッグを視線が行き来した。

長野県在住の彼女は、東京に向かうことを決意していた。
地元ではアレルギーのせいで、どの眼科に行っても医者にメイクを止められるというのだ。

メイクとアレルギーについて造詣の深い人物が、東京のとあるマンションの一室で眼科を開業しているという。以前から知ってはいたが、わざわざ自分が東京に行くなんてことは想像だにしていなかった。

そこで彼女はアイメイクを覚えることになる。


オレは物心ついた時からホントにブランドが大嫌いだった。飾る人間をとにかく見下していた。
が、この番組を見て目から鱗が2000枚ほど放出された。虎の威を借る狐はダサいと思っていたが、虎の威に引っ張ってもらうのだ。

芸人があえて家賃の高い部屋に住むのも、三日坊主にならないように高めのスポーツ用品を取り揃えるのも、同じようなものかもしれない。

結婚式も、ネクタイも、七五三も、仏壇も、制服も、卒業式も、入社式も、朝礼も、イワシの頭も、あらゆるセレモニーも…… それらのほうが、そこに参加するどの人間よりも厳かだ。暴力団にさえ盃があるし、天皇陛下でさえ「オレが一番偉いんだから今日の式典無しね。めんどくさいから」とは言わない。

どれも、なくてもいいっちゃいいものだ。でも、ひとりひとりのその場の誓いだけではダラダラしちゃうので、道具やしきたりや場の力によって、人は前に進んで来たんだろう。
形あるものは、こうも人のエネルギーを引っ張り上げるのか。


さーて、ダラダラチャンピオンのこのボクちゃん。
何を決めて行こうかなぁ。

すーぐ過去の自分を裏切るからなぁ、オレ。




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