親知らずは抜くべき?抜かないべき?(後編)
前回の続きです。
前回を読んで、内容に納得してもらえたら、続きも読んでもらえたらと思います。
2.親知らずを抜くリスク
たかが抜歯といえど、歯科の中では手術に分類される治療です。それなりにデメリットが存在します。
まず、やっぱり痛いです。手術中は麻酔が効いているため痛みは出ませんが、麻酔が切れる2時間後くらいから、痛みが続きます。これはもうどうすることもできません。痛み止めを飲んで、痛みが引いてくれるのを待つのみです。
次に、顔が結構腫れます。特に横になってはえている親知らずを抜歯するときは特に腫れます。腫れは、抜歯をした数日後がピークとなりますので、抜歯した数日後は、大事な予定を入れるのは避けたほうが無難でしょう。
あと、結構きついです。まっすぐはえていて、完全に見えている歯は、抜くのは大変ではありませんが、横に生えていたり、歯が完全に埋まっている場合は、30分
〜1時間くらい、抜歯に時間がかかることがあります。その間、休みしながら、お口を頑張って開けてもらわなければいけません。
一番重要なデメリットは、術後のしびれです。
親知らずの根っこの近くには、骨の中を神経が通っています(下歯槽神経といいます)。この神経は、顎先と下唇の感覚を支配しています。右側なら右の、左側なら左の感覚と、半分ずつです。横になってはえている親知らずの根っこは特に、この神経と近い位置にあります(下の絵を参照)。まれに、接していたり、神経を根っこがつかんでいることもあります。
こういった場合、抜歯するときに、根っこの先が神経に触り、麻酔が切れたあとも、顎先と下唇にしびれが出てしまうことがあるんです。正座したあとに、脚がしびれるようなぴりぴり感をイメージしてもらえたらいいかと思います。
神経を切るわけではないので、ある程度感覚は元通りになることが多いですが、そのまま症状が残り続けてしまうこともあります。治療としては、ビタミンB12(メチコバール、メチルコバラミン)の内服治療を行います。こういったデメリットもあるため、なんでもかんでも抜歯したほうがいいとは言えない現状があります。
3.親知らずを抜かなかったらどうなる?
抜くことのデメリットは、上でお話しました。
今回は逆に、抜かなかったらどうなるか、です。
親知らずが虫歯で痛んでいる場合は、虫歯の治療をする必要があります。しかし、親知らずは奥の方にあるため、なかなか治療の傷が届かず、口も長い間、大きく開けてもらう必要があります。
歯周病(ペリコ)の場合ですが、前回述べたとおり、親知らずは、一部分だけはえていて、ほとんどが埋まっている、なんてことがありますので、こういった場合、親知らずの周りの歯茎には、汚れが溜まりやすくなってしまいます。
もし歯の周りの歯茎が痛み出したり、腫れてきたとしても、多くの場合は自然と治ります。しかしこれは、治ったというのは語弊があり、一旦落ち着いただけがほとんどです。また時間が経てば、痛みが出てきます。それを繰り返しているうちに、歯の周りの骨を溶かし、親知らずの手前の歯(7番目の歯)が弱ってしまうことがあります。治療としては、最悪の場合、親知らずと7番目の歯、2本とも抜歯しなくてはいけなくなる可能性があります。
また、親知らずは一般的に、若いときのほうが抜きやすいです。これは、年齢を重ねることにより、骨のしなりがなくなり、歯を骨から引っ張り抜くときに、力を多くかけなければいけなくなるからです。
親知らずは20代のうちに抜くのがベストだと思っています。20代のときは、親知らずがはえるところまではえている時期であり、また時期としても抜きやすいため、抜く方も抜かれる方も負担は少なくなります。ですので、親知らずを抜かないということは、いつか抜かなければいけなくなるときの負担が増えるということになります。
4.結論どうしたらいい?
結論は、答えはありません。こればっかりはごめんなさい。
ですが、私の考えとしては、痛んでしまった場合抜歯する、というのは根本にあります。
たかが歯周病といえど、入院して治療をしなければいけなくなるくらい顔が晴れることがあります。顎の下から切開をすることもあります。採血もして、点滴もしなければいけません。そうなってくると、もはや抜いたほうが楽です。
もし、あなたがおじいさん、おばあさんになったとき、親知らずが痛んでしまった場合、高齢での親知らずの抜歯はほんときついですし、病気があったらお医者さんに相談しなければいけないし、歯は抜きにくいですし、もうものすごく大変です。私の経験では、95歳のおばあさんの親知らずの抜歯が最高齢ですが、抜くこちらも申し訳なくなりました。最後には安心して帰って行かれましたが、抜く前はほんとつらそうでした。
歳を取れば取るほど、つらいことはしたくないと思います。
抜く決断をするなら早めがいいと思います。
詳しいことは、歯医者さんに行き、レントゲンをとって聞いてみてください。
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