小説『現代人の殺し方』
《注意!!》このnoteの内容はフィクションです。人に危害を加えることを推奨している訳ではないので、誤解なきようお願いします。 by ハム平
* * * * *
今の時代に、人を殺すのは簡単だ。
なんでかって? ここ10年での急速なデジタル化によって、気軽に手を下せるようになったからだ。それも血を見ることなく…
よく考えてみろよ。
1900年代はほとんどの人間が、地に足を付いて”ヒト”として生きていた。だから、殺そうとするときは、直接ナイフなり銃なりで殺めなければならなかった。そこで息の根を止めさえすれば、そいつはこの世から去って、永遠に消える。そいつの爪痕や足跡は、どこにも残らない…
それが2000年代に入って少し経ったらどうなったよ? パソコンが普及し、一家に1台は当たり前。スマホも2010年頃から、iPhoneの鰻登りの人気と共に急速に普及していった。
それと同時にソフトウェアも充実していって、GAFAは今や巨大帝国を築くようにまでなった。Microsoftなんかもその一味だ…
奴らが提供するサービスにクラウドサービスがある。中でもオンライン ストレージってものが今回の肝だ。これはオンライン上のストレージに、画像や動画・ドキュメントなどのデータをアップロードして保管できる、画期的で悪魔のようなサービスだ。G○ggle Driveや○neDrive・Dr○pboxなんてものが例に挙げられるなー
なんで”悪魔”のようなサービスだって??
奴らに、お前らのものを握られるからだよ!!
俺の話をしよう。俺は普段から○neDriveを使っている。そこに今まで撮りためた写真やドキュメント類を保存している。言うなれば、大切な”思い出”や”記憶”を貯めてるんだ。
もし、奴らがアカウントを削除したり、データ消去したらどうなると思う? それは何を意味するのか?
俺の”死”だ!!!
現代人は、だいたいこのようなオンライン ストレージをよく使っている。そこにデータを保存したりして、便利に使っているわけだ。
だが、それらが消されたらどうなる? 何もなくなってしまうだろ? 要は、自分の大事なところを奴らに握られてるのと同じという事だ!!
これが、”死”ということだ。
なにもナイフや銃で直接殺さずとも、クラウド上に上げられたデータを吹き飛ばすだけで、俺らは死んだも同然となる。抹消されるんだ… 奴らは俺らのデータが欲しいだけ。 つまりは、俺ら本体、俺らの肉体になんて1㍉も興味ないんだぞ!!
今この瞬間にも、奴らの手の平で転がされている身である以上、自衛は大切だ。消されないために…
対策はひとつ・・・
手持ちのHDDやSSDにしっかりバックアップを取っておくんだな。オフラインの環境に。
デジタル化によって、新たな弱肉強食の世界に引きずり込まれた。気軽に手を下されて堪るものかっ!
でも・・・
俺たち”ヒト”がデータと化した以上、いや…デジタル化した段階で、もう死んでいたのかもしれない。”ヒト”として・・・
ー 完 ー