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大原女の衣装

京都の東北に位置する大原


大原は京都市左京区に属する場所です。出町柳から約13キロ、車を走らせると約20分でもう別世界、木々の緑が美しい大原に到着です。
筆者が大原の調査を始めたのは、京都新聞「なつかしのきもの」で撮影場所を大原にしたのがきっかけです。労働着としての着物にも光を当ててみたいと思い、当時(2008年頃)大原観光保勝会におられた早川昭子さんに大原女の衣装についてお話しを伺いました。また、大原女衣装は他の大学や団体が調査をされていると思っていましたが、そうしたことが無いということを知り、NPO法人京都古布保存会で調査を開始しました。

大原女の衣装構成


大原女の衣装は、「紺の木綿の着物に絣の前掛け」というスタイルが基本です。 まず紺の着物、普段は着流しですが、働くときは膝から5cm下に裾がくるように着付け、腰紐でとめます。
その上を力紐で押さえてから、絣の前掛けをする訳ですが、この前掛、大原では2幅半、と決まっています。白川女や他の地域から販売にくる女性は3幅です。
 また、前掛けの紐も左右同じ長さではありません。前掛けの紐の結び方にもいろいろな約束ごとがあり、最後に写真のようにお洒落にまとめます。前掛けの紐はモスリン製が一番よいのだそうです。

前掛けをつけたところ。

 紺の中に赤の襷と力紐の赤、そしてモスリン紐の鮮やかな赤やピンクとたいへんファッショナブルな装いになります。たすきにも美しい房がついています。 足には「脚半」と「はばき」をつけ、わらじを履きます。
 手ぬぐいをかぶって大原女装束は完成です。
頭の上には藁で編んだ輪を載せ、その上に柴の束を載せます。「町に出るのだから少しでもお洒落をして」という大原に住む女性たちの工夫が作り上げた販売ユニフォームです。
建礼門院の侍従の阿波内侍が、御所に行く際に来た服装を、地元の人が真似をしたのが始まりという話も伝わっています。
早川さんのお話では、大原の女性は冠婚葬祭すべて、前掛けをして出席するのだとか。

京都古布保存会事務局で行った調査報告会のときの着付け

大原女前掛けにも欠かせない絣模様、括り絣や、板締め絣など、日本ほど絣の種類が多く、かつ精緻な絣のできる国はありません。紺に白の対比はシンプルで、力強いイメージです。働く姿をより美しく見せたいという日本人の美意識の現れです。日本の働く着物は美しい、このことをもっと多くの方に知っていただきたいと思います。

似内惠子(NPO法人京都古布保存会代表理事)

(この文章の著作権はNPO法人京都古布保存会に帰属します。無断転載・引用を禁じます)
【参照サイト】
NPO法人京都古布保存会FBページ
https://www.facebook.com/kyoutokofu



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