見出し画像

聞き取り調査に向けて

聞き取り調査を続けて

NPO法人京都古布保存会は、2008年の設立以来、都周辺で聞き取り調査を続けてきました。聞き取りは一般の方・製造者・流通にかかわる方と様々です。男性も女性も対象です。そうした中で、いくつかのノウハウが出来上がってきました。それをこの場で共有し、より効率のよい調査ができるように役立てていただきたいと思います。

必要なこととそうでないこと

1 まず、聞き取る場所と時間は、大変重要です。
たとえばある高齢の方からお話を伺うとします。話に興が乗ってきて、本人もいろいろなことを思い出している場面を考えてください。そこに息子さんがかえってきて、「またそんなつまらない昔ばなしをしている」などと言われては、せっかくの調査が進みません。でも、ご自宅で調査をしていると遭遇する場面なのです。こうした可能性がある場合は、交通費などをお渡しして、調査をしやすい場所に来ていただくのも一方法です。

2 個人的なことは聞かない
これもわざわざ言うことではないと思いますが、何度も同じ方の聞き取りをしていると、親しくなってこうした話になってしまいます。
個人的なことに話が進んだときは話を逸らす、一旦休憩を入れるなどの方法で、聞かないほうがよいことを避ける必要があります。円滑に調査をするためにも必要なことです。

3 同じ人の聞き取りは3回まで
これは筆者の経験からきたルールです。2と関連しますが、3回もお会いするとどうしても対象の方と親しくなってしまうので、3回までにできるだけのことを聞いておくようにします。非常に聞く価値のある情報をたくさんお持ちの場合は、複数名で聞き取るなどの方法で個人的に親しくなるのを避けます。

大原観光保勝改での調査

記録の仕方

これも人によりますが、録音を取る方がいい場合とそうでない場合があります。筆者はメモを重視し、あとで読みあげなどで確認をしていただくようにしています。録音がより正確であると思う方はそちらでよいと思います。ただし、録音で緊張して話せなくなる人もあります。
また、聞かせていただいたことはできるだけ早くテキスト化するのも重要です。調査者が内容を忘れることもあります。
それ以上に、先方の事情が変わって、これ以上聞き取りをさせない、などの連絡が来る場合もあります(高齢者の場合で家族の方からまど)。聞いてから後の迅速な対応は重要です。

その場で寄贈を受けない

聞き取りで先方が気に入って何かを寄贈するという申し出がある場合があります。その場合はすぐに物を持ち帰らず、後日寄贈の承諾書などを作成して寄贈を受けます。貴重な資料で必要だと思っても、手順を守ることが必要です。「70歳以上の方は家族の同意をもらう」という規則にしておくのもよいかもしれません。この件にはいろいろ苦い思い出もあります(詳細はまた機会のあるときに書かせていただきます)。

似内惠子(NPO法人京都古布保存会代表理事)
(この文章の著作権はNPO法人京都古布保存会に帰属します。無断転載・引用を禁じます)
【参照サイト】
NPO法人京都古布保存会HP

NPO法人京都古布保存会FB



noteでの法人紹介です


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?