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住電HSTケーブル編 きちんと伝える

見える電線・見えない電線

「電線」という言葉から連想するのはどんな姿でしょう。配電線のように外から見える電線かもしれません。

しかし、電線は建物の中でも使われています。外から見える電線も、見えない電線も、街のいろいろな場所に張り巡らされているのです。

彦根城の天守は遠目からでも立派です

今回やって来たのは滋賀県犬上郡甲良町。彦根城から車で30分ほど走ったこの場所には、見えない電線、建物の中で使われる建設用電線・ケーブルの配送センターである「住電HSTケーブル 滋賀センター」があります。

みんな大好き!3品種!

こちらは、建設用電線・ケーブル(3品種と言われるCV、IV、CVVが6割)の配送センターです。

上からCV、IV、CVV

CVは電力用ケーブルで、住宅や商業施設をはじめ、さまざまな場所で使われています。
IVはビニル絶縁電線で、一般的に600V以下の屋内配線としてよく用いられています。
CVVは、一般的な制御用ケーブルです。
一言でまとめると、見えない場所にあるけれどとても身近な電線たちといったところでしょうか。

配送センターってどんなところ?

電線がさまざまな場所で活躍するためには、製造や加工、布設といったそれぞれの工程をつなぐための仕事があります。
今回の記事で取材する配送センターで行われているのは、まさに電線と現場をつなぐことそのものです。
お伺いした配送センター全体の敷地面積は4万4280平方メートルあり、なんと東京ドームとほぼ同じ面積なのだそう。

カラフルなドラムに新品の電線がずらり!

住電HSTケーブルの配送業務は、ざっくりと3つの工程に分けられます。
まずは、「伝える」工程です。全国8拠点ある営業拠点で多くのオペレーターさんが、取引先から受注した内容を配送部署へ手配します。
次に、「巻く・切る」工程。全国12ヶ所ある物流センターで、電線たちを受注内容に沿って切断します。
そして最後に、「運ぶ」工程で、配送ドライバーさんに製品を渡します。

きちんと伝える

まずは、「伝える」工程からみてみましょう。
物流センターの機械室には、プリンターやモニターが並び、営業所からデータ送信された受注伝票が1分ごとに更新され、続々と届きます。
中には「当日の午後に現場へ届けてほしい」「次の日の朝までに必要」など、急ぎの依頼が来ることもあるそうです。

伝票の紙は丈夫で、力いっぱい破こうとしてもびくともしません。
荷物にそのまま貼って運ぶ際にも、どの注文かわかるので安心ですね。

ちなみに、夕方のうちに荷物を積んで次の日の朝までに届けることを「ハヤブサ」と呼ぶのだそう。

ケーブルごとに太さや長さもさまざまです。
営業拠点のオペレーターは、注文された電線の在庫があるか、どの物流センターから出庫するか、荷姿(荷物の形)や重量から配送のトラックはどんな種類を手配するかなど、条件をパズルのように組み立てていきます。
この業務は時間勝負であるとともに、集中力と経験値が欠かせません。

モニターを見ても、素人には記号にしか見えません。まさにプロの技!
経験のあるオペレーターさんはこれらをわずか1~2分で入力し、ケーブルの重さやそれを巻き取るドラムの大きさといった荷姿まで確認します。

電線は最後に入る

今回の取材でお世話になった皆さん
写真後列左端が中村さん、右端が垂井さんです。

実際に働いている中で、これまで印象的だったお話を伺いました。

中村さんのお話

「工事の工程上、電線が現場に入るのは最後です。
なので必要なケーブルの品名、サイズ、数量が分かるのが納期の直前になることもあります。
私が関わった仕事の中でも大きなやりがいを感じたのは、大阪にある食肉市場の整備工事です。
このときは、公共施設での利用とのことで、エコケーブル(環境配慮型電線)を、銅量にして10トン分納品することになりました。さまざまな長さの電線・ケーブルをパズルのように組み立て、クレーン付きトラックを確保し、納期の3週間前に納品の準備ができていました。

便利なクレーン付きトラックは前々からの確保が大事

しかし、1週間前に数量が大きく変更になったんです。
これにより、細かく組んできたパズルのピースが足りない状態になってしまいました。元から台数の限られたクレーン付きトラックが足りず、在庫もひっ迫している。どう調整するか頭を抱えました。

そこで、当初契約分の数量までは当社の責任として、足りない分は別途、他のメーカーで用意してもらうこととし、なんとか間に合わせることができました。
今回のように、日々動いている市場や病院などは、整備工事のために働きをストップできません。そのような場所にケーブルを納めるのは緊張感がありますが、その分やり甲斐も大きいです。」

垂井さんのお話

「今年で入社12年目です。
印象深いのは、2011年に東日本大震災が起こった際、事故のあった原子力発電所を復旧させるためのケーブルを手配したことです。
震災が起きてから2週間後、銅量にして100トンのケーブルを全国の倉庫からかき集め、道路や流通が混乱していたため、自衛隊のヘリコプターを使って納入しました。一刻を争う状況に、復旧最優先で集めたため、ほかのお客様には事情を説明してご理解いただけるようお願いをしました。

予想できない状況に対し、製造・物流・営業が一体となって取り組み、多くの方に役立つ仕事ができたと感じています。」

市場や病院など、さまざまな場所で働く見えない電線。
これを現場へ導き、つなぐのが物流の仕事です。
なんと言ってもチームワークが欠かせません。後半も、これまであまり知られることのなかった現場のお仕事を取材していきます。

INTERVIEW DATE:  2023/5/12


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