【EDH】ギランラ/東の樹の木霊

1. デッキリスト

https://www.moxfield.com/decks/Yv-Mfz0eDkKCuDyKN4f_RQ
(MOXFIELDは随時更新中)


2. なぜマーウィンやセルヴァラではないのか

1ターン目に1マナクリを出し、2ターン目にギランラが出てきても戦況への影響は微々たるもの。マーウィンやセルヴァラならば、3KILLも視野に入るのに、なぜ1マナしか出ない弱いジェネラルを使うのか。ちなみにファンデッキを組んでいるつもりではなく、自分の中では十分に「勝利を追求した構成」である。このデッキに至るまでの経緯を理解しなければ、このデッキがタッサの神託者やログラクフがはびこる卓でもちゃんとゲームになることを理解できない。

まず、マーウィン・セルヴァラについて簡単に説明する。マーウィンは自身に激励などの巨大化スペルを使ったりエルフを並べて、セルヴァラは低コスト高パワーの生物(ファイレクシアン・ドレッドノートなど)を使うことで、3ターン目に膨大なマナを捻出する。ここからリシュカーの巧技や威厳の魔力でドローし、クリーチャーをアンタップする呪文や、クウィリーオン・レインジャー+ワイアウッドの共生虫でマナを増やし、更にドロー。ドローとアンタップ手段を繰り返し、最終的には威圧の杖やティムールの剣歯虎が絡む無限コンボで勝利する。比較的安定して3ターンキルを狙えるのが特徴。一見すると強そうなデッキに見える。しかし、EDHでの強いデッキは3KILL出来るかどうかが要件ではない。

残念ながらマーウィンやセルヴァラは召喚酔いという最大の制約がありターンを返す必要がある。この1ターンの間に、対戦相手は除去を打つことが出来るし、金粉のドレイクをサーチして逆に自分の展開に利用することが出来る。対処できなければ即死もありえるので、対戦相手はチューターを使ってでも処理する。そのため、実戦では対戦相手3人から狙われる可能性があるので、3ターン目にマーウィンやセルヴァラがマナを出せるケースは少なく、無事に帰ってきても、アンタップスペルに対応して除去されたり、リシュカーの巧技をカウンターされて続かなくなる。仕掛けるターンが分かりやすいので相手からすると構えやすい。リソースを使って仕掛けようとして、除去されているうちに、自分は手札が尽きてしまい、妨害カードを使っていないプレイヤーは着実にリソースを増やす。こうして対戦相手の場が整った後に、召喚酔いのある統率者で仕掛けようとしても…いつまでもコンボが決まるタイミングがない。

更に悪いことに、2ターン目に出た緑の暴力的な統率者が除去や妨害の的になることで、次のプレイヤーのコンボが通りやすくなる。EDHはかなり慣れて色んなデッキの仕掛けに詳しい人でないと、盤面を優先して処理する傾向があるので、プレイヤーのレベル差がある卓だと余計に分が悪い。

2ターン目に絶対に妨害されてしまうカードを使ってテンポロスをするくらいならば、逆に絶対に妨害されないカードで着実に展開し、更に自分に妨害を使われないことで相対的に他のプレイヤーのコンボの抑止力とする。これこそが重要と思った。オープンリーチは全員がチューター経由で対処するので通らない。早いターンでしかけるのであれば、例えばむかつきのようなターンをまたがないもので奇襲をかける方が向いている。

こういった漁夫の利的な思考は、ある程度の妨害が飛び交う卓では大事な思考。

最適化されたデッキ3人の中に龍王アタルカを統率者にした初心者が混じるとどうなるか?龍王アタルカのことは全員が無視をして、妨害をうちあって勝手に消耗する。そうこうしているうちに、耕作、爆発的成長で着実にマナを伸ばし、アタルカやファッティが並んで誰も対処できなくなる…こういった試合展開は、一度くらいは経験があると思う。勿論多くのゲームでアタルカは、“ついていけなくて”負けるわけだが、このデッキはそういう場面でついていける程度には妨害やマナ加速を考えている。

全員が他人の妨害など考えずにロケットスタートを切るだけのデッキだった場合、このデッキに勝ち目はない。その場合は自分も最速を追求したデッキ(今ならばログラクフ系デッキ)を使って、ダイスロールに勝つことだけを考えればよい。卓に一人か二人は、カウンターを構えたり、耳の痛い静寂やエメリアのアルコンを置くデッキがいることが前提。そういう妨害カードを、序盤の自分の展開時にはあまり受けないこと、これが大事。


緑単のデッキを使っているうちに、なんとなく勝てるパターンというのが見えてきて、

① 相手のコンボを別の対戦相手が処理してくれる
② ゲームが長引いてグダる
③ コンボではなく、適当に緑のパワーカードを叩きつける
④ そのまま殴り倒すか、豊富な生物サーチから孔蹄のビヒモスで倒す
⑤ たまにグダっているうちに除去されずに残った生物からコンボが決まる

こういう感じである。素早く突撃するだけがすべてではない。

だからこそのギランラ。

ギランラはヤバイヤバイと叫ばれてピン除去を受けることはない。そのため対戦相手の除去を無駄に吸って他のプレイヤーのアシストをすることはないし、自分が除去を受けない分、それは他人に回る。緑のパワーカード(進歩の災い、コグラ、威厳の魔力、リシュカーの巧技)は基本的には6マナ前後は必要で、初手の7枚だけではリソースが足りないので、森の知恵や調和などのドロースペルを挟む必要があるが、手札外から出てくるギランラの地味なアドバンテージも染みる。6マナ以上のカードも多いので、能力の誘発も十分期待できる。

ちょっとゲームが長引いて、6マナ前後のカードが使えるようになると、このデッキの本領発揮である。軽量化されたコンボデッキと違って1枚1枚のカードパワーが高く、かといって全てをカウンターで裁くことも不可能なので、どんどん展開できる。またゲームの特性上即死コンボへの牽制が大事なので、ターンが経過するほどに、少ない妨害カードを即死しないカードに切りたくなくなる。カウンターは自分のコンボを通すための大事なサポートでもあるので、死なない限りは出来るだけ他のプレイヤーに処理を任せたい。そもそも、最適化されたデッキでは、生物を打ち消せるカウンターは少なく、いわゆる“スタックス”と呼ばれる、耳の痛い静寂やエメリアのアルコンなどのコンボデッキを減速させるカードたちは、緑単の特有の動きである、マナ加速をして、基本土地を並べて、ファッティを出す行動を想定していないので、素通りになることが多い。これが狙い。

ちなみに、緑単にこだわる必要はあるのかというと、多分同じコンセプトで組むなら緑単が良い。過去にはギランラのこの特性を生かしつつ、どうせほとんど使わない共闘先をクラムにして、激情の後見や偏向はたきなどの緑マナしかなくても使える妨害カードを足してみたのだが、どうもうまくいかない。これは、このデッキが軽量でカードアドバンテージを稼ぐことに優れていないので、序盤から相手の即死コンボを止めるためにリソースを切ると、マナを伸ばしきれなくなるし、緑マナが沢山出るカードや、緑単の方が機能するカード(クウィリーオン・レインジャー、アロサウルス飼い、ニッサ)が弱くなるほどのメリットもない。繰り返しになるが、自分で全部処理できるようになる必要はないので、長所を伸ばしつつ立ち回りで補うのが理想的な構築と思う。


3. ゲームプラン

このデッキには確かに東の樹の木霊を交えたコンボや、アシャヤの無限コンボがある。しかしストレートでコンボを狙って勝てるデッキではないのは明白。まずはリソースの拡充を狙うべきである。森の知恵のような継続的なアド源や、出しておかないと死んでしまう溜めこみ屋のアウフなどがなければ、2ターン目にギランラ。まず統率者を使って、しっかりとリソースを増やす。

必ずしも爆発力を優先すべきではないのは上記の通り。対戦相手の妨害も考えて行った方が良い。例えば3ターン目に5マナ出るとして

・歩行バリスタ X=2でティムナを除去する
・調和

この二択ならば、多くの場合は後者を選ぶべき。妨害を器用にうちながら展開は出来ないので、自分がなるべく的にならないように気を遣い(対戦相手同士での妨害をなるべく誘発させ)、マナ加速とドローを進めた方が勝てる可能性が高い。ティムナに対して除去を使おうとしてカウンターされる。これは最悪のゲーム展開で避けなければならない。

調和はもちろん、森の知恵、気前の良い贔屓筋、数多の声など中堅どころのリソースを増やすカードはキープ基準になるし最初のサーチでアクセスしたいキーカード。緑単ではどうしても3-4マナ帯のリソースを増やすカードが不足しがちになるので、今回はニッサの勝利まで採用した。持て余す土地は東の樹の木霊で全部出せるし、運よくPWニッサと揃うと、ガイアの揺籃の地、ニクソス、さびれた寺院とサーチできるので勝利は目前。


アーティファクトを絡めたデッキ、特に黒絡みやログラクフデッキは、圧倒的にスピードが速く、一人の青いプレイヤーがカウンターで裁ききれるとは限らない。そのため、溜め込み屋のアウフ、刻み角をサーチして減速を狙うのはあり。黒いデッキは、いくらリソースが枯れてボードがズタズタでも、隠し持っていた魔力の櫃+暗黒の儀式→深淵への覗き込みで即死チャンスがあるが、アウフか刻み角がいれば大量ドローからマナを増やしにくいので決まりにくくなる。理想的には深淵への覗き込みになるべく届かなくなるように、どこかで進歩の災いでマナベースを潰して、殴って、トドメを刺したい。

一番狙いやすい勝ち手段はビートダウンである。そのためコツコツ対戦相手を殴る必要がある。しかしライフを追い詰めて除去を使われそうならば避けるべき。均等に殴るとか、そもそもアタックしないとか、あくまで自分のリソース維持が最重要。最後の一押しは孔蹄のビヒモスでも良いわけだし。

と色々話した上で、最後に出てくるのがコンボの話。

まずは東の樹の木霊関連。

緑の大量ドローカードは、大量に土地を持て余す欠点があったが、それらを効率よく場に出して、あわよくばニッサや絢爛なビヒモスと組み合わせてマナ加速のように使い、チェインコンボ風の動きが出来る。“風”となるのは、そのまま完走は難しいからである。あくまで一気に展開するだけ。一応後述するコンボにつながる可能性もあるが、土地と手札が充実することでリセットされてもすぐにリカバリーできる状態になるのがポイント。似たようなデッキで、逆嶋+東の樹の木霊の無限コンボを狙うデッキがあるが、このデッキではそもそも東の樹の木霊で無限を積極的に狙っているわけではなく、展開力を上げるカードとしての使用が主。大して使わずに勝つゲームの方が多いくらいで、それほどまでにデッキ内に入っている緑の高コストのカードは単品での制圧力が高いとも言える。


また、搭載されている無限コンボは以下の通り

① アシャヤ+クウィリーオン・レインジャー+α
② 覚醒根の精霊+ガイアの揺籃の地 or ニクソス

+αは水蓮のコブラ、2マナ以上出るマナクリ、繁茂など。アシャヤがいるとクリーチャーに繁茂をつけられるし、絢爛なビヒモスやニッサでマナが増える

いずれも無限マナコンボになるのでサーチカードからナイレアかバリスタに繋いで勝ち。バリスタは自分のアウフで止まる可能性があるので、ナイレアを共存している。ナイレアでデッキを全部掘った後に、永遠の証人→破滅の終焉などでも勝てるので、一見するとバリスタは不要に見えるが、そもそもバリスタは緑で貴重な除去であり、マナフラッドを受けて盤面を制圧できるのでバリスタ自体も必要なカードだったりする。

ちなみに覚醒根の精霊は、無限マナの後に土地を5/5にして殴るプランもある。正直なところコンボはリソースが余った時に狙うくらいなので、ほとんどゲームに貢献しないが、せっかく東の樹の木霊で大量展開が都合よく進んだ時に、ダメ押しするカードが足りないと勝ちきれないので、使用頻度が低くても無限コンボは必要と思う。


4. 東の樹の木霊を使う上で重要なテクニック

★クウィリーオン・レインジャー

ギランラをアンタップすることで、6マナ以上の呪文を唱えたときのドロー枚数を増やせる(ギランラのマナは使った分だけ誘発する)。

また、手札に軽いパーマネントがなくても、

①クウィリーオン・レインジャーを出す
②木霊誘発
③スタックでレインジャーの能力起動(森を戻す)
④木霊解決、今戻した森を出す

ということが可能。マナクリを起こせば地味にマナが増える。木霊の誘発能力のスタックの乗せ方は、レインジャーに限らず大事な要素。

ただし、アシャヤとのコンボを考えると能力の温存も大事で、使いどころは要検討。共生虫もいるので、再利用は可能。

クウィリーオン・レインジャーは能力を使うほどに土地が並ばなくなるのでリセットに弱くなって長期戦で不利になるのだが、その欠点を東の樹の木霊がうまく補ってくれる。


★威厳の魔力

キーカード。緑はクリーチャーサーチが豊富だし、木霊の能力も誘発するのでクリーチャーであることがとても大事。

威厳の魔力は、木霊の能力とどちらを先に解決するかによって、

・パーマネントを置く→ドロー
・ドロー→パーマネントを置く

を使い分けられる。大抵は先に引いた方が良いが、森林の怒声吠えを持っている場合なんかだと前者が良い時もある。

マナが伸びたら、とにかく威厳の魔力にアクセス。このデッキでは、瞬間的にマナを増やす手段は非クリーチャー呪文が主。木霊の能力で森をどんどん置くとか、ガイアの揺籃の地・ニクソスの大量マナもそうだし、土地をアンタップさせる手段としてのカンデラ、大地の知識などもそう。サーチカードでアクセスできないので、引くしかない。

マーウィン/セルヴァラでは、クウィリーオン&共生虫でマナを一気に増やせたのでクリーチャーサーチがチェインコンボの要になっていたが、このデッキでは大量ドローで上記マナソースに何とか辿り着くしか方法がない。

①威厳の魔力で5-6枚引く
②引いたニッサで森を起こして大地の知識を出す
③場にいる生物を寝かせてリシュカーの巧技
④ガラクを唱えて、ガイアの揺籃の地をセット、さらに…

といった感じで繋がってくれることが理想。

もちろんこれは上手くいった場合の話だが、代替カードは沢山あるので結構繋がる。勝ちきらなくても、土地が並んで、高パワーの生物が並んで、手札も潤えば、妨害が飛んできても次がある。

威厳の魔力は沢山入れたいが、残念ながら1枚しか入らない。長期戦では、威厳の魔力の使用後に生物サーチでリソースを増やせるカードが欲しくなるが数多の声では力不足なので、頂点壊滅獣まで採用した。


★土地のセット権は、なるべく使わない

土地は土地をおけるカード

と言うと訳が分からないが、木霊がいるときに土地をセットするともう1枚置ける。地味にマナが増える。とにかくマナを増やすことが難しいので、出来るだけ損しないようにしたい。土地を2枚出せないときは先にドロースペルを使った方が良い。


★土地よりもクリーチャーのマナから使う

土地は、絢爛なビヒモス、ニッサ、繁茂・楽園の拡散でマナが増える可能性がある。生物も一応、マナ増加手段+大地の知識やアシャヤでマナが増えるが限定的。まずは生物のマナから使う。


5.最後に

マナ加速してファッティを使う頭の悪いデッキだが、その根幹には多人数戦特有の妨害のやり取りを見据えた巧妙なコンセプトがある。ガチ卓に持っていっても自分の展開がしやすいし、放置されている間に手に負えない状態になるというような、漁夫の利も狙える。

たぶん、チェインコンボを強化するなら、青を入れた方が良い。マナを増やす手段として流浪のドレイクなどのフリースペル生物、粗石の魔道士やアーティファクトサーチ→Candelabra of Tawnosの選択肢が増え、生物サーチを生かして格段に繋がりやすくなる。つまりはメジャーな木霊&逆嶋。しかし、コンボを一番に考えるのであれば、もっと早くて除去が効きにくいなど妨害しにくいコンボは沢山ある。高速コンボデッキにはないメリットや、長期戦を視野に入れた構築こそが大事。また、自分が緑単に拘る理由は、東の樹の木霊が生存して都合良くコンボに入ることは実践では頻度は低く、コンボパーツがダブついてもたつくよりも、殴り性能を維持したかったたため。青や黒の軽量化されたコンボとは違うギミックがあって、それなりに勝てるから、脳筋デッキも一つくらい持っていると面白い。

2023/8/31追記
最近移転した自分のブログに書き直しました。今でも愛用しているデッキ。良ければこちらもご参照下さい。

https://denneko.online/gilanra_kodama/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?