なぜ現場監督を続けられないのかの考察

建設業界において建築の新築工事の現場監督を10年以上続けてきた。

大抵3年ほど経つと3割程しか残らない。
やめた後の進路はわからないが施工管理をやめた人も多いだろう。

現に私の同期も9人いたが、今となっては私ともう一人しかいない。

さて、なぜ現場監督を続けれらないのかについて私の私見だが、おおまかに下記のような理由かと思う。

1.拘束時間が長い
2.外仕事が辛い
3.成功体験が少ない
4.コミュニケーションが辛い
5.必要な能力が多いわりに門戸が広すぎる

まあ概ねこんな理由が多いように感じる。
各項目について具体的に。


1.拘束時間について
工事の時間というのは近隣の協定・環境にもよるが月~土、祝日も工事する場合が多い。
また8:00~17:00が工事の稼働時間となる。
ただ現場監督の就労時間はもちろんそうはならない。

以下、タイムスケジュールの一例だが

7:00 現場事務所着、準備・確認
8:00~ 朝礼、段取り、現場巡回
12:00~13:00 昼休み
13:00~13:30 昼打合せ
13:30~16:00 事務所作業
16:00~18:00 現場巡回、現場片付け、施錠
18:00~ 事務所作業

という感じ。終了時間はあえて書かない。
19:00の時もあるし22:00の時もある。
その日の仕事量次第である。
7:00~終わるまでということで拘束時間は長くなりがち。


2.外仕事が辛い
工事管理とは言え、やはりフルに体を動かして仕事はしなくても外での活動は切っても切り離せない。
どんなに暑くても、どんなに大雪が降ろうと逃れることはできない。
特に大雪が降った日なんかは除雪しないと仕事にならない状況の為、半日以上を除雪に費やしてしまう日もあった。
肉体的に厳しい故にやめてしまう人も多いと思われる。


3.成功体験が少ない
建設業というのは「できて当たり前」という世界である。
できるのが当たり前だから、出来上がったものを称賛されることは非常に少ない。
その割に「できていない事」に対しては非常に厳しい。
(もちろんできない事には次の工程に進めない・全体の工程を守れないに繋がるから当たり前といえば当たり前なのだが・・・。)

若いうちは褒められる機会より怒られる機会が圧倒的に多い。
仕事に求められる知識がまだまだ不足しているわりに難しい仕事なんか預けられた日にはそれはそれはうまくいかない。
そうやってできない日々を続けるほど、自信は失い仕事をミスし自信を失い仕事を・・・、という負のサイクルに突入してしまう。
この状態、平たく言うと鬱です。
そうやって若い人はつぶれていくのです。

私の経験上、まじめでため込むタイプほどこの傾向が強いようです。


4.コミュニケーションが辛い
この仕事は本当にいろいろな人と接する機会が多い。
上は協力会社の社長や重役から下は中卒の職人まで。
相手にする人の質の幅がえらいことになってるのである。

別に中卒だからどうとかいう気はありませんの悪しからず。
学歴なくても賢い人はたくさんいるし、学歴あっても賢くない人もたくさんいる。
これは「お勉強ができる賢さ」ではない。
ただ、現状現場監督になる人は大卒が多いが、圧倒的に今まで付き合ってこなかった人種の巣窟に放り込まれるわけです。

この環境の変化についていけない人も少なからずいるのではないかなあと思う次第。

施主・監理者・社内の上司、部下、協力会社の役員、現場の職長、職人などなどいろいろな立場や関係性の相手にそれぞれうまく付き合っていけるコミュニケーションスキルが必要なわけですな。


5.必要な能力が多いわりに門戸が広すぎる
先ほどまでの項目でも必要な能力・耐性が少なくないが、工事管理が本業なので工事管理に対する知識・経験を備えていないともちろん話にならない。
建物を建てるというのはそれだけでもたくさんの工種があるわけだが基本的な部分でもある程度備えていないと話にならない。

現場に来る職人はいわばその工種を専門でやっているエキスパートである。
ただ現場監督はそのエキスパートたちとそれぞれに打合せしなければならない。
現場監督はオールラウンダーでありエキスパートでなければならない。
広く深くというやつですね。

それなのに現場監督は離職率が高いから志望すれば本当にだれでもなれる。
仕事の内容もわからないままこの仕事を始めたりするもんだから、ふたを開けてこの仕事だったらそりゃやめるよね、という話である。
数うちゃ当たるをまさに実践しているわけで、掃きだめの鶴を延々と探している業界。
それが建設業。
ちょっとだけ給料がいいが自給換算すると悲しくなる。


ということで、簡単に列挙してみました。

個人的には工事というのはプラモデルで例えるとわかりやすいというか、設計者が書いたプラモデルの箱(設計図)の説明書(施工図・施工計画書)を作成し、実際に作るようなものだと思う。
自分が説明書を作成し、その通りのものができるのは単純に面白い。
ただそこに至るまでの道が少し辛いのかなと思う。

若い人が続けていける環境造り・構造造りとかも考えていかなければと思う次第です。


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