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耳が聞こえる人間が世界ろう者会議に行った話

7/11〜7/15まで、韓国済州島で開かれた世界ろう者会議(World Federation for the Deaf)に参加してきました!
4年に1度開かれるこのビッグイベント、お隣の国韓国での開催ということで、これは行くしかない、と思い切って1人で行って参りました。
参加者がほぼDeafの中、通訳者でもない聴者(耳の聞こえる人)はほぼおらず、毎日新鮮な日々を過ごしました。そんな聴者が体験した5日間をまとめましたので是非ご覧ください。

行こうと思ったきっかけ

1月にシンガポールのろう協会をはじめ、ろう者の方々とすごく親しくさせてもらい、世界ろう者会議のことを教えてもらいました。
絶対楽しい!僕も行くからレイコも絶対行った方がいい!と言われて参加を決めましたw

参加者について

およそ2000人。開催地が済州島だったこともあり、特に韓国人はかなり多かったです。日本人も結構いました!
他にもアメリカ・イギリス・オーストラリア勢が多い印象でした。

方山が出会った国の人たち

- インド
- アメリカ
- イギリス
- アイルランド
- スペイン
- フランス
- インドネシア
- エスワティニ(スワジランド)
- 韓国
- シンガポール
- エクアドル
- コロンビア
- オーストラリア
- サウジアラビア
- UAE
- オランダ
- オマーン
- ノルウェー
- 南アフリカ などなど・・・おそらくこれも一部。

ちなみに参加者のおよそ95%がDeaf(この記事では耳の聞こえない・聞こえづらい人のことを指します)。およそ5%が通訳者といった比率。

使用言語について

参加者同士の会話は、基本国際手話。自分も含め、国際手話があまりできない人は、スマホのメモで英語で筆談したり、翻訳アプリでお互いの国言葉に翻訳して見せたり。
韓国開催だったので韓国Deafが非常に多かったのですが、韓国手話と日本手話はとても似てるので、韓国人とはある程度日本手話も通じました。
お互いの国の音声言語がわからなくても、手話で通じるので不思議でした。

毎日のスケジュールについて

朝10時ごろからおよそ30分間のセッションを、部屋を行き来しながら見るスタイル。
ちなみに会場はICCJejuというとても広いコンベンションセンターでした。

ICC JEJUの外観。
ICC JEJUの外観。

セッションは国際手話で行い、スクリーンに韓国手話の通訳。その他の言語の場合は、スクリーン右に国際手話、左に韓国手話。

セッションの様子。スクリーン中心でプレゼンターが国際手話を行い、両脇に韓国手話。
セッションの様子。この時はプレゼンターが国際手話で、両脇に韓国手話。

ちなみに音声通訳もしてくれました。音声は英語ですが、プレゼンターが国際手話の場合のみ。他の国の手話の場合は、音声は韓国語になってました。

夜は「The Cliff」という近所のオシャレなPUBでちょっと安くお酒を買えるので、そこが溜まり場みたいになってひたすらおしゃべり(手話べり)。CliffはDJが爆音で音楽を鳴らしてるんだけど、手話だから音のうるささは全然気にならないし、声を張っておしゃべりしなくて良いので声も枯れないしとても楽でした。

テラスのようなところにたくさんのふわふわの椅子が並べてある。
おしゃれすぎ。TWICEの曲のPVにも使われたことがあるみたい。

Cliffは夜12時ごろになるとこんな感じでいつも超満員でした。

混雑するCliff
Cliffに集うとんでもない量の人。ほぼ全員Deafです。

ホテルに戻るのは毎晩夜3時ごろw 全員おしゃべりすぎて、話が終わらないんですよ。もう毎日クタクタで寝不足だったけど、とても楽しかったです。

印象に残ったセッション

韓国の盲ろう者のセッション

先天的に耳が聞こえず、後天的に目が見えなくなった韓国の盲ろう者によるスピーチ。自分がtactile sign language(触手話)を取得してから世界が広がり、人生において挑戦したいと思うことが増えたという内容でした。国際手話でゆっくりながらも完璧に話していて、内容が本当に胸を打たれるものでした。参加者もかなり感動していて、感動を足をドコドコさせながら振動で伝えてて、それもとても良かったです。

壇上に盲ろう者と通訳者、数人の人物。
セッションが終わった時の様子。

インドネシアのろう協会のセッション

インドネシアにおけるろう者についてのセッション。インドネシアは人口が多い分Deafも多くて、Deaf界隈からも割と注目されてる感じでした。
Cliffでたまたま一緒に飲んだ70歳のUKのおじいちゃまも、インドネシアのDeafの子ども向けにボランティアをしていると言っていて、国際的なつながりを感じました。

日本のLGBTQろう者によるセッション

日本のLGBTQろう当事者かえでさんによる、日本で2025年に行われるデフリンピックにプライドハウスというLGBTQフリーな場所を作ろうという内容のセッション。プライドハウスの歴史からふれ、自国での取り組み、そして必要性を丁寧に説明していてとてもわかりやすかったです。

壇上にプレゼンター。座席に座っている人がレインボーフラッグを掲げている。
セッションの様子。レインボーフラッグ!

出展ブースについて

セッションだけではなく、Deafにまつわるプロダクトのブースもいくつか出展されていました。

字幕グラス

喋った内容をARグラスで文字に翻訳してくれる、中国・韓国で開発されてる機械。精度もとてもよかったです。

Deafの子供向けプロダクト

Deafの子供に向けた教育プロダクトがちょいちょいありました。ブースを出していたのはイギリスとノルウェーの会社。早いうちからの言語取得が大事であるという認識のもと、ARやゲームなど最新技術を駆使していました。
YouTubeに動画を載せてるので、是非ご覧ください。

3Dアバター手話

韓国の会社が出展していた3Dアバター手話。国の中にいくつも手話があるような国だと国内で翻訳する必要があるため、そういう意味で3Dは役に立つのだそうです。この辺の考えはかなり国によってくるのかもしれません。

気づいたこと

国際手話の必要性

実は国際手話ってもっと限られた場所で使われているものだと思っていたんです。しかしろう者会議ではメジャーな感じで使われていて、ASL(アメリカ手話)をいくつか覚えていった自分は、途中で昼間とかに国際手話をこっそり勉強しましたw
2025年デフリンピックにて国際手話の人材がもっと欲しいというのも頷けます。

Just go explore into Deaf world. There are many funs awaiting for you to discover.

シンガポールのろうの友人に、ろう者会議を勧められた時言われた言葉です。当時の私はこの言葉の意味があまりわかっていませんでしたが、今ならよくわかります。
とにかく、とにかく楽しいんです。人と出会うのは割と好きな方ですが、ここまで楽しいとは思いませんでした。伝えたい気持ちが溢れてるというか。あー、何が楽しかったのか言語化するのが難しいwこれは是非体験してみてほしいw

出会いの可能性

ICC内のコンビニの前でたまたま隣に座った人は、日本に大使館すらないエスワティニ(スワジランド)という国の方でした。
最終日のディナーの席でたまたま隣に座った人は、南米エクアドルから2日かけて済州まで来た方でした。
同じくディナーで一緒になった韓国の方とは、手話でお腹が痛くなるまで笑い合いました。
今回の旅の出会いは、Deafというキーワードがなかったら絶対に出会えなかった国の人々ばかりで、本当に貴重でした。

海外のDeafの雇用について

一人のDeafに名刺を渡したところ「僕もこの会社で働けるの?」と聞かれ、そういう受け取り方もしてもらえるんだとはっとしました。
うちの会社はリモートOK、チャットOKなので、優秀な海外のDeafもこれから遠方だろうが雇用したいなと感じました。

最後に

最初に自己紹介をするとき、自分は聴者であるということは必ず伝えていました。そんな聴者の自分がDeafのコミュニティに足を踏み入れることを心配していましたが、みんな優しく迎えてくれて、本当に本当に感謝しています。
Deafの世界を知った聴者の自分に何ができるのか、Deafをはじめとした聴覚障害者のための会社で何をすべきなのか、色々と見据えることができました。
各国との強固なつながりもたくさんできました。具体的な案件を進めたいという話も出てきました。
もしこの記事を読んで、2025年デフリンピックに向けて弊社と協業したい!という会社様がいらっしゃいましたら、是非弊社お問い合わせフォームからご一報ください。
あ〜、1週間前に戻りたい!楽しかった!

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