この、虫けらどもがぁっ!

虫ケラ。虫と螻蛄(オケラ)。並べる理由が解らない。
一般に、虫けらのケラは、オケラのことではないとされる。
「け」は強調辞、「ら」は複数形で、虫け等、を意味すると云う説もある様だ。

そう云えば、動植物の内で接頭辞に「御」を付けるのは、御米、御魚、御馬、御蚕、御螻蛄の5種しかない。(本当か?)
もっとも、「螻蛄」はこれだけでオケラとも読むらしい。

では、「虫」とはなんなのか?
広義の虫、と狭義の虫、がある。
と、云うより、超広義の虫、広義の虫、狭義の虫、極狭義の虫、がある。

超広義の虫、は、全ての動物を指し示す。
字は、「蟲」。本来、蟲と虫は、異なる字義だった。
全ての動物を、裸蟲(人類)、毛蟲(獣類)、羽蟲(鳥類)、鱗蟲(魚類、爬虫類)、介蟲(亀、貝、甲殻類)、に分けた。昆虫は、どこだ?
更に、それらを超越する存在の虫もいた。腹の虫、とかである。
現在では、名前に「虫」の字を入れる人は稀である。だが、奈良時代や平安時代に虫麻呂さんとかがいたのは、そう云う字義もあったからではあるまいか。

広義の虫は、爬虫類、両生類、節足動物その他、諸々、である。
だから爬虫類も両生類も、蜥蜴、蛇、蛙、の様に虫偏である。
そして日本語での、真なる虫は、マムシ、であったらしい。真虫、蝮、である。

狭義の虫は、爬虫類、両生類は除かれる。節足動物その他、である。
現在の用法である。

極狭義だと昆虫類のみになるが、そこまで狭めなくても良いだろう。

では、「けら」は何か?
「けら」自体が、虫を指し示していたと云う説も、ある。
その場合の「けら」の語源は、「から」。殻。脱皮する動物。
エビちゃん、蟹さん、ヤドカリさん、蜘蛛さんは、確固たるステイタスを得ていたので除外すると、主なものは昆虫類とヘビくらいしか残らない。
蠍は、琉球にはいるが日本本土にはいない。サソリの読みは刺す針に由来し、元々はある種の蜂を示していたらしい。
三葉虫は、平安時代の少し前に既に絶滅していた。少し前と云っても、奈良時代の2億4千万年くらい前。
「けら」が虫の意とすると、「虫けら」の語は、山岳、河川、島嶼、などの様に、似た字義を並べた熟語の様なものとなる。
だが「虫」の字に、「けら」の読みを付けたことはない様だ。

アカゲラ、アオゲラ、コゲラ、と云ったキツツキがいる。
この「ケラ」は、キツツキを意味する。
だが、その語源としては、ケラツツキで、虫を突つく、と云う意味だったらしい。
古くはケラは、「牙良」と書いていたこともあると云う。
 
ケラ、が「虫」を意味するのであれば、カワゲラ、トビケラの語源としても説明が付きやすい。

カワゲラ、トビケラは、オケラに似ているから・・・・と説明しているところもあるが、似てねぇよ。

なぜ、「けら」の代表種がオケラだったのかは、判らない。
英語で、フライ(fly)の代表種が蝿なのは、なんとなく判る。
オケラは、地下、地上、空中、水上、跳躍に、登るし鳴く、と云うことで多芸だったからなのか。この7つの行動が、螻蛄の七つ芸、である。
そして「虫けら」はこれらの内のいくつかの能力を、持っている。

蟲と虫が昔は別の字義だったことは前述したが、音も異なった。蟲は「チュウ」、虫は「キ」だった。
虫等(キラ)が訛って、ケラ、になったのかも知れない。

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