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超私的グルメ(17) 謎の蒸し饅頭

 以前新聞で読んだ笑い話に、こういう話がありました。幼稚園のおやつの時間に、先生が言いました。「今日のおやつはムシ(蒸し)パンです」。すると一人の園児が泣き出しました。「ムシ(虫)が入ったパンなんて嫌だ~」。”蒸す”の意味が理解できない幼稚園児なら、当然の反応かもしれません。

 私の母は料理上手な方だと思いますが、手作りオヤツなどは余り作ったことがありません。特に、小さかった頃に作ってもらった記憶はほとんどありません。大人になって、子育ても経験した今なら、この理由が良くわかります。子供が小さい頃には、そんな時間的な余裕が全くないのです。ましてや、経済的に裕福では無かった時代ですから猶更です。”オヤツ”という言葉は聞いたことがありましたが、定時(三時?)での”オヤツの習慣”は無かったので、一体オヤツというのは何なんだ?、と小さい頃には思っていました。

 久々の超私的グルメは、蒸し饅頭です。小3から小6まで住んでいた市営住宅のお隣には、弟と同級生の子供を持つご夫婦が住んでいました。私も時々、弟と一緒にお隣で遊ぶことがありました。お隣のオバちゃんは、ちょっとキツメの顔をしていて、子供心に少し苦手でしたが、料理上手で、よく手作りおやつを作っているようでした。

 お隣で遊んでいる時に、オバちゃんが「ちょっと前に作ったけど食べる?」と言って出してくれたのが、蒸し饅頭でした。小さめの蒸し饅頭で、小麦粉で作った皮はチョッと乾燥していて、中々噛み応えがありました。しかし、一口食べて印象が変わりました。「ウメー!」と思わず、心の中で叫びました。饅頭の中にはあんみたいなものが入っていましたが、それまでに食べたことの無いはじめての餡でした。

 普通の小豆餡なら直ぐにわかりますが、未だにあの餡が何で出来ていたのかわかりません。餡の色は白かったので、白インゲンなどで作ったのかもしれませんが、ポクポクした”粉吹きイモ”のような食感でした。ひょっとすると、ジャガイモだったのかもしれません。

 「こんな餡があるかな?」と思って”ジャガイモ アンコ”で検索すると、ジャガイモ餡というのがあることがわかりました。贅沢な材料が使えない半世紀も前の話なので、今回の検索で”謎の蒸し饅頭”の餡がジャガイモ餡である可能性が浮上しました。しかし、時間が経ちすぎて検証することができません。

 いつか「ジャガイモ餡の蒸し饅頭」を作って、記憶を呼び覚ましたいと思います。

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