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 半世紀ほど前、私が通っていた小学校が開校百年を迎えるので、記念行事が行われることになりました。私が通っていた当時の小学校には、木造2階建ての古い校舎が残っており、私が3-4年生のころまでは使われていましたが、その後使われなくなりました。職員室がある棟もも古くて、夜には近づきたくないような建物でした。

 校門を入ったすぐ右手には、小さな植物園みたいなのがあって、『さるすべり』や『なんてん』のように、植物の名前が書いた名札が木々に取り付けられていました。そのミニ植物園の中心には、大きな榎がそびえていました。

 開校百年に向けて様々な練習がありました。式典当日のための鼓笛隊の練習もその一環でした。勉強のできるリーダー的な生徒は鼓笛隊の先頭の役ですし、楽器のできる子は重要な楽器を任されました。本当は太鼓がやりたかったのですが、地味キャラの私にはそんな華やかな役は回ってきませんでした。私は勉強も楽器も出来ないので、その他大勢の縦笛(リコーダー)係でした。縦笛は人数が結構いるので、うまく吹けなくても、”エア縦笛”で何とかごまかせるので楽でした。

 百周年記念行事のために、子供達が歌う『開校百年のオリジナルソング』も作られました。「おじいさんが言いました♬ 校庭のあのでかい榎はね♪ お爺さんが子供の頃は♬ 背丈とちょうど同じだったよ♪ ・・・」が一番の歌詞でした。二番の歌詞は忘れてしまいましたが、何度も練習させられたのでメロディーはよく覚えています。たぶんこの歌詞は、お爺さんが小学生、つまり今から百年前のことを説明している歌詞であることが判ります。

 あれから半世紀が過ぎました。私もオリジナルソングのようなオジイさんの領域に足を突っ込んでいます。ずいぶん前ですが、実家に帰った時に散歩で立ち寄った小学校は、すっかり小綺麗になっていて、校門近くにあった榎も無くなっていました。もうあの歌を知っている人は数えるほどしかいないだろうなぁと思うと感慨ひとしおです。計算間違いしていなければ、今年が開講150年のはずです。開校150年の記念行事はある(あった)のでしょうか?

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