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お薦めマイナー本#13 『物理数学の直観的方法 』

 この本『物理数学の直観的方法』は、大学院生の頃に読み、衝撃を受けました。それまでの、応用数学/物理数学の教科書は、数式が並んでいるだけの無味乾燥な本でしたが、本書は数式の物理的な意味を具体例を挙げて説明している点が独特でした。

 物理現象をシミュレートする場合、複雑な物理現象を単純化した数学モデルの構築が必要です。この数学モデルは、一般的には偏微分方程式で表されます。例えば、電磁気学の基礎であるマクスウェル方程式は、いくつかの連立偏微分方程式です。この方程式にはrot(ローテーション;回転)やdiv(ダイバージェンス;発散)が頻繁に出てきますが、これらの記号(演算子)の持つ意味が直観的にわからなければ、現象の真の理解にはつながりません。本書では、rotやdivの直観的な意味が丁寧に説明されています。

 数学が得意な人から見たら、本書は数学的な厳密さが無視されていると映るようですが、まずは数式の直観的な意味を理解することが必要だと考えます。直観的な意味が理解できれば、厳密な数式も自ずと理解できるようになるでしょう。本書は、これまでの理系教科書に一石を投じた本として、歴史的な価値もあると思います。

 本書は理系図書としては珍しく、よく売れたので、理系図書の中ではそれほどマイナーではありません。私が持っているのは、地味な装丁の下記の初版本ですが、このあと第二版も出版されました。現在は、ブルーバックス本として出版されています。物理は理解したいけど、数学はチョッと・・・、という人にお勧めの一冊です。この数式はこんな意味だったんだ、と目から鱗が落ちるかもしれません。


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