私は根っからのへそ曲がりなので、”矛盾した表現”が好きです。矛盾とは、”二つの物事が食い違っていて、辻褄が合わないこと”を意味する言葉で、中国古典『韓非子』のなかの”矛と盾”の故事に由来します。
この話はよく知られたお話ですが、概要は以下の通りです。”どんな盾も突き通す矛”と”どんな矛も防ぐ盾”を売っていた楚の男が、ある客から「その矛でその盾を突いたらどうなるのか?」と問われ、答えに窮したという話です。この2つの事柄は二律背反で、同時には成立しません。どちらを肯定しても店主の説明は辻褄が合わないのです。
最初の話題に戻りますが、私の好きな矛盾した台詞には、次のようなものがあります。
①「僕にはもう、死ぬしか生きる道がない」
②「健康が一番大事だ。健康のためなら死んでも良い」
③「お付き合いを前提に、結婚して下さい」
これらの表現は、一瞬正しいように感じますが、よくよく考えると大きく矛盾しています。①では”生死”が矛盾していますし、②では”健康・死”が矛盾しています。③はあり得なくはないのですが、物事の順番が矛盾しています。
単なる言葉遊びなのですが、世の中矛盾だらけなので、こんな表現も面白いと感じるのでしょう。”正しい事”ばかりでは息が詰まります。人間は矛盾を楽しめる生き物なのかもしれません。
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