見出し画像

噓は文明の潤滑剤?

虚言癖きょげんへきは、虚言すなわち嘘を言う癖という意味になります。人が嘘をつくのは、何か隠したいことがあったり、周りの注目を集めたかったり、知ったかぶりをしたりと、何らかの理由があるのですが、虚言癖の人にとっては、嘘をつくことが日常で、呼吸するような感覚で嘘をつきます。

「私は嘘をついたことがありません」というのが大嘘なように、人は何らかの嘘をついた経験があるはずです。嘘をつくことは悪いことだとされていますが、”嘘も方便”という言葉があって、時には嘘をつくことで円滑に事が運ぶこともあります。

新進気鋭の歴史学者で、ベストセラー作家でもあるユヴァル・ノア・ハラリ (Yuval Noah Harari)さんは『サピエンス全史』のなかで、人類は”虚構(嘘)”を信じられるようになることで文明を築いていったと主張しています。様々な宗教で”死後の世界”のことが語られていますが、今生きている人は”死後の世界”は知り得ませんので、死後の世界は虚構ということになります。しかし、多くの人類は死後の世界を信じている(信じたい)ので、宗教が成立しています。これも虚構(嘘)を信じる能力が大きな影響を及ぼしています。

ホモサピエンスと一時期共存していたネアンデルタール人は、体力・知力共にホモサピエンスを上回っていたと考えられています。しかし、ネアンデルタール人は絶滅し、ホモサピエンスは生き残りました。さきほどのハラリ先生は、これは虚構を信じられるかどうかの能力の差だと主張しています。

ホモサピエンス(現生人類)も、生まれたての赤ちゃんの時は脳が発達していないので嘘をつけません。しかし、年齢を重ねていくうちに”嘘をつける能力”を身に付けます。しかし、逆説的ではありますが、嘘こそが人類繁栄のカギなのです。その時点では明らかな嘘でも、その後の工夫や努力で実現したことは数多くあります。飛行機やロケットはその最たるものです。

大昔、多くの人類は鳥類の様に飛べるとは思っていませんでした。しかし、少数の人類は”空を飛ぶという虚構”を信じて努力しました。その結果、飛行機が発明されて、人類は空を飛ぶことができました。また、宇宙まで飛んでいけるロケットもしかりです。

「嘘つきは発明家の始まり」なのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?