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偉人の別の顔#8 多言語話者・シュリーマン

ハインリヒ・シュリーマン(Heinrich Schliemann)は、ギリシア神話に登場する伝説都市・トロイアを発掘したとされる考古学者として有名です。彼の自伝『古代への情熱 』は多くの国で出版され、日本でも複数の出版社から出版されています。また、シュリーマンは江戸時代の末期である1865年に日本に来たこともあるみたいです。

シュリーマンは彼の自伝で、15の言語を話すことができたと語っています。世界には約7000の言語が存在していると言われていますが、日本人の多くが母国語である日本語しか喋れませんので、15言語というには驚きです。2つの言語話者をバイリンガル(bilingual)、3つだとトリリンガル(trilingual)と言いますが、それ以上はマルチリンガル(multilingual)またはポリグロット(多言語話者;polyglot)と言います。ちなみにpolyは”多くの”、glotは”舌”を表わすラテン語で、二枚舌ならぬ”多枚舌”を表わします。

現在最も有名な多言語話者は、カナダ人のSteve Kaufmannさんで20言語を話すことができます。20言語の中には日本語も含まれていて、YouTube動画で流暢な日本語を聞くことができます。YouTuberではありませんが、元日本サッカー代表のゴールキーパー・川島永嗣選手は、7言語を話せるそうです。川島さんは世界中でプレーをしていたので、他の言語と触れ合う機会が多かったことは想像できますが、それにしても凄いの一言です。また最近見たYouTube動画には、Kazumaさんという23歳の日本人が、8言語(+α)を使って海外の若者たちと交流しているものがありました。

シュリーマンの時代と違って現代は、オンラインの語学学習サイトや無料のYouTube動画など、語学を勉強できる環境が整っています。しかし、実際にはなかなか学習効果が上がらない現実があります。シュリーマンが記した自伝の中には、語学学習のヒントが書かれています。自伝の中で印象に残っているのは、”覚えたい言語で日記を書く”ということです。また、先生に語学を習う場合には、自分で作文した文章を先生に添削してもらい、修正した文章を覚えたそうです。こうして、覚えたい言語の概要を覚えたようです。

また、その言語を使う教会に通い、神父の説教をシャドーイングすることもしていたようです。とにかく語学は、集中して学ぶとある程度の成果が見込めるようです。シュリーマンは、語学の学習に給料の半分を使った?と記しています。

ここまでシュリーマンを持ち上げてきましたが、シュリーマンに批判的な本も複数出版されています。日本語でも、「 エーベルハルト・ツァンガー著、和泉雅人訳 『甦るトロイア戦争』 大修館書店、1997年」や「デイヴィッド・トレイル『シュリーマン 黄金と偽りのトロイ』周藤芳幸ほか訳 青木書店 1999年」などがあります。

これらの本の中では、シュリーマンが実は病的な虚言癖の持ち主であり、シュリーマンの自伝が虚偽に満ちていることを指摘しています。シュリーマンは幼年時代にトロイに関心を持っていなかったし、商売人としては詐欺師的性向の持ち主であったと書いています。これらの真偽については私にはわかりません。ただし、彼の考古学的な報告が全体としてはきわめて正確であったことに疑いはないようです。そのため、多くの考古学者はシュリーマンを高く評価しているのです。

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