#58 夏が始まっていた
7月。8月の前の月。
夏休みへの期待に胸を膨らませていたときのことを思い出す。
学校へと向く一歩一歩が休みの始まりに近づき、と同時に休みの終わりにも近づいていたのだと気が付いたのは10歳の時だった。
1週間しか生きられないセミを心の底から憐れんだときのこと。
決して多くはない選択肢を前に自由だった。
体を撫で、心を遠くに運んでくれるのはあのときも今日も同じ風。
今にも学校指定の青と白のプールバッグが追いかけてきそうだ。
昨日は頑張って8時に起きた。二度寝しようか迷ったけど、