量産型ザクは「実は一番最初にむずかしいことをしていたんだなって」『量産型リコ -最後のプラモ女子の人生組み立て記-』与田祐希(乃木坂46)&石田悠佳(LINKL PLANET)インタビュー!
●取材・文:佐藤朋樹 ●撮影:深田卓馬
●ヘアメイク:秋田あゆみ ●スタイリスト:中村絢
「深夜ドラマ×プラモデル」を掲げるオリジナル連続ドラマ『量産型リコ -最後のプラモ女子の人生組み立て記-』が、毎週木曜日、深夜24:30分より、テレ東系にて放送中です。
本作は、乃木坂46・与田祐希さんが地上波初主演をつとめた『量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-』、そのもうひとつの世界を描いた『量産型リコ -もう一人のプラモ女子の人生組み立て記-』に続くシリーズ3作品目で、“家族”をテーマに、久しぶりに実家に帰ってきたリコと、その家族のひと夏を描くホビー・ヒューマンドラマとなっています。
今回、電撃ホビーウェブでは、主人公・リコ役を演じる与田さんと、「矢島模型店」の看板娘・アオ役のLINKL PLANET・石田悠佳さんにインタビューを敢行。
クランクアップ直後で気持ちの高まるおふたりに、シリーズ最終章となる本作への意気込みや撮影現場の雰囲気、これまでの撮影で印象に残っているプラモデルについてなど、お聞きしました。
――『量産型リコ』3作目の製作が発表されたときや、出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?
与田:『量産型リコ』では毎年、共演者のみなさんやスタッフのみなさんと素敵な出会いができているので、「それが今年もあるんだ!」と思うと、すごく楽しみな気持ちが大きかったですね。リコの現場は大変なこともあるけど、そのぶん終わったときの達成感みたいなものが、すごく大きいんですよ。
石田:私も今作の出演が決まったときは、前作にもましてうれしかったです。「またやっさん(矢島模型店の店主役・田中要次さん)やリコさんに会えるんだ!」って。
――石田さんは記者会見で、クランクアップ後に号泣してしまったエピソードを話されていて、作品への思い入れの強さを感じました。会見でも共演者のみなさんの仲の良さがすごく伝わってきましたが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
与田:ほんとうにあのままですね(笑)。みなさんまったくオンオフがないというか、記者会見のとき以上に家族感があるくらいです。現場では、カメラが回る「よーい、スタート!」の直前まで家族みたいな話で爆笑していて、カメラが回りはじめたら笑いを必死にこらえながら撮影をするようなこともありました。
――家族みたいなお話というのは、どんなお話をしていたんですか?
与田:パッと思い出せるのは、「むかし呼ばれていたあだ名の話」とかですかね。矢柴俊博さん(小向家の父・浩一郎役)の新婚当時のあだ名は「としち」っていうんですよ。その話をしていた直後に撮影がはじまって、浅香唯さん(小向家の母・由里香役)が下を向いて「くくく」と笑いを我慢していたり(笑)。そうやって、お父さんがイジられて、お母さんがちょっとツッコむ感じとか、家族っぽくてすごくいいなぁと思いました。
――ものすごく、画が思い浮かびます。
与田:そういう感じで小向家はわちゃわちゃした空気感だったんですが、矢島模型店は矢島模型店で、また違う家族感があるというか、やっさんとアオちゃんの親子みたいな関係の中に入っていくような安心感がありましたね。
石田:お父さんといっていいのかわかりませんが(笑)、クランクイン前から「やっさんとの二年目の一体感」を出せたらいいなと思っていたので、そう感じていただけたならうれしいです。
――石田さんはやっさんとの共演シーンがほとんどですもんね。
石田:そうですね。やっさんがほんとうに優しくて。撮影の合間に、私の学校の宿題を一緒に考えてくれたりしました。あと、私は『量産型リコ』に登場するプラモデルをできるだけ自力で組み立てたいと思っていて、現場にもキットを持っていっていたんですが、それを見ていたやっさんが手伝ってくれて。結局、7割くらい組み立ててくれたというようなこともありましたね(笑)。
与田:休憩中に作ってたよね。その姿が、ほんとうに矢島模型店そのままで(笑)。完成したら、ちゃんとギブバースもしていました。
――現場のなごやかな雰囲気が伝わってくるようです。
石田:それから、与田さんが差し入れで持ってきてくださった手作りクッキーも、めちゃくちゃおいしかったです!
与田:よかった! クッキー、はじめて作ったんですよ。みなさん、糖分が欲しいかなと思って。
石田:私、(与田さんが作ったクッキーを食べられるなんて)「前世で人を100人は救ったに違いない!」と思いましたもん!
与田:それ、クッキーをあげたときにも言ってくれたんですけど、ちょっと意味がわからないんですよね(笑)。アオちゃんからはクランクアップのときにお手紙ももらって、すごくうれしかったです。もう、何回も読みなおしました。
――今作のリコは、普段は都会で暮らしていて、夏休みに実家のある田舎に帰ってきたという設定です。役作りの上で意識したことはありますか?
与田:最初は「あまりキャラクターを作りこまず、自然体で実家に溶け込めるようなリコになれたらいいな」とか「オフィスでのモードと、実家にいるときの顔は違うんじゃないか」とか、いろいろ考えていたんです。でも、いざ現場にいってみると、共演者のみなさんをふくめた『量産型リコ』チームの空気感が、そんな役作りをせずとも自然体にしてくれましたね。結果的に、演じているときはもちろんリコとして喋っていますけど、カメラが回っていないときは完全に素でした(笑)。
石田:たしかに。すごい素でした!
――今作では、素に近い自然体の与田さんが見られると。石田さんはアオ役を演じていて、素の自分と似ているなと感じるところはありますか?
石田:私はLINKL PLANETに入って一年半が経つんですけど、その一年半でプラモデルにハマって、どんどん楽しくなっているので、そこは去年よりも、プラモデルが大好きなアオちゃんに近づけたかなと思っています。さきほどもお話にでましたけど、私は現場にプラモデルを持っていって作っていたんですよ。アオちゃんは基本的にプラモデルを作らず、リコさんや家族の方々が作っているのを見守るポジションなので、うらやましくて……。
与田:そこからだったんだ!
石田:はい……。その想いから持参するようになってしまいました(笑)。
――石田さんが休憩中にプラモデルを作っているシーンはメイキングカメラも回っていたということで、どこかで見ることができるかもしれませんね。与田さんは今作で3度目の座長ポジションですが、3作品を通して、自分が成長できたなと感じることはありますか?
与田:やっぱり、1作目のときはプレッシャーを感じていて、楽しみよりも「私で大丈夫なのかな?」という不安な気持ちが大きかったんです。ただ、何度か現場を重ねていくうちに、自分が緊張していると、その空気感はまわりにも伝わってしまうということがわかりました。私には座長らしさみたいなものはないんですけど、やっぱりそういうところは“座長”なんですよね。それに気づいてからは、「自分の空気感でまわりの空気感も変わるんだろうな」と考えるようにして、変に気張らず、のびのびとやらせていただいています。それがちょっといい空気感につながったのであれば、とてもよかったなと思います。
――記者会見の雰囲気を見る限り、その目論見は大成功じゃないですか。
与田:大成功でしたか? よかったです! でも、演者のみなさんとは本当に“家族になれた”といえるくらい仲良くなれました。もう、クランクアップがさびしすぎて、「またみんなで集まろうね」という約束をしています。
――結束できたのは、きっと与田さんの座長力が一因だったんでしょうね。それでは逆に、石田さんから見た座長・与田さんのすごいところはどんなところですか?
石田:与田さんがお話されていたことと重なるんですけど、「ザ・座長」という圧がまったくなくて、すごく和やかな雰囲気をだされているんですよ。そういう与田さんの空気をみなさんが吸い取って、いい現場になっているんだろうなと思います。あと、この撮影スケジュールの間に、乃木坂46さんは香港公演や東京ドーム公演を控えていて、フリをおぼえるのとかもすごく大変だったんじゃないかなと思うんですけど、いつもしっかりとやりきってらっしゃる。そういうところも、同じアイドルとしてめちゃくちゃ尊敬しています!
与田:ありがとう! 記者会見でのステージ(記者会見で、石田さんが所属するLINKL PLANETのステージがあった)も素敵だったよ。
石田:ありがとうございます!
――3作品を通じて、印象に残っているプラモデルはありますか?
与田:それぞれに思い入れができてしまって、ひとつを選ぶのが難しいですね……。でも、やっぱり一番最初に作った「量産型ザク」(1作目の第1話)は、人生ではじめて関わったプラモデルだし、『量産型リコ』との出会いだったし、思い入れがありますね。
――実は旧キットの「量産型ザク」って、一番最初に作るにはちょっと大変なプラモデルですよね。
与田:そうですよね。接着剤も必要だし、色もついてないし、古き良きというか……。そのあとにいろいろなプラモデルに触れて、「実は最初にけっこう難しいことをしていたんだな」ということがわかりました(笑)。あと、「ラストシューティングのガンダム」(1作目の最終回)もすごく印象に残っていますね。自分が結構大変だなと思った時に、「ボロボロだけど最後の一発で戦う!」というガンダムの姿を浮かべて、「今、ラストシューティング状態だな……」と思うこともあります。
――3作品を通して、そんなことまで思うように(笑)。エピソードでいうと、「ジム」の回(1作目の第9話)も印象深かったです。
与田:あの回、すごく好きなんです。「自分をガンダムだと思っていたけど、ほんとうは量産型のジムだった」という浅井(前田旺志郎さん)のセリフが、自分の気持ちと通ずるところもあって、グッときました。誰しも唯一無二だし、いいところがあるけど、やっぱりアイドルをやっていると、「自分の個性ってなんだろう」とか「自分にしかできないことってなんだろう」とか、考えることが多いんです。
――たしかにあのお話をアイドルに置き換えると、すごく身につまされるところがあるのかもしれないと想像できます。
与田:そうなんです。そこから浅井が最後に絞りだす、「今はジムでも、俺はガンダムになりたい」というセリフも好きだし、「私は量産型でいいと思った」というリコの生き方もすごく素敵だなと思いました。
――あの一連のやりとりは、『量産型リコ』シリーズ屈指の名シーンですよね。石田さんはいかがでしょう?
石田:どれかひとつを選ぶとなると、やっぱり私も「量産型ザク」ですね。リアルタイム放送当時は、まだデビュー前で普通の高校生だったんですけど、自分には特に優れたところがあるわけでもなかったし、それこそ「量産型」という言葉が当てはまっちゃう人生だなと悲観していた時期だったんです。
そういう時期に『量産型リコ』の第一話を見て、「量産型だけど量産型なりのプラモデル」という答えを見つけて、楽しくのびのび生きていくリコさんの姿に救われたというか、すごく「いいな」と思えたんです。そのあと劇中でリコさんは、会社もあまりうまくいかなかったり、大石さん(中島歩さん)にもフラれてしまったわけですけど(笑)、「いいな」と感じられたのは、やっぱり最初の「量産型ザク」のおかげかなと思っています。
――石田さんは『量産型リコ』を見たことがきっかけで、アイドルを目指したと聞きました。
石田:それはもう、本当に! このドラマがなかったら、今のグループ(LINKL PLANET)も知らなかったと思います。そもそもアイドルにハマったきっかけは乃木坂46さんですし、そういうところも含めて、ものすごく思い入れが深い作品です。
与田:素晴らしいですね。アオちゃんは乃木坂46のライブにも来てくれたんですよ。
石田:いっちゃいました!
――そんな交流もあったんですね。お話を聞いていると、石田さんにとって『量産型リコ』は運命的な作品なんですね。
石田:ふふふ。「シンデレラストーリーを築いている」と自称しています(笑)。
――今作では、第一話に「HG 1/144 ガンダムバルバトス」が登場します。このプラモデルについては、どんな思い出がありますか?
石田:私はリコさんの「こうしちゃえ!」が印象に残っていますね。
与田:バルバトスに砂をかけるやつだね。ああいうテンションでやることが今まであまりなかったから、急にギアが入った感じがして、あのシーンはちょっと恥ずかしかったですね。でも、監督さんからは「よかった!」といってもらえました(笑)。
石田:そのあとにアオが、リコさんに「野生的ですごいです!」というんですけど、これは今作でたびたびでてくるフレーズなんです。
与田:でてくるね。なんでしょう、私も野生児といわれることもあるので、私自身にリンクしているんでしょうか(笑)。
――今作はタイトルに「最後の」という文言が入り、シリーズは一区切りを迎えると思います。振り返って『量産型リコ』という作品は、おふたりにとってどんな作品になりましたか?
石田:初めて出演したシーズン2のときは高校生だったんですが、それまでにお会いしたことのないような、いろいろな職業の方々や、いろいろな世代の方々と一緒にお仕事をする機会をいただくことができて、ものすごく視野が広がったことをおぼえています。私にとって『量産型リコ』は、「自分の人生組み立て記」の一部とでもいえるような、人生の大事な分岐点になってくれた作品です!
与田:ひとことでは言いきれないんですけど、『量産型リコ』は、撮影期間は短いけど密度がめちゃくちゃ濃くて、「私のホームは乃木坂46とリコ」といえるくらい、自分の中ですごく大事な作品になってしまいました。またひとつ、あたらしい居場所ができた感覚ですね。
――ホームという言葉、いいですね。
与田:記者会見のあと、共演者のみなさんと「ああ、終わっちゃう! さびしい!」と言い合っていたんですよ。それを見ていたら、「この作品は、共演者のみなさんにとってもホームになれたんだな」と思えて。それがすごくうれしかったですね。
――最後になりますが、番組を楽しみにしているみなさんに、メッセージをお願いします。
与田:今回は「家族」がテーマということで、私自身、素敵な家族に出会えたし、さらにやっさんとアオちゃんがいて、このメンバーでシーズン3を迎えられてほんとうに幸せです。そんな家族の暖かさにくわえ、大自然や動物もでてきたりして、癒し要素しかないドラマになっています。木曜日の夜に、みなさんを癒せるドラマになれたらいいなと思っているので、どうぞよろしくお願いします!
――ありがとうございました。
※本記事は複数のインタビューをもとに再構成しています。
DATA
木ドラ24『量産型リコ -最後のプラモ女子の人生組み立て記-』
放送日時/放送局:毎週木曜日 深夜24:30~25:00(テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ 九州放送)、毎週火曜日 深夜24:00~24:30(BSテレ東、BSテレ東4K)
配信:各話放送終了後から、映像配信サービス「Lemino」にて第1話から最新話まで独占見放題配信(予定)、広告付き無料配信サービス「ネットもテレ東」(テレ東HP、TVer)にて見逃し配信
出演:与田祐希(乃木坂46)、市川由衣、佐月絵美、矢柴俊博、浅香 唯、森下能幸/石田悠佳(LINKL PLANET)、田中要次
原案・企画・プロデュース:畑中翔太(BABEL LABEL)
脚本:畑中翔太、マンボウやしろ、オコチャ
監督:中川和博、ヤングポール、中村祐太郎
オープニングテーマ:樋口 楓「アイムホーム!」(Lantis)
エンディングテーマ:LINKL PLANET「ソライロ」(SUNRISE Music Label)
プロデューサー:漆間宏一(テレビ東京)、寺原洋平(テレビ東京)、涌田秀幸(C&Iエンタテインメント)
制作:テレビ東京/C&Iエンタテインメント
制作協力:BANDAI SPIRITS
製作著作:「量産型リコ」製作委員会2024