おさるさん・ラプソディー 第2章
これの続きである。
あまりに虚しいやり取りだったが、ここである転機が訪れた。
映画の話になった時だ。
俺が当時流行りの「すずめの戸締まり」を観にいったこと、深海過去3作品(君の名は・天気の子・すずめの戸締まり)の中では1番面白いと感じたことを話した。
すると、彼猿は未だ「すずめの戸締まり」を観にいっていないらしく、学校が落ち着けば見に行きたいとのことだった。
誘ってくれと言われているような気がした。
すかさず、誘いのメッセージを送った。
結果は
急な誘いだったが意外にもOKしてくれたのだ。
アーメンがちょっとでた。
その映画デートは彼猿の学校が終わる、2月以降に行くことになった。
ちなみに500人もライバルがいたし、誘いも急だったので普通に断られたると思った。
まぁ、そしたらそれでまた別のメス猿を探そうと思っていた。
彼猿曰く、俺のメッセージが丁寧(?)だったようでこの人なら会ってもいいと思ってくれたらしい。
(しめしめ。)
また、他にも誘いを送ってきたオスザルがいたようだが、基本は電話等をしてからでないと会わないようにしていたらしい。
俺はまだ彼猿と電話はしていなかったが、なんかメッセージがちゃんとしてるだかなんかで、電話をパスすることができたのだ。
(いや、さすがにもう少し俺を警戒しようや)
就職活動に例えれば、1次面接をスキップして、いきなり2次面接が決まったという感じである。
とはいえ、デートの約束を取り付けたとて、メッセージのやり取りが深まるわけではない。
そこで、俺は会う前に電話をすることにした。
電話の方が話のペースも早いし、相手の声や話し方を知ることもできる。
そして何より、一度話しておくことで当日会う時の緊張感や気まづさを軽減できると思った。
そして、ある平日の夜に電話をした。
さすがに家で電話しているところを親に聞かれたくなかったので、車でコンビニに行き、車の中で話した。
(withはクソなので、電話が1時間で切れる。
その度にかけ直すのがいちいち面倒だった。)
話としては、彼猿の学校のことやアルバイトのこと、趣味や生活についてが主だった。
やはり、俺については深く聞いてこなかった。
(え。やっぱり女って自分がベラベラ話すのが好きなの?)
また、話してみると声は意外と高かった。
女の子らしい声だ。
プロフの写真からは、マスクをしていたのもあり、大人びた印象を勝手に感じていた。
しかし、実際はやはり女の「子」という感じだった。
正直、若干コレジャナイ感はした。
すごく年下感がすごかった。
いや、これが好きな人は好きなんだろうが(というか男の大半はああいうのが好きだと思う)、俺はお姉さん系の方が好きなのである。
彼猿は俺の1つ年下ではあるが、プロフの写真からは大人びた印象があった。
それが電話を通して崩れ去ったのである。
それでも、デートへのモチベーションは多かれ少なかれ保たれていた。
折角のチャンスを無駄にするわけにはいかないと、リトル俺が言っていたのである。
(サイズはリトルではない(見栄))
電話の最中にデートの日程も決めた。
彼猿はこれから試験や実習等が忙しくなるらしかったので、電話の後は、電話のお礼と試験の激励だけして特にやり取りは続けなかった。
しかし、日が経つに連れデートの誘いをしたことを後悔し始めてきた。
これまでメス猿とデートなんかしてこなかった俺が、デートを成功(ダブルミーニングではない)させることが出来るのか急に不安になってきたからだ。
振り返れば、マッチングアプリを始めてからこれまでのことは、全てリトル俺がやったことだ。
未知との遭遇を欲していたリトル俺が考え無しにコトを運んでいたのだ。
しかし、そのデートが現実のものになってくると驚く程に冷静な俺がやってきた。
情熱の獣であったリトル俺ではなく、鎮静そのものと化した俺が、俺自身を支配し始めた。
「落ち着いて考えれば、俺って元々知らない奴と大して喋らんし、知ってる奴とも喋らねぇわ。オワタ。何でこんな約束取り付けたんやろ。」
「このまま黙っていれば、デートのことも何もかも自然消滅するんじゃないか。」
そんな考えさえも過った。
リトル俺以上に、器がリトルな俺自身に辟易した。
そしてデートを1週間後に控えたころ、メッセージのやり取りは1週間近く途絶えていた時だった、彼猿から突然連絡が来た。
彼猿はちゃんと約束を覚えていた。
(誠実だネ)
俺は嬉しいのかそうでないのか、よく分からないまま彼猿を労った。
そして、時間や場所などデートの詳細な事柄を決定した。
つづく。
(「百聞は一見にしかず」ではないが、「100回のメッセージよりも1回の電話をするべき」というのは今回得た教訓である。)
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