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おさるさん・ラプソディー 第3章

これの続きである。


デートの場所は池袋にした。
俺は大学が池袋にあり、大学の友人と池袋で映画を観たこともあったので行きやすいと思ったからである。

また向こうも千葉在住なので、なるべく都心部の方が来やすいと思った。





映画の席をあらかじめ予約しておこうと思い、「すずめの戸締まり」の時間を調べた。

すると、まぁ中途半端な上映スケジュールだった。
彼猿が当日の午前中は大学の用事があるとのことだっので、午後の時間帯を見たら、夕方以降しか上映していないのである。

元々俺としては、さすがにお互い初対面だし、もはやこの頃には少し面倒くさくなっていたのもあり、夕方くらいでお開きにしたかった。
(向こうもそのつもりだった?)

そのため、本来は先に映画を観て軽くカフェにでも行くつもりだったのだが、その逆になってしまった。先にカフェに行ってから、映画を観に行く事になった。まぁ彼猿もそのように提案していたので問題は無かったが。







さて、先に映画の席を予約したのだが、つまりは金を先に払うということである。

俺があらかじめ2人分のチケットを買っておき、先に入場用のQRコードを彼猿に渡しておいた。

すると意外なことに、彼猿は映画代は後で払うと言ってくれた。
(はい。合格。(ニヤリ))

俺は、メス猿という生き物は皆、オスが金を出して当たり前だと思っている奴らだと思っていた。

そのため、俺は最初から映画もカフェも払うつもりだったし、彼猿があんなことを言ってくれたのも意外だった。

本当に俺が払う形でよかったので、俺は彼猿が払うことを拒んだ。

すると向こうは、カフェ代は出すと言ってくれた。
非常に良くできたメス猿である。
(この前、薬剤系の大学に通っている地元の先輩が「看護系の女の子はしっかりしている、メンタルが強い」と話していた。そう言う意味では彼猿も医療系の学生なので、しっかりしている部分があったのだろう。)





そしてデート前日にはカフェも決めた。

俺は普段カフェに全く行かないし、カフェと言われて思いつくのはスタバやドトールくらいだし、そもそもそれ以外にカフェって存在するのか(?)というレベルのカフェ観なので、カフェ候補は彼猿に出してもらった。

彼猿はカフェのスクショを3件くらい送ってきてくれた。

スクショはインスタグラムのものであった。
今どきの人は皆、お店もインスタで探すらしい。
まぁ俺も今どきの人なのだが、少しだけ驚いた。
だって、使うとしたら食べログかホットペッパーグルメ(リ○ルートのサービスなのでなるべくは使いたくない)だろう、普通。

まぁそれはいいとして、お店は何となく美味しそうなパンケーキの写真が載っていた所に決め、当日を待った。





そして当日。

天気は晴れ。気持ちは曇り。
もはやそこにリトル俺は居なかった。
アッチのマッチングなどどうでもよくなっていた。

とにかく今日という日を無難にやり過ごす。
それだけを考えていた。

当時となっては、ほとんど接点の無い異性と時を共にするという不安やストレスの方が勝っていた。

とはいえ、なんやかんやで4200円が今回のデートに繋がったのでそこは満足していた。
経験料だと思えばまぁ妥当ある。
(性体験のことではない)







落ち着かない日というのは集合時間より30分程早く着いてしまう。

到着後、俺は何を思ったのかマスクを探し回った。

駅を行き交う人達を見て気づいたのだ。
俺は今、あまりに普通だと。

池袋の人達は、黒やベージュ、ピンク、グレーなど様々な色のマスクをしていた。
彼猿もマッチングアプリの写真ではピンクのマスクをしていた。

今日というあくまで特別な日に、ただの白いマスクをしているのには気が引けた。

高校時代、体育祭では女子が顔にラメみたいなシールを貼っていたように、文化祭ではわざわざヘアアイロンを持ちこんで髪にウェーブをかけていたように、俺も何か特別なことをしたくなったのだ。


慌てて駅の中を探し回る。

駅の中でマスクが売っているとしたら、もうそれはここしかないだろう。




ニューデイズ!!


案の定、マスクが沢山置いてあった。
しかし、思っていたようなマスクが無い。



俺が想像していたのはこのタイプだ。

彼猿もこのタイプ!

(ちなみにこの画像を検索した時、この立体型マスクの名称が分からず、「アヒルみたいな」と打ったら予測変換に「アヒルみたいなマスク」と出てきた。
皆考えることは同じである。)


しかし、このタイプが無かったので適当にグレーのマスクを買った。




これである。





色もただのグレーではない。

グレーである。






これまで普通の白いマスクしかつけたことが無かったので、少しウキウキでこのマスクを買った。


早速着用してみる。















顎が入りきらなかった。

俺の顔は特別デカいわけではないと思うが、いくらなんでも小さかった。

しかも、3枚しか入っていない。

しかもしかも、600円くらいする。










結局、誤魔化しようのないレベルのアベノマスク状態だったため、マスクは普通の白マスクにした。
(クソが!!)







この状況を例えるなら、私服で参加できるはずの修学旅行が急遽制服になってしまった時のようだ。
そして、クラTでやるはずの体育祭や文化祭が、学校指定の体育着になってしまったときのようでもある。
(分かるか)






マスクを諦めた後は、西口で彼猿を待った。
彼猿は電車の遅延で20分くらい遅れるとのことだった(ホントかよ)。


待つ間、何を話すかずっと考えていた。
この日のトークは全部で4種類だ。

①会ってからカフェに向かうまでのトーク
②カフェ内でのトーク
③カフェから映画館に向かうまでのトーク
④映画から解散するまでのトーク







特に俺は①のトークが心配だった。

何においても、序盤を制することは全体の流れを制することだ。トーク①がなんとかなれば後は雰囲気でどうにでもなる。

逆に、①で全く喋らずに気まづい雰囲気にすることは、万死に値するのだ。




さて、まぁ一言目はまず挨拶だろう。
マッチングアプリなんて相手がちゃんと来てくれるという保証は無いので、来てくれたことに対する礼はするべきだろう。




だが二言目はどうする。



「いやぁ、良い天気ですね〜。」


「電車が遅延してたみたいですけど、大丈夫でしたか?」



「道、迷いませんでしたか?」



「映画前に少し休憩していきませんか?ホテルで。」



どれもしっくり来なかった。

しんどいので考えるのをやめた。
ここまでくりゃノリと勢いだ。








数分経ったころ、彼猿らしき人が近くにやってきた。








つづく。 



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