DEAR MY DOGS
20XX年
坂上忍の死後、彼が多頭飼育していた犬達が融合し、ひとつの巨大な生命体「DOG」と成り、東京と愛知を支配していた。(東京都知事選と愛知県知事選に立候補し、両方に当選した。)
「DOG」の中には坂上が生前飼っていた数千の犬の生命が宿っているが、意思を表出できるのは最も強い5匹の犬だけだ。彼らは各々の頭を「DOG」の体の至るところから生やし、意思疎通している。
「ワーーンハッハッハッ!!さぁて、今日はどんな仕事が待ってるのかワァン!?」
史上初の「2都県知事兼任」になり、意外にも息巻いているのは、「DOG」の1つ目の人格「漆黒(くろ)」である。
「ねえ、知事なんてつまんないことやめて、COO&RIKU行かない?」
「漆黒」の意思に反し、ペットショップでショーウィンドウに並べられた犬たちを解放しようと企むのは、「DOG」の2つ目の人格「紅(べに)」だ。
「紅姉…『日本中の動物を人間から解放する』っていう俺たちの使命を遂行するには、まだ早すぎるって…」
「DOG」の股間から頭を生やし、紅をなだめる気だるげなクール犬は、「DOG」の3つ目の人格「蒼(そう)」だ。
「僕も蒼くんと同意見だよ……今日は大人しく知事の仕事しないと…」
「蒼」と明らかにキャラが被っている彼は、「DOG」の中の4つ目の人格「プリン」だ。
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!うるさいうるさいうるさい!!!!!お前らうるさいんだよ!!!!黙れえええ!!!!俺の体から出ていけええええ!!!!」
数千の命と融合し巨大生命体になり、2都県の知事になるという事態で、精神に異常をきたしてしまった彼は「DOG」の中の5つ目の人格「GOD」だ。
「DOG」という名前は逆から読むと「GOD」、つまり「神」を意味する。
坂上は生前研究チームを集め、全ての犬を人間から解放するための生命体「DOG」を生成するために犬を多頭飼育し、実験に実験を重ね、死後に見事完成した。
チームは坂上の遺言に従い、最も優秀な犬に「GOD」と名づけ、彼に「DOG」の最高権限を与えた。そして、彼から「自身の名前に関する一切の記憶」を消去した。
「DOG」の全員が「GOD」の名前を知ったときに、なんかこう、伏線回収というか、名前も思い出せない奴がなんで最高権限を持ってるんだ?みたいな感じになってるところで、そいつの名前が「GOD」だと分かって、なるほどね~‥‥みたいな感じを、坂上は演出したかったのだ。
しかし、優秀がゆえに「GOD」は狂い叫ぶことしか出来なくなってしまった。
「DOG」史上一番面白いであろう伏線回収のイベントが体験出来なくなってしまった。
というか「プリン」がトップ5に入ってきてる時点で色々計画は狂っていた。GOD以外は全員色の名前になるはずだったのに。キャラも被ってるし。
あーあ。
…え?私?
あぁ、これはこれは、失礼致しました。
申し遅れましたが私、「DEAR」と申します。
そう、逆から読むと…
…あれ?
「RAED」じゃん…
「READ」になると思ってたのに…
クソダサいじゃん…
………
あの、早く帰ってもらっていいすか…
…っす、あ、もう大丈夫なんで。
…はい。また今度、はい、はいー。あざしたー。
スタスタ
ガチャッ
ギー
バタン
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