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【SXSW2023レポート後編】飲み屋で話した、現代社会におけるデザイナーの価値とか色々について🍻

こんにちは。DeNAデザイン本部の久田です。

2023年3/10~3/19までアメリカのオースティンで開催されていたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト:以下SXSW)2023レポート後編です。

とても役に立つ前編はこちら🚶

前編ではSXSWの歩き方をお伝えしたので、後編ではセッションの内容を事細かく…

と思ってはみたものの、SXSWにはセッションの量も種類も膨大にあり、かつ英語力に乏しい自分では、カンファレンスで話されていた内容を紹介しても、他の方々のような有益な記事を書ける自信がありません!

なので、SXSWを全く別角度から、現地に参加したからこそ得られたものを紹介したいなと思い、現地でたまたま出会った日本人の方と夜飲みながら話した内容から真面目なものを抜粋して書きたいと思います。

飲み屋感覚で聞いてください。それでは。

※写真と本文は全く関係ありません。現地の雰囲気をお楽しみください。


コンテキスト、ストーリーテリング、ナラティブ:デザイナーの価値の増大

道には馬がいました(何の馬かは不明)

SXSWではピッチコンテスト(スタートアップの代表が短い時間で自社をプレゼンしてそれを審査員が審査するコンテスト)が開催されており、僕も丸一日その会場に入り浸って、世界のさまざまなスタートアップのピッチを見ていました。

ホテルの小部屋でみんなでピッチを見る

一緒に見ていた人やその他のブース系コンテンツを見ていた人との話で盛り上がったのは、「世界と日本のアイデアの差って、本質的にはそんなに無くね?」というものでした。

これはインターネットやSNSの力である程度みんな同じような情報に触れていること(英語圏だけかもしれないですが)や、ツールの発達で思考のスピード、その粒度が画一されていてきていることが要因なのではないかと。

ただ、一方で違いを明確に感じたのは「コンテキスト・ナラティブ(ストーリーテリング)」でした。

世界が情報という面で画一化してきているとはいえ、細かなコンテキスト(経営者の境遇、国や地域ごとの課題)は全然違い、そのコンテキストによって、事業の方向性がかなり左右されているなという印象でした。

つまり、事業の根幹の部分ってあまり差は無くなってきているが、その周りを包み込むコンテキストやナラティブによって違いを生み出している時代が今なのかなぁと。これってかなりデザイナーの価値を発揮すべきポイントかもなということを思ったりしました。

電動スクーターを乗り回しました。楽しかった

また、別の視点で面白い話も出ました。

日本は島国であるがゆえ(他にも理由があるかもしれませんが)諸外国と比べてコンテキストの統一が自然に行われており、あえて語らなくても意識のある程度の統一を行うことができる。ゆえにそのあたりの感覚やナラティブを語る力が弱いのではないかという指摘でした。

一方で、自然にコンテキストが共通で持てているからこそのサービスのユニークさ、特定コンテキスト内での爆発力(日本独特のインターネット文化のような)、みたいなものもあるのではないかという意見もありました。

例えば外国では規模が大きくなってくるにつれて、コンテキストはもちろん、倫理観や道徳、価値観みたいなところの違いを吸収するための何か、みたいなところのケアが必要ですが、こと日本においては(良し悪しはあれど)そこをある程度すっ飛ばして、一気にみんなで盛り上がれる、みたいな土壌があるのではと。

今日のジャパニーズカルチャーとかも、そういう側面がベースにあるのではないかという指摘です。これは、日本のインターネットカルチャーやコミュニティ形成力などにも見られる現象で、なかなか面白い視点だなと思いました。

イノベーションの欠如:ソフトウェアの進化とハードウェアの停滞

野良メタルゴリラ

2日目だったか3日目の夜に、日本人4人で飲んだ時の話題です。

それぞれカンファレンスやブースをある程度回った状態で出てきた印象が、「あんまりイノベーション感じなくね?」という感想でした。

いや、もちろんそれぞれの事業やアイデアやプロダクトは、素敵で刺激的で新しいなと感じるところはたくさんありました。しかし、なぜだか頭をかち割られるような、その手があったか!!!みたいな衝撃は感じなかったのが正直なところでした。

※これは後日談でバイアスのかかった視点だったなと気づいたので、ぜひ記事の最後も併せて読んでもらえると!

で、話していて見えてきた共通解釈は、「ソフトウェアは進化している。ただ一方で、ハードウェアの進化が追いついてないのではないか?」というものでした。

例えばVR。SXSWではVR体験ブースなるものがあり、様々なコンテンツが体験でき、全体的にVR盛り上がってるな〜という印象はありました。

ただ、惜しむべくは全て「割とでかいゴーグルをかぶらなきゃいけない」という非日常な体験をしなきゃいけないんですよね。なんというか、そこに数年前からイノベーションが起きていないなぁと。

そのほか、コンテンツやアイデアは面白いのですが、日常に溶け込むような、もしくは全く日常を変えてしまうような衝撃的な体験はなく、それは割とハードウェア進化の停滞が原因じゃなかろうか、という指摘でした。

この辺り、自分自身デジタルプロダクトデザイナーとして仕事を進める中で、アプリサービスのコモディティ化を感じることが多々あり、そのあたりの感覚に結びついてきました。

とにかくハンバーガーとかBBQとかの肉類が美味しかったです

逆に考えると、何かハードウェアに爆発的なイノベーションが起こると、日常から全て変わるような爆発的な革命が起きるかもしれないということです。

それの一つのヒントが、SXSWのカンファレンスでもあった量子コンピューティングかもなぁと思った次第です。(詳しい解説ができるほど詳しくないので、各自ググるかChatGPTさんに聞いてもらえると幸いです)

なんにせよ、ソフトウェアから視野を広げて、もっとハードウェアや現実世界にもデザイナーの活躍の場を広げないといけないなぁと思いました。

デザイナーの可能性:最適なBTCバランスの模索

自然と都市が融合した豊かな都市 オースティン

SXSWあまり関係ないっちゃないのですが、別の話もせっかくなので書いておこうと思います。

「ビジネスは資本主義への実装、テクノロジーは現実への実装、デザインは人間への実装、すなわち人々の認知への接続である」という話です。

自分はここ最近、「プロダクトにおけるデザインはいわゆる補助魔法的な位置付けなのではないか。なぜならデザイン単体では社会への価値(その対価としての利益)を作り出せず、ビジネスやテクノロジーと結びついてこそ成果を出せる」という説を唱えていました。

ただ、B(ビジネス)T(テクノロジー)C(クリエイティブ)のそれぞれに意味があるという先の捉え方は、デザイン(クリエイティブ)が、ビジネスやテクノロジーと同様に必須の要素であるとの視点に立つのかなと思います。

で、話は進んで、それらはバランスが大事、すなわちBTCバランス大事だよね、という話にも及びました。

デザイナーという職種はその職能上、全体を調整する役割を担える可能性を秘めています。その職能を用いて、デザイナーが事業のあるべき適切なBTCバランスを見極め、その方向性を調整することで、ビジネスがさらに加速する可能性あるよねという話です。

リスもいます(後ろにはガッツリ寝てる人)

てなってくると、デザイナーってまだまだやれることたくさんあるな、という月並みな気づきを得ることができました。けど大事な気づき。

まとめと後日談

帰りの空港で見かけた、謎のハイタッチ絵画

個人的には「海外進んでてすげ〜って気がする」という視点から、「あれ、案外進んでなくね?ただ、見ているものの違いがあって面白い」という視点に切り替わったのが今回のSXSW2023自分ハイライトです。

が、この話は後日談があって、先日、SXSW AFTER TALK SESSIONという会(その会の発表者は自分でデザイン関連の事業を立ち上げている方々)に行ってきたんですね。

そこでは、僕が飲み屋で簡易的にやったような各自の視点持ち寄りを、もうちょっとちゃんとしたプレゼン形式で行う会だったのですが、そのイベントで、自分が感じていたものとは別の視点を得ました。

自分は左側の視点だけで見てた、という図

そのイベントでは、主にこの図の右側の「未来をイメージした時の人間のあるべき姿」みたいな視点でSXSWが語られていました。それはとても面白く、本当に同じSXSWでの出来事か?と思った程でした。

つまり、自分はこの図の左側の視点でSXSWを見ており、全体的に世の中進んでいないなという感想を得ていましたが、実はこの右側の視点を持って見ると、面白いものがたくさんあり、そこからインスピレーションを得て、より先の、未来の暮らしやそこにあるべきデザインを想像することができ、より深い洞察を得ることができるいうことです。

日々プロダクトデザイナーとして実務をこなしていく中で、こういう未来の視点を忘れてしまっていたなぁとしみじみと感じ、改めてそういう視点に気づけて、デザインて面白いなぁ、奥が深いなぁ、SXSWありがとうと思った次第です。

今後、SXSWに行く機会がある方は、ぜひこの両方の視点で見てみることをお勧めします。それでは。

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