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3-2.表現

この節では、電話営業におけるトークの表現について注意点を記し、より相手の方へ向けて、自身の真心を最大限届けられる術について触れてまいります。

〜トークは楽譜に出来る〜

私がお世話になった師匠の1人から戴いた貴重な言葉があります。
『ムロイ君、極論ね、トークは全部楽譜に出来るんだよ』
この言葉にたいへん納得しました。

音階も休符もテンポも強弱も譜面に起こせます。
そしてライブ演奏ならではの息づかいが相まって、想いが伝わっていくのです。

相手の方それぞれに最も適した譜面を描き、表現することが重要になってきます。

この表現について、噛み砕いてまいります。

〜有機質を込めるということ〜

まずは音質について、機械的ではない『有機質』の発声をイメージします。

全センテンス・全ワード・全ブレスに心ある有機質を刻み込むのです。

どんな無機質なワードでも、何かしらを思わせる命を吹き込む事ができますし、
逆に吹き込まない事も出来るのです。

歌詞がなくても暖かい情景が浮かぶ、さだまさしさんの『北の国から』や、小田和正さんの『言葉にできない』など、たいへん象徴的です。

有機質の想いを声に乗せるのです。

目に生き様が表れるのと同様に、声に生き様が表れ、相手の方に伝わります。

画策している泳いだ目=画策しているうわずり声となり、不信と不快を生み出してしまいますが、真っ直ぐで誠実な目=相手の方を真に想う誠実な声ですから、これを意識すれば嬉しい反応が増えるはずです。

〜あうんの関係を創る〜

『あうん』『ツーカー』『以心伝心』
このような、全てを言葉で説明しなくても分かり合える関係を、我が国では心地良く思う方が多いです。

相手の方がこちらの内容を理解しているリアクションであれば、皆まで言わないこと、それが相手の方を『皆まで聞かなくてはならない』ストレスから解放し、また『分かりあえている』という心地良い安心感に導きます。

あうん、ツーカーの関係を築けると、元々他人だったのに、まるでかつてからの知己のようにお互いの距離はグッと縮まるでしょう。

〜受け止めてから発言する〜

日本語はひとつのセンテンスにおいて、ラストにくるフレーズで、主たるスタンスや結論が表される言語です。

言い方の句読点の打ち方や、言い回しで展開が大きく左右されますから注意です。

『〇〇(相手の意見)だと思うんですけど△△です。』

この表現は相手の方の意見を受け止めておらず、こちらの意見を押し付けている表現です。
『〇〇(相手の意見)だと思います。ただひとつ、△△というご意見を戴くことがあるんです。』

このように、相手の方の発信を必ず肯定して受け止めきり、受け止めてから自身の発信内容を『別角度からの見解』として伝えることが、相手の方の気持ちを尊重しながら、最良のゴールを共創していく道を生み出します。

〜区切って相手用のスペースを空ける〜

ワンセンテンスで長い尺を取る説明があるとしまして、
その内容伝達を一辺倒に駆け抜けるように発してしまう事象を目にすることがあります。

この時、相手の方はどんな気持ちでしょうか。
受け手の立場に立ってイメージします。

センテンスの途中で、挟みたくなる意見や質問があるかもしれません。
内容を咀嚼する余裕がほしいと感じるかもしれません。

一方的にものを言われることは一般的には苦痛でしかありません。

崇拝する師匠や監督であれば、まだ受容できるかもしれませんが、そうでもなければ苛立ちの感情が増幅することでしょう。

心地良い会話の中では、『ゆとり』が必要なのです。
相手の方にボールを触ろうと思えば触れるゾーンを作ってあげてください。

センテンスの中で間を空けて、呼吸や感触を反応できるゆとりの隙間を作るのです。

感想の相槌のリアクションも取れますし、例えその反応を表さなくても、表す選択も可能であるというゆとりが存在する事に対して安心感が芽生えます。

また、一方的にならず余裕も見せる事ができますから、売らんがために攻め込んでいるような誤解を防ぐことができます。

 間を空けて、区切って話すこと、例え相手の方が無言だとしても、自身でお返事を頂くのを想像しながら展開すると、自然とゆとりを作っていけるでしょう。

〜呼吸・反応を聞きながら話す〜

電話におけるトークとは、電話線を通じた2名の会話が織りなす芸術作品です。

・相手の方との呼吸を意識して、相互に通い合う心地良いリズムの流れを作ることが、トークの精度を高め、新しい価値に対する共鳴を促進します。

→相槌のタイミング・声質・空気量等から感情・状況を察して、発声・表現をしていくことが重要です。

導入セクションでもお話をしましたが、『聴きながら話す』ことは、状況に応じた最善の選択をする上でたいへん重要な要素なのです。

音質やリズムや呼吸、命の鼓動を感じながら、耳を澄ませ、声を届けていきましょう。

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