#99 日本昔ばなしオリジン「夢喰い婆さん」(夢を安易に金儲けの道具として利用してはいけない)
この小さな村には、人のものをなんでも欲しがる村最年長の婆さまがいる。
婆さまは爺さまと2人で決して裕福とは言えないものの、仲むずましい生活を送る老夫婦として周りの多くの住人から親しまれていたが、1年前に最愛の爺さまを病で無くし、1人の力では生活が出来なくなるほど、困窮な生活を送っていた。
自分の家に食料が無くなると、村人の家に行っては「ワシは村一番の年長者じゃ。ワシが偉いと思うのであれば、そこにある食糧をワシによこせ。」と半ば強引に村人から大切な食料を奪い取る程の悪党な性格になるまで生気を失いかけていた。
ある日、村人の食料では物足りず神社に行き、賽銭もあげず神様に毎日お祈りをしていると、その晩に見た夢が現実に起こると言う「正夢」をみてしまった。
その正夢と言うのは、朝起きると、背筋の曲がっていた婆さまはまるで、若かしり頃の婆さまの姿を取り戻すというもの。まさにその通りになり、腰痛に悩まされ、生活の質が低下していた昨日が嘘のようになる正夢を生まれてはじめてみたのである。
婆さまからしたら、助け舟が地に舞い降りたかのようないい正夢を毎晩みるようになる。
その時、夢で見ることが正夢になり、「しかも一銭も神様に頂戴せずにお祈りするだけで欲しいものが手に入れてしまうなんて、何とも神様も容易いものだ」と思うようになり、それからというもの毎日神社に行っては賽銭箱に賽銭を入れんと神頼みをするのである。
しかし、日に日に正夢を見れなくなった婆さまは神様頼りを断念し、米俵と引き換えに村人からその晩にみた夢を聞き回っては今晩村人の夢を頭に刷り込むように何度も何度も唱えながら寝床につくようにして、一晩を迎えるようにしていた。
すると、村人の夢が自分の夢の続きに出てきて、その夢はと言うと朝起きると、婆さまの家にはこれでもかというほどの米俵と1人では食いきれないほどの芋が毎朝誰ものかによる贈り物をされてくるというもの。それが正夢となって現実世界に蘇るのである。
そう、婆さまは人の夢を喰っては正夢として昇華できる「夢喰い婆さん」なのである。
その日から、村の門の前に屋台を建てては夢売り人として米と芋が家の前に届くという正夢を1人につき1両と決して安価でない値段で村人に売りつけるのである。
村人も裕福な生活を出来てはいないが、村へ帰還する村人に対して「この門を通りたければ、1両でひと夢買わねば通すことは出来ぬ。」と脅してはその夢で金儲けをするような卑劣な儲け方をする婆さまにいつの間にかなってしまっていたのである。
そして、婆さまには神様からの重い天罰が下される。
神様は「ばあさまが望むお告げものを簡単に渡してたまるか!そんな非常識な人には夢の中から脱出出来ないようにしてやる!」と続けざまに述べてその場を後にした。
何も起きない事に安堵の表情を浮かべ、その晩寝床に着く。寝ていると婆さまも夢をみることが出来、「うっしっし、ワシにも夢をみて明日正夢になる事を心待ちにしながら熟睡した。」
しかし、朝が来て目覚めようとしてもなかなか目を覚ます事が出来ない。
そう、神さまの言うとおり夢の中に婆さんを閉じ込めたのである。
あなたは正夢を見た事があるだろうか?
正夢を見てもそれを過信し過ぎて、実行に移してしまうと婆さまのように夢から出られなくなる事があるので、気をつけるように。
まあ、夢を夢として昇華しているであろうあなたには何の心配もしないが。
これを寝る前にみた人はぜひこの記事を肝に銘じてほしい。